私も最近は読書も原稿書きもPCやタブレットが増えて、書斎ででじっくり構える事が少なくなった。
しかし好きな詩集や古書などをめくりつつその作品世界に浸るには、やはりそれなりの環境と道具立てが欲しい。
そのような時にはお気に入りの英国アンティークのライティングビューローに花やアーティファクトを飾り、珈琲を用意し音楽をかけてじっくり腰を据えて楽しみたい。
海外の詩集は原語で読めれば良いが、英語以外は難しいので翻訳書になる。
その場合に訳者が詩人と学者と翻訳家でかなりの違いがあって、………まあ語学に優れていても詩心が無い訳者だと中には酷い本があったりする。
写真のワーズワース詩集は良い方で、原典と日本語訳を対記してある。
気に入った詩集は何度でも読めるのが、一度結末を知ったら終りの小説より優れたところだ。
デスクライトはランタンにしてリリパットレーンの古民家のミニチュアを置き、イギリス湖水地方の古びたコテージに暮した詩人を幻視するのだ。
BGMには御当地のケルティックウーマンをお薦めする。
若い人向けには同じ湖水地方の作家でJ.K.ローリングのハリーポッターあたりなら、原語でも作者の世界に浸り易いかもしれない。
また、国文学や中国文学なら書院の窓辺か文机脇息だ。
こちらも夢幻界に誘ってくれる飾りと茶器を用意して、小一時間の異世界移転を楽しもう。
暖かな日なら少し障子を開けて、外の春風と囀りを部屋に入れるのも良いだろう。
詩や古典文学は小説と違って一冊全部を読み通す必要は無く、一句一節だけでも鑑賞が成り立つ。
ぱらぱら適当にめくりながら、目に付いた一節から夢想を広げて行ける。
麗かな春の日を夢幻に浸るも惰眠に浸るも、隠者の愉悦は尽きない。
©️甲士三郎