☆エピソード7のネタバレはありません。
自民党はいよいよ憲法改正をしようと目論んでいて、異論のない緊急事態条項からお試し改憲をしようなどと言っていますね。災害対策やテロ対策のために緊急事態条項が必要だとか言ったりするわけですよ。
ところで、今、エピソード7が大人気のスターウォーズの過去作、エピソード2と3では、緊急事態条項をめぐってストーリーが展開しているということをご存知でしょうか?
スターウォーズを知らない方のために、エピソード1〜3を超ザックリまとめると、銀河共和国が課税してくるのに抵抗して共和国を離脱しようとする分離派が、軍隊を組織して戦争を仕掛けてくるというので非常事態になっちゃったわけです。
これに対応するのに、共和国議会は非常事態宣言をして、最高議長に非常大権を与えちゃって軍隊を創設したんですね。その際、最高議長は、非常事態が終わったら、速やかに非常大権を返上すると言っていました。
ところが、ずっと非常事態宣言中のままなのでおかしいよねってことになりました。しかし、最後には最高議長が皇帝に成り上がっちゃったわけですよ。
しかも、非常事態の原因は、最高議長が裏で糸を引いて、自作自演だったんだから目も当てられないわけです。
ということで、
緊急事態条項のヤバさがリアルに分かる!
だって、スターウォーズは、緊急事態条項の問題のせいで、映画6部作になっちゃうくらいなんですもの。一度、緊急事態条項が使われると、どんだけ民主主義を取り戻すのが大変かということが分かろうというものです。
でも、実は、スターウォーズの緊急事態条項は、自民党が必要だと言ってるものよりは、まだマシだったんです。
なぜなら、自民党の案は、内閣が自分で緊急事態の宣言ができるのに対し、スターウォーズのは議会で承認されなければ最高議長は非常大権を得られなかったからです。
いや、自民党の案も、事後的に国会の承認が要るじゃないかと言われるかもしれませんが、どうせ与党が多数なんですから!
どうせ党議拘束ですから!
政府の言うとおりにスルーしちゃいますよね!
ちなみに、議会で緊急事態宣言をすべきかどうかを判断するのはドイツと同じタイプではあります。そのドイツでは、ナチスが全権委任法を作って、憲法を無視して人権侵害をして、ユダヤ人を虐殺した歴史を反省して、緊急事態の宣言などを議会のコントロール下に置いて、できる限り濫用できないように予め仕組んでいます。
フランスのテロでも、オランド大統領は、短期間に限定されていた非常事態宣言の効力を3ヶ月延長して欲しいと議会の承認を求めていました。
それらの国と比較して、自民党の案はどうでしょうか?
もっとも、スターウォーズでは、非常事態宣言を議会の権限にしていたのに、エピソード3の最後には、非常大権を手にしている最高議長が皇帝になっちゃうんですからねえ。
そして、最高議長の陰謀に気づいたジェダイに反逆者のレッテルを貼って大虐殺ですよ。なので、議会の承認にかからせれば絶対に大丈夫ってことではありません。
ということで、自民党の緊急事態条項は、スターウォーズのよりもヤバい!
自民党の緊急事態条項案は、司法の事後的審査を想定していないのがヤバいことがよくわかる。
スターウォーズに出てくるジェダイって、銀河に正義をもたらす存在ということで、争いを調停したり、なんだったらライトセイバーでワルいヤツをやっつけたりします。今でいうと、警察と裁判所と執行官を足したようなものなんでしょうかね。
そして、さっき書いたとおり、非常大権を握った最高議長が、実は黒幕だったことをジェダイが知って止めようとするんですが、返り討ちにあっちゃうのです。その結果、ジェダイは反逆者だとレッテルを貼られて、虐殺され、ワルい最高議長は、共和国を廃止して帝国の皇帝になるわけですよ。
ある意味、司法が止めようとしたけど、歯が立たなかったという状況です。
ナチスが反対派を投獄して、やりたい放題やっていたのと同じですね。
一方、自民党の緊急事態条項では、司法が事後的に緊急事態条項が適切に行使されたかどうかを判断できるかどうか、何も触れていません。
しかし、砂川事件判決でお分かりのとおり、日本の裁判所は、極めて政治性が高いからと言って、そもそも憲法判断を回避して、政治に丸投げしてしまうことが多くあります(統治行為論)。
そうしたら、政府が「大変だ!緊急事態だ!」と言っている状況であれば、極めて政治性が高いと言って裁判所が判断を回避することは目に見えているじゃないですか。
しかも、本当に緊急事態かどうかは、特定秘密ですから、出てこないわけですよ。どうやって判断するんでしょうね。
緊急事態に対する備えをすることは必要ですが、これを入れるのであれば、少なくとも司法がきちんと審査して、人権侵害を防ぐ仕組みまで含めて入れ、統治行為論を否定しなければ、スターウォーズの世界と同じになってしまいます。
いや、そういう力があったとしても、ジェダイは歯が立たなかったんですよね...。
自民党のいう緊急事態条項が通っちゃったとしたら...?
フォースに覚醒しないといけないことがよく分かる。
スターウォーズでは、緊急事態条項で独裁者が出てきてしまってから、フォースに目覚めたルーク・スカイウォーカーが帝国を倒してくれます。でも、現実にはジェダイなんていません。
そして、新作のエピソード7では、ルークも姿を隠してしまっていて、ジェダイやフォースは半ば伝説的な存在になってしまっています。助けてくれるようなジェダイがいない中で、誰かがフォースに目覚めていくわけです(誰が目覚めるのかは、映画を見てのお楽しみ)。
同じように、今の憲法が無視される立憲主義の危機に、都合よく助けてくれる誰かがいるわけではありません。誰かに頼ればなんとかなることはないのです。
でも、曲がりなりにも国民主権で民主主義なのですから(まだ、今のところは)、私たち一人ひとりが自分たちには力があるんだということに目覚めたら、来年の参議院選挙は随分変わるはずです。
では、目覚めなかったら、どうなるでしょうか?
参議院の242議席の内、半数の121議席が2016年7月に改選されます。
憲法改正の発議をするには、衆参両院で各3分の2以上の賛成が必要です。
そうすると、242議席から議長を除いた241議席の3分の2以上というのは、161議席です。
現在、改憲派とみられる自公、おおさか維新、旧次世代で146議席なので、まだ憲法改正の発議はできません(改憲勢力で改選されるのは62議席)。でも、あとたった15議席です。
一方、2016年7月の参議院選挙で改選される議席の内、今のところ非改憲勢力の民主党の議席は42もあります(参議院における民主党の全議席の71%以上)。これは、政権交代で民主党が大勝した時の議席なので、今の状況でどうなってしまうのか...。改憲を阻止するためには、野党が割れて、候補者が乱立して、票を分散させている場合ではないのです。
そして、野党が細かいところで一致できなくて共闘できないのであれば、私たち市民が目覚めて、野党に共闘を求めて行く必要があるのです。
この夏、野党が違憲な安保法案に反対して共闘できたのは、市民が求めていったからでした。それだけの力が、私たちにはあるのです。
そう、フォースは、皆さんの内にあるんです。
だって、国民主権なんですから。
2016年7月の選挙までに、私たちが目覚めて、行動に出ないと、本当にスターウォーズの銀河帝国に支配されるような状況になりかねません。
まだ緊急事態条項のヤバさがピンとこない方々は、参議院選挙までにスターウォーズを見ていただいて、ヤバさを実感していただきたいと思います。
いや、なんだったら、この正月休みに、スターウォーズ全7作を一気見してください!