言の葉花壇

何度聞いても美しい日本語に、今日もマナ女とカナ女がにぎやかに呟きます。ぜひお気に入りを見つけてください。

いなと言へど

2021年09月08日 | 万葉集

#いなと言へど……★☆ いなと言へど 強ふる志斐のが 強ひ語り このころ聞かずて 我れ恋ひにけり: 持統天皇 : 歌意 もう嫌だ、聞きたくないと言っても聞かせる志斐の嫗のこじつけ話も、この頃聞かないので私は恋しく思っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ #万葉集 第三巻より■□■

みんなぁ、元気ぃ~?

読み方やでぇ~

いなといへど しふるしひのが しひかたり このころきかず

強ひ語り=はこじつけ話のことで無理強いすることやで

嫗(おみな)=は高齢の女性のことで、つまり、お婆さんのことやで。

あれっ、持統天皇柿本人麻呂がなんかもめてるみたい。

人麻呂「天皇さま、ぼんやりされてどうしたんですか」

持統天皇「あー、人麻呂か。ええとこ来たわ。あんた、志斐の嫗(おみな)、知ってるか?」

人麻呂「あの、めっちゃ、よーくしゃべるお婆さんのことですか?」

持統天皇「せや!

めっちゃ、よーくしゃべる婆ちゃんのことや。

最近、宮殿にけえへんから、手紙にちょっとした歌を添えて送ったんや。

そしたらな、返事来たんやけどなぁ・・・」

人麻呂「あー、世間ではこの頃、怪しい感染症が流行って、人と人との接触を避けて不要不急の外出や、都なんかをウロウロしたらあかんと緊急事態宣言出したのは天皇さまじゃないですか。

だから、お婆さんも宮殿に来なくなったんじゃないですか。

ですから、私もこうしてソーシャルディスタンスで、遠くからお話ししてますよ。」

持統天皇「うん、まぁそうやねんけどな。

感染症が流行り、施薬院(せやくいん)にはどんどん病人が運び込まれて満床になってきて大変やねん。

二人でおしゃべりどころやないけど、世の中の情報が届けへんから、なんでも、よー知ってる婆ちゃんに聞いてみよかと思うんや。

まぁ、これも仕事のうちや。

それで、手紙書いたんやけど・・・まぁ、手紙の返事読んでみ。」

いなと言へど 語れ語れと 宣らせこそ 志斐いは申せ 強ひ語りと詔る : 志斐嫗 :

(いなといへど かたれかたれと のらせこそ しひいはまをせ しひかたりとのる)

人麻呂「へぇ、これは、来てくれ来てくれと、うるさく言うから行っていっぱいしゃべったのに、それをこじつけ話って言うなら、もう決してしゃべりに行きませんからね、っちゅう意味ですね。

これは完璧に拗ねてしまいましたね。」

持統天皇「そやろ。

婆ちゃんの話そこそこ面白いから、時々は来てほしいんや。

そこで、人麻呂、あんた、ちょっと、代わりに行って謝ってきてくれへんか。」

人麻呂「えー!な、なんで私が・・・ご自分で謝ったらいいじゃないですか」

持統天皇「せやかて、天皇が謝ったらおかしいやろ。

それに、あんた、歌、得意やん。」

人麻呂「そりゃ、まぁ、私は宮廷歌人ですから・・・」

持統天皇「そやろ、歌で人心を感動させるの得意やん。

世間ではあんたのこと、歌聖(かせい)や言うてえらい人気やん。

そこで、あんたの歌で志斐の嫗の心をほぐして、また、おしゃべりに来るようにしてほしいんや。

わかったか?ほな、頼んだで!」

人麻呂「そ、そんんなぁ~・・・」

・・・などと持統天皇柿本人麻呂が言ったかどうかは定かではないけれど、持統天皇志斐の嫗へ、からかいの歌を送り、志斐の嫗から、もうしゃべりに行かへんわと返事が来たと万葉集は伝えてるでぇ。