鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

362 星風の古都

2024-08-15 12:55:00 | 日記

立秋、旧暦七夕、鎌倉ぼんぼり祭、旧盂蘭盆と続くこの週は、隠者の星祭の時だ。


青薄の野辺に100年ほど前の中国の月天娘を飾り、夕星のファンタジーに浸ろう。

物悲しいほどの蒼さの中にこそ星界の荒魂は宿る。



月天に巌谷小波の「日本御伽話」初版を添えて星祭の祭壇を設えてみた。

戦前の童話には現代作家には望めない宗教的な不思議さがあって隠者好みだ。

実は我家には巌谷小波が大量に遺した御伽俳句の書軸が、知らぬ間に十数本も集まっている。

今週は彼に倣って童話風の俳句を幾つか詠んでみた。

ーーー草陰に風灯揺れて星祭ーーー

そしてこの美しき星宵には中世を想わせるような古箏や龍笛の音楽が欲しい。


鶴ヶ丘八幡宮のぼんぼり祭は以前にも紹介したが、近年は社殿周囲を派手にライトアップしたお陰で返って灯籠が暗く見え幻想味が失せた。



その代わり舞殿では日本舞踊を催すようになったが、残念ながら全く場違いな春の舞曲を生演奏も無くやっていた。

いずれも伝統文化に対する無神経さが原因だが、衆愚制下のマーケティング主導では全ての文化が低俗化するのは必然だ。

それも隠者のような世捨人には如何ともし難く、幽居に帰って独り離俗夢幻の秘儀を奉るとしよう。

句歌なら昔の美しい星空と万燈を思い起こして詠めるのが救いだ。

ーーー海風の古都星影の万燈会ーーー


我家の星祀りは「銀河鉄道の夜」に出て来る星祭に因んでいる。



この本は数年前に宮沢賢治のファンタジー3部作の初版本が揃った時に紹介したが、今宵は近年に出た細野晴臣の「銀河鉄道の夜」特別版のサウンドトラックでより深い夢幻の儀式となった。

ますむらひろしの猫版アニメを想い起こし、鎌倉産のずんぐり野菜(謎めいた味だった)の御供えだ。

半世紀前の写真では湘南の海から銀河が立ち上がっているのが見えるが、今は光害でほとんど見えなくなっている。

ーーー闇海へ風を吹き出す銀河の根ーーー


隠者の暦は8月7日は「立秋」ではなく、小暑大暑に続く「酷暑」と節季名を変えた。

その後は処暑白露のままで、彼岸頃にようやく立秋となるのだ。

近年の気候変動は我が句歌の季語詠題にも大きな影響を及ぼしている。


©️甲士三郎



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