『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第634号 【別冊 編集後記】
第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン
右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前回も、ネットの「知恵袋」の中のギター演奏に関するご意見を
紹介しました。
今回は、以前から説明しようと考えながらそのままになっていました
利き手と非利き手の役割について改めて考えて見ましょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界 (9)
◆ 利き手と非利き手の役割について ◆
~ 両手にはそれぞれの役割がある ~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●前回までのおさらい
前回私は「利き手と非利き手の役割」について、
演奏するにあたって、演奏する手/腕にも主役と脇役があり、
そこに利き手と非利き手の役割がある
と書きました。
また、私の持論として「利き手は心につながっている」と
いい続けてきました。
そして、今年の最初の号の新春放談では、
音楽は心が心に訴えるものであるという意味の言葉を紹介しました。、
《音楽は心で生まれ、心に届かなければ意味がない。
セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)》
『教養としての世界の名言 365』p.386
*参考:
『教養としての世界の名言 365』佐藤 優/監修 宝島SUGOI文庫
2021/11/5
それ故に、心の表現者として利き手を主役に演奏するべきだ、と。
第629号(No.629) 2022/11/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見 」
2022.11.5
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見-週刊ヒッキイ第629号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/11/post-044348.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/801461827eaef5ba210c119da48fd743
では、「左利きの生徒さんには左用のギターを勧めます」という
右利きのギター講師さんの意見を紹介しました。
弦をハジき、強弱、タイミング、音色を操作する
「コレはぜーったい利き手でなければなりません」と。
・・・
で、戻って前号では、今までは左利き用の楽器がなかったので、
仕方なしに右利き用の楽器を使ってきたけれど、
これからは、正しく利き手にあった楽器を使って演奏するべきだ、
と書きました。
ないのなら作ってしまおう、もしくは作ってもらおう、と。
不都合があるならば、まず当事者が声を上げる。
物事をはじめから知っている人もいれば、
教えてもらって気付く人もいるのだから。
知らない人には教えてあげましょう。
みんなが暮らしやすい世の中に変えてゆくために。
――と、訴えてきました。
●2月10日は「左利きグッズの日」――楽器も左用を!
来週の2月10日は、「左利きグッズの日」です。
左利き生活を向上させるための道具や機械や何やかや、
左利きの生活環境を改善してゆこうという日であります。
昨今ではかなりの種類の左手・左利きグッズが開発され、
一般にも広く販売されるようになってきました。
嬉しい傾向です。
とはいえ、左利きのための楽器という面では、まだまだ遅れています。
前の段落でも言いましたように、
ないのなら作ればいい、のです。
そして困っている当事者が強く発言していくべきなのです。
左用の楽器を作ってください! と。
みなさん、実際に楽器演奏している人もいない人も、
単なる音楽好きの人もそうでない人も、
ぜひ、ご協力をいただきたいものです。
●なぜ左用楽器がないのか?
