前回の続きでーす。 気持ちを伝えようと勇気を振り絞って出かけたサ吉でしたが・・・
サ吉「公園がいやに賑やかだなとは思ってた。ふっと思って振り向いた瞬間、誰かの打ったボールがエリザベスめがけて飛んできたんだ。とっさにジャンプしたんだけど両手がふさがってたから顔面でボールをまともに受けちゃって・・・」
紅太郎 「え~!そりは大変らったね。 んで、んで告白は?」
サ吉 「とりやめさ。だって左目がお岩さんみたいに腫れ上がってたし、着地に失敗して顔傷だらけだったし・・なんだかまた急に自信がなくなって帰っちゃった。しょぼん。 」
紅太郎 「 も~、なんらよ~。じれったいな~ そんで!(なんか怒ってる)」
サ吉「おいらが姿を現さないもんだから、数日してエリザベスが訪ねて来てくれたんだ。おいらの顔見てびっくりしてた。 」
紅太郎 「 エリザベスちゃんにはボールのことはなしたの?」
サ吉 「ま、まさか!! 耳のことだけでも心の負担なのにもうこれ以上負い目を感じてほしくなんかなかったんだ!!! それよりね。紅太郎君。 おいら、おいら・・」
紅太郎 「どどどど、どうしたの? サ吉君! 目が目がハートマークになってるよ!」
サ吉「ん、うん。 おいら、いいって言ったんだけど・・・エリザベスが・・彼女がバンドエイド貼ってくれたんだ。エリザベスのお母さんの手も優しかったけど、彼女の手が目に触れたとき、空に浮かぶ雲の上まで心が飛んでいくかと思ったよ。あの時がおいらの人生の中で一番幸せな時だったと思う。 もうきっとあんなことないんだろうな。 しばらくはね・・・雲の上を歩いてるような日が続いたんだ。・・・・・あの時まではね 」
紅太郎「あのとき?」
サ吉 「そう、郵便配達のもー吉君が一日遅れの手紙をおいらのところに持ってくるまではね。手紙・・エリザベスからの手紙には・・こう書いてあった・・・「 笹吉さま。 突然のことで私も気が動転しています。 父の転勤で明日3時にロンドンへ向かいます。出発の前にもう一度お会いしてこれまでの御礼を申し上げたいのです。今いろいろな準備で私が出かけることができないので手紙を託します。お会いできますか? エリザベス」
紅太郎 「 えええええええ~~~!そんな急に! それになんで一日遅れなの~」
サ吉 「もー吉君、道草喰ってたらしい・・・ 」
紅太郎 「 そ、そんな~。もー吉くーん。 そんでそんで間に合ったの??」
サ吉「午前中には届いたから会いに行こうと思えば行けたんだ。でも会ってどうする? つらいだけじゃないか。うぐ。ロンドンって福岡よりうんと遠いんだよ。会いに行きたいって思ってもどうにもできないとお~いところらしいんだ。迷って迷ってぎりぎり出発の時刻に駆けつけたんだけど・・・・
( 大きくなりまーす。 )
車はちょうど出るところだった・・・ 胸が張り裂けるかと思った。・・・顔を出してもう一目エリザベスの顔を見ようと思ったけど、そんなことしたら気がおかしくなりそうだった。・・・・車の音がしなくなるまで声を出さずに泣いた。・・でも静かになってからがまんできずに叫んだ! 好きだあ~!エリザベス。君のことが大好きだ~。そして、そして、ぼくの名前はほんとはサ吉ですーーーー!
しばし沈黙
紅太郎「 うわ~~ん。 ざぎじぐーん。お別れってお別れってこんなに悲しいのーー。 」
サ吉 「 うん・・・悲しいなんてもんじゃない。 あれから何年も経つけどおいらの苦しみは癒えることはないよ。 ただね。あの時決心したんだ。エリザベスの姿を焼き付けたこの目は大事にしまっておこうって。
紅太郎 「あ、そう言えばサ吉君の左目!」
サ吉 「 うん、あの時の幸せな思い出はここにあるんだ。腫れはもうとっくの昔にひいてるんだけどね、エリザベスの優しい手が触れた場所はこうして大切に覆ってるんだ。左目はいつもエリザベスを見てるんだよ。胸の痛みはこうするといくぶん和らぐ気がするし。今はただ遠くにいるエリザベスが幸せでいてくれることを祈るだけなんだ。 」
紅太郎「 何れらろう。 とっても悲しいんらけろ、切ないんられけろ、優しい気持ちら・・・うまくいえない・・・」
そこへ・・
キャサリン(遠くから) 「サ吉さ~ん! 大変! トム次郎が~~~・・」
ささ、これにてサ吉の初恋秘話は終わりとなります。 長い間お付き合い下さり本当に有り難うございました。次回はトム次郎のお話です。また来週っと申し上げたいのですが、仕事面で超多忙の時期になるため、再来週かはたまた再々来遊か、お約束できないのですが必ず書きますのでよろしかったら見にいらして下さいね。
おまけ
こちらサ吉とエリザベスのお別れシーンに涙する紅太郎
「 サ吉君、可哀想・・」
こちらお話を聞き終わって静かに感動する紅太郎
「 うまく言えないけろ・・・」