鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

37 苦汁の儀式

2018-05-17 16:23:59 | 日記
凡庸な日常の中にも何か一つ厳粛な儀式が入ると、精神生活が一段深まる。
お勧めは喫茶や飲食(おんじき)の儀式化だ。
花を活けてお茶か酒くらいなら誰でも出来る。
茶や酒を命の水、神の血だと思えば各々色々な秘儀が創り出せるだろう。
自分なりのアーティファクト(聖遺物)や花器燭台などがあれば上等だが、無ければちょっとしたアンティークの茶器酒器を使うだけでも感入度は違う。
例え数分でも俗世を離れ、祈りや思索に耽れる。

ところが!
隠者の数ある弱点の一つに血糖値があって、数年前に禁酒となった。
その後病状は大分改善したが今だに糖分は禁物で、酒類はもちろん果汁や炭酸飲料も駄目だ。
コーヒーお茶ばかりだとカフェイン過多なので冬は白湯やハーブティを飲んでいたが、夏はどうしても清涼飲料が欲しくなる。
で………ゼロコーラ。
これしか無かった。
コーラの儀式で瞑想に入れるのか?
アメリカンな隠者って、古都鎌倉で生息可能なのか?
衣通姫に御神酒を、ローマ時代の三美神像にワインを供えながら、私はゼロコーラで命を繋いでいる。

(拳骨手硝子碗 明治時代 探神院蔵 額は三美神銀貨)
抹茶碗の五山縁のように歪んだ、我が怒りの拳骨コップ(最初期ロット)だ!
内壁の歪みに沿って泡溜りが出来て面白い。

(白磁輪花祭器 宋元時代 探神院蔵)
あるいは戯れに、宋〜元時代の白磁でコーラを飲んでみる。
白と茶紫の色の取り合わせは結構良い。

十一面観世音の持つ水瓶には、万病に効く命の水が入っていると言う。
あれはきっとゼロコーラだと強弁し………。
---腰くびれ菩薩の如きコーラ瓶 和魂(にぎたま)涼む泡沫の夢---
狂歌はあまり作っていないので、この程度でお茶を濁して終わり。

前回の薔薇園の拾遺
---紅(くれなゐ)の重さに耐へる薔薇の首---


©️甲士三郎