散歩路にひと月遅れの薄が開いて、今週の鎌倉はようやく秋麗の日々となって来た。
愛用の1930年製のオールドライカをお供にした散歩は小さな旅にも等しく、普段は見えない様々な光景が発見できる。
朝方の光に空気も澄んで、今日は白秋と呼ぶにふさわしい日和だ。
近所の薄の穂が日差しの中で柔らかく靡いている。
出掛けにこのような爽やかな光を見られると、その日はずっと良い気分で過ごせる。
今年の9月の朝から30度を超える日々など、体調も崩し気味で何も出来なかった。
健康維持のために必須の散歩や運動も、私は天候次第気分次第でやる気が全く違うのが困った物だ。
今日のような秋麗の日なら何でも出来る気がする。
この写真は谷戸の山影の青を背景に輝く花薄を撮してみた。
ーーー薄あり陽あり風あり小径あり 世に隠れ棲む谷戸の白秋ーーー
秋の午後はやや傾いた斜めからの光が草木をドラマチックに見せてくれる。
犬蓼と麒麟草の何と言う事もない草叢が、斜光とオールドレンズのお陰で夢幻の輝きを放つ。
光は滲み物はぼやけるが、その代わり天霊地気を捉える事が出来るレンズだ。
ファインダーを覗けば肉眼で見るよりずっと良い光景が見られる。
また古いカメラを持って歩いていると、こんな細かな景色の光にまで敏感になれるのが良い。
ーーー秋草の小径途切れる所の陽ーーー
だいぶ前にも紹介した隠者愛用のオールドライカ。
レンズは長い方がヘクトール7.3cmで短い方がニッケルエルマー5cm。
この写真を撮っているレンズはニッケルズマール5cm。
いずれも1930〜32年頃のドイツ製で、もうすぐ100歳になる老兵達だ。
この古い写真機と共に、またいつの日か遥かなる旅に出たいものだ。
ーーー散歩路古式写真機供連れに 世の果てまでの旅を夢見つーーー
鎌倉は12月の初旬までが秋なので、これから1ヶ月は色々と秋の美しい物が見られるだろう。
この夏はほとんど良い情景に出会えなかった分、秋はそれらを逃さず貪欲に味わいたい。
©️甲士三郎