僕は自転車(4)

2015-08-25 21:51:05 | 童話
ある日、お父さんが男の子に
『大きくなったので新しい自転車を買ってやろうか?』
と言った。

男の子は嬉しそうに
『うん。』
と言ったけれど、男の子は
『やっぱり要らない、僕が自転車に乗れるようになったのは、この自転車だったからなんだ。
僕はこの自転車が大好きなんだ。僕がこの自転車を乗らなくなると自転車がかわいそうだから。』
と言ったので、僕は
『ありがとう、だけど僕は違う子供に乗ってもらうから大丈夫だよ。』
と涙を抑えて言った。

お父さんが
『それでは、新しい自転車を買ってやるが、この自転車も家に置いておくから、時々この自転車にも乗ってやればいい。』
と言ったので、男の子は
『うん、そうする。』
と応えた。

僕は嬉しくなり、
『ありがとう、ありがとう。』
と何度も言った。

そして僕は、綺麗に磨かれて、油もさしてもらって元気にしている。

新しい自転車で帰って来た男の子は必ず僕の所に来て、サドルをボンポンとたたいてくれる。

男の子は何も言わないが僕は嬉しい。