左用の楽器がないのがどうしてなのかを考えてみました。
するとその原因の一つは、
やはり「楽器というものが両手で扱うものだ」
という点にあると思われます。
昔から「両手で使うから利き手は関係ない」という人が多くいます。
楽器のみならず、カメラでも、パソコンでもそうですね。
クルマの運転でもいわれます。
実際は両手を使うといっても、
先のギターの例を見てもわかりますように、
弦を弾く手と弦を押さえる手の違いがあります。
フルートでもどちら向きに構えるかの違いだけ(たぶん)ですが、
そもそもこの身体の構えというものが、
やはり左右差が出る事柄だろうと思えます。
野球の投打でもそうですし、
単に構えが逆になるだけといえば簡単なことのようですが、
実はそれだけで全く異なったものになってしまうのです。
前号で「<左利きプチ・アンケート>第28回 利き足を調べてみよう・
チャップマン利き足テスト」を紹介したときに、
利き足 =動作をする「作用足」
非利き足=体重を支える「軸足」
という違いがあると説明しました。
構えには、手だけでなくこの足の違いが出てきます。
そして、利き手と利き足は相関関係があるそうで、
ここに左右差が生まれてきます。
そういう左右差の違いがわかる人が
まだまだ少ないのではないでしょうか。
結局、利き手・利き側の違いというものが、
本当のところまだ一般の人には十分理解されていない、
ということなのでしょう。
私たちの努力が足りない、ということです。
●両手にはそれぞれの役割がある
さて、「両手で使うから利き手は関係ない」
という意見に対する反論を考えてみましょう。
「利き手・利き側」というものがあるという点については、
否定する人は少ないでしょう。
では、それぞれの利き手/腕と
利き手でない方の手/腕の役割の違いについてみておきましょう。
1998年発行という古い本になりますが、
脳科学者で京大霊長類研究所の所長でもあった久保田競さんの著書、
『脳を探検する』(講談社)にこうあります。
両手を使うことで脳を鍛えよう、という提案のなかで、
この場合の<両手を使う>とは、
《右も左も同じように使えるようにという意味ではありません。
食事のときに左右どちらの手でもお箸が使えるとか、
どちらの手でも字が書けるということではありません。
つまり「利き手は利き手らしく、そうでない手は、
そうでない手のように左右どちらも使いなさい」ということです。
脳に左右で分業があるのですから、
手の使い方も脳の分業と直結した使い方をしなければならない
――両手をそのように使い分けねばならないのです。
(略)
だから、左右どちらの手も同じような動きをする
という意味での両手使いではなく、右手は右手としての器用さを、
左手は左手としてのそれを発揮できるような、
そういう両手使いをすすめます。》pp.216-217
と。
「利き手は利き手らしく、そうでない手は、そうでない手のように」
というのです。
そして、手には運動器官としての役割と感覚器官としての役割がある、
といいます。(pp.194-195)
以下、
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第315号(No.315) 2012/6/2「レフティ・グッズ・プロジェクト
<左手・左利き用品を考える>第5回」
より、一部を加筆修正。
--
利き手は主役として器用さを、
非利き手は感覚器としての機能を生かせ、といわれます。
【両手を使い分ける】:両手にはそれぞれ役割がある。
・利き手 =作用(運動器官)
・非利き手=感覚(感覚器官)
例えば、点字を読むのは、利き手より非利き手
(右利きなら、右手より左手)
を使う方が読むスピードも正確さも優れている、といいます。
また、大工さんは右手でカンナをかけ、
左手でその削った面をさわって確かめる、という動作をします。
紙切りでもそうで、主役の右手でハサミをチョキチョキし、
感覚器である左手で巧みに紙を送ります。
野菜を細かく切るときも、
右手は包丁を持ち、刃を適切な角度で保ち、
切るという動作を担当し、
左手は単に野菜を押さえるのではなく、
切る際の包丁を下ろす間隔を誘導しています。
ハサミで言えば、
利き手では、正しい位置に正確な角度で刃を当てチョキチョキする、
非利き手は、刃の当たる正確な切る位置にしっかりと紙をあてがう、
という役割分担です。
--
*参照:
久保田競『脳を探検する』(講談社 1998)
・・・
紙切り芸というのがあります。
*参照:
紙切り(寄席) - YouTube
https://youtu.be/0rBztNaRbe8
鋏と紙が作り出す即興の芸
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202003/202003_06_jp.html
これもハサミを持つ利き手よりも紙を動かす左手の役割が、
重要なのです。
ハサミを持っている方の手はほとんど動かしません。
紙の方をグルグルと動かすのです。
これも感覚器官としての非利き手の役割を活かしているのですね。
ギターだって、いい演奏をしようと思えば、
弦を押さえる非利き手の動きが大事です。
さてさて、そうはいっても、
肝心なのはハサミを持つ、あるいは弦を弾く、
器用な運動器官としての利き手なのは変わりません。
それを補完するのが、感覚器官としての非利き手です。
そして、利き手と非利き手がそれぞれの役割を十全に発揮したとき、
優れたパフォーマンスが完成するのです。
●演奏は利き手と非利き手の相互作用によって成り立つ
「なぜ左用楽器がないのか?」というと、
それは
「両手で使うから利き手は関係ない」と誤解されているから、
です。
でも本当は両手にはそれぞれの役割があるのだ、ということです。
