初学から2017年までの厳選30句、ご笑覧あれ。
狂ほしや過去の桜が散りやまぬ
花屑の逆巻く水の底の穴
麗らかな大きな雲の下の郷
初蝶のまはりの春のまだ静か
蒲公英やこんな画家でも住める町
隙間から猫の手が出る遅日かな
吹き荒ぶ異形の山の古巣かな
くれなゐを重ねて黒き牡丹かな
仮の世の東をどりは昼も夜も
黒蝶が眠りの粉を撒きし古都
星祭街から猫の消えてをり
時満ちて沙羅の落花の透き通る
奈落から風吹いて来る蛍橋
音もなく遠き月下の花火かな
空蝉を貫く朝の光かな
裏山で化鳥の呼ばふ三尺寝
天高し常滑壺の口ぽかん
かなかなやみそひともじのぬれてをり
光ごと月を抱きてうねる雲
月光が鉄路を磨く旅の果
濡れそぼつ鬼より赤き紅葉かな
千本の竹の打ち合ふ荒月夜
廃園に蝶の息づく薄日かな
夜と朝の間に灯る霧の町
賢治なら星蒔くやうに麦を蒔く
光降る枯木の中の涸泉
雪ばかり見るから鹿の眼は綺麗
白鳥を追ふ白鳥の長き水尾
雪国の底なす蒼き流れかな
牛頭の浪馬頭の巌初明りかな
惜春観音図 甲士三郎
©️甲士三郎
狂ほしや過去の桜が散りやまぬ
花屑の逆巻く水の底の穴
麗らかな大きな雲の下の郷
初蝶のまはりの春のまだ静か
蒲公英やこんな画家でも住める町
隙間から猫の手が出る遅日かな
吹き荒ぶ異形の山の古巣かな
くれなゐを重ねて黒き牡丹かな
仮の世の東をどりは昼も夜も
黒蝶が眠りの粉を撒きし古都
星祭街から猫の消えてをり
時満ちて沙羅の落花の透き通る
奈落から風吹いて来る蛍橋
音もなく遠き月下の花火かな
空蝉を貫く朝の光かな
裏山で化鳥の呼ばふ三尺寝
天高し常滑壺の口ぽかん
かなかなやみそひともじのぬれてをり
光ごと月を抱きてうねる雲
月光が鉄路を磨く旅の果
濡れそぼつ鬼より赤き紅葉かな
千本の竹の打ち合ふ荒月夜
廃園に蝶の息づく薄日かな
夜と朝の間に灯る霧の町
賢治なら星蒔くやうに麦を蒔く
光降る枯木の中の涸泉
雪ばかり見るから鹿の眼は綺麗
白鳥を追ふ白鳥の長き水尾
雪国の底なす蒼き流れかな
牛頭の浪馬頭の巌初明りかな
惜春観音図 甲士三郎
©️甲士三郎