鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

377 今様の風雅

2024-11-28 12:52:00 | 日記

今も昔も晩生を豊かに暮す秘訣は、己が暮す世界や自然の四季を如何に愛しめるかにある。

そこで我が残生をより良く過ごすための、風雅の日々を工夫してみよう。


風雅の暮しに茶時の花と音楽は欠かせないが、現代生活ではどうしても洋花や洋楽が主となり純和風とは行かない。


(ティーポット 英国アンティーク 小鹿田徳利 益子湯呑 昭和初期)

冬は花屋も洋花ばかりとなり良い和花はまず無い。

そんな時には隠者流で野末の草の実や枯葉でも飾れば、冷え枯れた野趣も出て茶も一段と味わい深くなる物だ。

今日は運良く御近所で頂いた山茶花があるので、古民芸の瓶に投入れてみた。

最近私の茶はストレスに効くカモミールティーが増え、その為のポットとカップ選びに悩んだが、結局英国制アンティークの苫屋型ポットと古益子の湯呑に落ち着いた。

紅茶用の色絵磁器だと華やか過ぎて、老隠者には全く似合わなかったのだ。

そして初冬の花に合う音楽は、なんと言ってもバッハのピアノ曲だろう。

今回は取合わせに色々苦心したものの大正風の和洋折衷で何とかまとまった。


四季の句歌集は散歩がてらに持ち出せば、戸外でも1~2頁を開くだけで俗世から離れられるのが良い。


(草庵集註釈 江戸時代)

我が谷戸の散歩に最も適しているのは中世の和歌集で、古の鎌倉の景を幻視させてくれる。

この永福寺奥の山際はほとんど誰も来ないので、静かに古歌の情景に浸れる場所だ。

今日の本は頓阿の草庵和歌集の註釈書でその後長らく二条流歌学の規範とされて来た。

隠者も一応二条流の相伝を受けているので、この書は季節ごとに読み返し我が詠歌の基準としている。

BGMは少し前に紹介したハウザーのチェロ曲がこの場の雰囲気にぴったりで、つい腰を落ち着けてしまう。


夜は詩と音楽の神アポロンの楽園に遊ぼう。


(イコノグラム ローマ時代)

古いアポロンとムーサのシルバーコインでイコノグラムを組み、拾ってきた落葉と秋果を供えて祀ってみた。

この詩神のイコノグラムが来て以降、読むにも作るにも詩歌をより心して味わうようになれた。

音楽はこんな時こそジュディ・ローマンのハープ古曲集がふさわしい。


ーーー窓の灯に木葉舞ひ散る風の夜は 激しき楽の音にぞ籠らむーーー

鎌倉の紅葉は12月が本番なので、独吟に出る機会も増やしたい。

外出しても良い句歌が出来る保証は何も無いが、落葉の路を音楽と共にぶらつくだけで隠者には至福の時なのだ。


©️甲士三郎