そして、今現実にある、一般の楽器が両手を使うといいながら、
実は右手を利き手として主体的に演奏するように作られている、
という事実がよく知られていない、ということでしょうか。
知られていないというよりも、理解されていない、
と言い換えるべきでしょう。
楽器を演奏するという行為の実際は、
単に両手、二つの手を使うというのではなく、
利き手と非利き手の相互作用によって成り立っている、ということです。
そして、現在の楽器の多くは、
右手を利き手として使用する人たち向けのものになっているのです。
これらのことを正しく理解してもらえれば、
私の願い――左利き用の楽器の普及も夢ではない、といえるでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「★600号までの道のり」は、お休みです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」と題して、今回も全紹介です。
・・・
弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
『レフティやすおのお茶でっせ』〈左利きメルマガ〉カテゴリ
--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手-週刊ヒッキイ第635号
--
第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」
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第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」
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前回も、ネットの「知恵袋」の中のギター演奏に関するご意見を
紹介しました。
今回は、以前から説明しようと考えながらそのままになっていました
利き手と非利き手の役割について改めて考えて見ましょう。
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左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界 (9)
◆ 利き手と非利き手の役割について ◆
~ 両手にはそれぞれの役割がある ~
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●前回までのおさらい
前回私は「利き手と非利き手の役割」について、
演奏するにあたって、演奏する手/腕にも主役と脇役があり、
そこに利き手と非利き手の役割がある
と書きました。
また、私の持論として「利き手は心につながっている」と
いい続けてきました。
そして、今年の最初の号の新春放談では、
音楽は心が心に訴えるものであるという意味の言葉を紹介しました。、
《音楽は心で生まれ、心に届かなければ意味がない。
セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)》
『教養としての世界の名言 365』p.386
*参考:
『教養としての世界の名言 365』佐藤 優/監修 宝島SUGOI文庫
2021/11/5
それ故に、心の表現者として利き手を主役に演奏するべきだ、と。
第629号(No.629) 2022/11/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見 」
2022.11.5
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見-週刊ヒッキイ第629号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/11/post-044348.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/801461827eaef5ba210c119da48fd743
では、「左利きの生徒さんには左用のギターを勧めます」という
右利きのギター講師さんの意見を紹介しました。
弦をハジき、強弱、タイミング、音色を操作する
「コレはぜーったい利き手でなければなりません」と。
・・・
で、戻って前号では、今までは左利き用の楽器がなかったので、
仕方なしに右利き用の楽器を使ってきたけれど、
これからは、正しく利き手にあった楽器を使って演奏するべきだ、
と書きました。
ないのなら作ってしまおう、もしくは作ってもらおう、と。
不都合があるならば、まず当事者が声を上げる。
物事をはじめから知っている人もいれば、
教えてもらって気付く人もいるのだから。
知らない人には教えてあげましょう。
みんなが暮らしやすい世の中に変えてゆくために。
――と、訴えてきました。
●2月10日は「左利きグッズの日」――楽器も左用を!
来週の2月10日は、「左利きグッズの日」です。
左利き生活を向上させるための道具や機械や何やかや、
左利きの生活環境を改善してゆこうという日であります。
昨今ではかなりの種類の左手・左利きグッズが開発され、
一般にも広く販売されるようになってきました。
嬉しい傾向です。
とはいえ、左利きのための楽器という面では、まだまだ遅れています。
前の段落でも言いましたように、
ないのなら作ればいい、のです。
そして困っている当事者が強く発言していくべきなのです。
左用の楽器を作ってください! と。
みなさん、実際に楽器演奏している人もいない人も、
単なる音楽好きの人もそうでない人も、
ぜひ、ご協力をいただきたいものです。
●なぜ左用楽器がないのか?
