1936年に開通した Blue Ridge Parkway は全長469マイル(755キロ)の長さを誇り、バージニア州とノースカロライナ州をまたいでいる。このパークウェイの特徴は長い東アパラチア山脈の尾根を貫通している所にある。自分が確めた最高高度は3400フィート(1030メートル)であった。資料によると高度600から1200メートルの標高を縦走する道路である。今回はパークウェイの北部の一部(バージニア州)を南から北に向かって走った。当日はコロンバスディの休日で秋の晴天に恵まれた。交通量は決して多くはなかった。巡航スピードは60から70キロ位である。ハーレーダビットソンにまたがるライダー達が気持ちよさそうに風を切りすれ違って行く。途中、目先のコーナーを曲がってこちらに近付いて来た一台の車には目を疑った。それは老人が駆るフォードのT型モデルであった。遅いだけあってT型モデルの背後にはクルマが数珠繋ぎの状態であった。
バージニアの自然は緑が美しく眩しかった。それは何処となく日本の山々に似ている。車内には音楽が流れていた。ブルーリッジの山脈を背景に聞くと心が躍る曲、Country Roads です。
John Denver, Country Roads
今回走った道はパークウェイ全体の8分の1程の距離であったがそれでも十分に長く感じたのは展望場所が沢山設けられている所にある。このパークウェイはぼちぼちと走る様な仕掛けに満ちていた。パークウェイを降りるとそれは下山に等しく天界から下界への降臨の様で現実に戻るという感覚であった。名曲、カントリーロードが現在も子供から年配の方まで広く口ずさまれているのは人々の意識の深層に故郷(ふるさと)が存在し、そこは自然に恵まれた野山、水のせせらぎ、小鳥の歌声、そよ風と太陽。そんな地球の母性の懐に包まれ安泰を感じながら永遠に暮らしたいとする魂の渇望であろう。逆に言えば人間はそんな故郷が存在するからこそこの現実に向き合う事が出来る。これからも時々カントリーロードを歌う時このブルーリッジマウンテンの光景が日本の故郷の景色と重なって浮かんでくるであろう。そういった映像を得た事が今回の旅の一つの収穫であった。