今年は梅や椿は早かったが鶯の初音は例年並みで、先週頃からよく聞くようになって来た。
昨日は蛾眉鳥も待ちわびていた歌声を披露してくれて、疫病に沈む世情の中にもささやかな明るさが加わった。
(庭の蛾眉鳥)
小鳥の写真が昨年の眼病後は上手く撮れず、ピントの甘さは御勘弁頂きたい。
多くの人にとって野鳥の声や姿を見分けるのは、余程知られた鳥以外は難しいだろう。
私も現実界の鳥はそう詳しい訳では無いが、瑞鳥や伝説の鳥は良く知っている。
名前の判らぬ綺麗な鳥は、全てそんな瑞鳥の類と思っていれば良いのだ。
天与の美声を持つこの蛾眉鳥にしても、昔の日本人にとっては遠国の伝説の鳥だった。
(瑞鳥図絵皿 九谷 昭和〜平成)
---桜餅鳥の絵皿の中空に---
伝説の世界に浸るには古画や古器を使うのが良いが、今回はアンティークより気軽に入手出来るヴィンテージ(100年以内)の絵皿を紹介しよう。
特に九谷の絵皿は四季の花鳥画が多彩にあって楽しめる。
バブル崩壊後は日本伝統の美術工芸品は底値に張り付いていて、書画、陶磁器、和服、すべからくひと昔の十分の一の値で買える。
日本中で和風の暮しが廃れたのが安値の最大要因で、今や海外の方が高値で売れるそうだ。
(鳳凰図絵皿 九谷 昭和時代)
---鳥憩ふ椿の山の陰深く---
古今伝授の三秘鳥の百千鳥、呼子鳥、稲負鳥。
三光鳥、瑠璃光鳥、尾長鳥に最も格が高い朱雀、鳳凰。
隠者はこれら20世紀の現実主義下に絶滅してしまった瑞鳥達を、こうして我が夢幻楽土で保護し細々とでも生息させている。
現代生活の中では旧来の風習と共に、美しき伝説さえもすっかり廃れてしまった。
現代の物質文明の中でも、窓外の囀りを聴きながら花鳥楽土を夢想するくらいの愉しみはあっても良いだろう。
---碑に眠る詩文や百千鳥---(旧作)
©️甲士三郎