先週はニューヨーク(マンハッタン)の中心を歩いてみた。12月ともなると街は冷える。高層ビルを横切るブロックの十字路では西のハドソンリバーから東のハーレムリバーに向けて冷たい風が通り抜ける。横断歩道で信号が青に変わると、襟を閉めて急ぎ足となる。例年12月のこの季節はクリスマスシーズンを祝い明るいイルミネーションと共に街は人と活気に溢れ、街の中心を通り抜けるブロードウェイや5番街は直進歩行が困難な程であった。それに比べて今年のニューヨークのクリスマスシーズンは閑散とし暗く沈んだ空気が漂っている。有名なロックフェラーセンターのクリスマスツリーの周りにも人影はまばらである。
現在アメリカでは大変な事が起こっている。アメリカは破壊的な攻撃を受けているのである。残酷な例え話であるが、鍋で蛙を茹でる時に沸騰したお湯の中に蛙を放り込むと蛙は驚いて飛び出してしまう。ところが、常温の水槽の中に蛙を泳がしてじょじょにじょじょに温度を上げるとやがて蛙は白い腹を上にして茹であがってしまう。自由の国アメリカは長い時間をかけて巧妙に侵略されて来ていたのである。その静かな攻撃の最後の一撃が今年の大統領選挙というイベントであった。この選挙の結果でアメリカは勢力の手に落ちると思われた。そして、落ちたと思った。
国家の内的情勢が街の空気に反映されている様だ。春の来ない冬はない。夜明け前が一番暗い。今のアメリカはハリウッド映画の様な展開だ。映画は最後のラストシーンである。予期せぬ展開が起こり、最終的には正義が勝つ。そういったシナリオが実際に展開している様で、手に汗を握る。これは歴史の転換時であるのは間違いない。しかし、これらは終りではなくて始まりなのであろう。正確にはアフターコロナの時代が始まろうとしている。