左用の楽器がないのがどうしてなのかを考えてみました。
するとその原因の一つは、
やはり「楽器というものが両手で扱うものだ」
という点にあると思われます。
昔から「両手で使うから利き手は関係ない」という人が多くいます。
楽器のみならず、カメラでも、パソコンでもそうですね。
クルマの運転でもいわれます。
実際は両手を使うといっても、
先のギターの例を見てもわかりますように、
弦を弾く手と弦を押さえる手の違いがあります。
フルートでもどちら向きに構えるかの違いだけ(たぶん)ですが、
そもそもこの身体の構えというものが、
やはり左右差が出る事柄だろうと思えます。
野球の投打でもそうですし、
単に構えが逆になるだけといえば簡単なことのようですが、
実はそれだけで全く異なったものになってしまうのです。
前号で「<左利きプチ・アンケート>第28回 利き足を調べてみよう・
チャップマン利き足テスト」を紹介したときに、
利き足 =動作をする「作用足」
非利き足=体重を支える「軸足」
という違いがあると説明しました。
構えには、手だけでなくこの足の違いが出てきます。
そして、利き手と利き足は相関関係があるそうで、
ここに左右差が生まれてきます。
そういう左右差の違いがわかる人が
まだまだ少ないのではないでしょうか。
結局、利き手・利き側の違いというものが、
本当のところまだ一般の人には十分理解されていない、
ということなのでしょう。
私たちの努力が足りない、ということです。
●両手にはそれぞれの役割がある
さて、「両手で使うから利き手は関係ない」
という意見に対する反論を考えてみましょう。
「利き手・利き側」というものがあるという点については、
否定する人は少ないでしょう。
では、それぞれの利き手/腕と
利き手でない方の手/腕の役割の違いについてみておきましょう。
1998年発行という古い本になりますが、
脳科学者で京大霊長類研究所の所長でもあった久保田競さんの著書、
『脳を探検する』(講談社)にこうあります。
両手を使うことで脳を鍛えよう、という提案のなかで、
この場合の<両手を使う>とは、
《右も左も同じように使えるようにという意味ではありません。
食事のときに左右どちらの手でもお箸が使えるとか、
どちらの手でも字が書けるということではありません。
つまり「利き手は利き手らしく、そうでない手は、
そうでない手のように左右どちらも使いなさい」ということです。
脳に左右で分業があるのですから、
手の使い方も脳の分業と直結した使い方をしなければならない
――両手をそのように使い分けねばならないのです。
(略)
だから、左右どちらの手も同じような動きをする
という意味での両手使いではなく、右手は右手としての器用さを、
左手は左手としてのそれを発揮できるような、
そういう両手使いをすすめます。》pp.216-217
と。
「利き手は利き手らしく、そうでない手は、そうでない手のように」
というのです。
そして、手には運動器官としての役割と感覚器官としての役割がある、
といいます。(pp.194-195)
以下、
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第315号(No.315) 2012/6/2「レフティ・グッズ・プロジェクト
<左手・左利き用品を考える>第5回」
より、一部を加筆修正。
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利き手は主役として器用さを、
非利き手は感覚器としての機能を生かせ、といわれます。
【両手を使い分ける】:両手にはそれぞれ役割がある。
・利き手 =作用(運動器官)
・非利き手=感覚(感覚器官)
例えば、点字を読むのは、利き手より非利き手
(右利きなら、右手より左手)
を使う方が読むスピードも正確さも優れている、といいます。
また、大工さんは右手でカンナをかけ、
左手でその削った面をさわって確かめる、という動作をします。
紙切りでもそうで、主役の右手でハサミをチョキチョキし、
感覚器である左手で巧みに紙を送ります。
野菜を細かく切るときも、
右手は包丁を持ち、刃を適切な角度で保ち、
切るという動作を担当し、
左手は単に野菜を押さえるのではなく、
切る際の包丁を下ろす間隔を誘導しています。
ハサミで言えば、
利き手では、正しい位置に正確な角度で刃を当てチョキチョキする、
非利き手は、刃の当たる正確な切る位置にしっかりと紙をあてがう、
という役割分担です。
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*参照:
久保田競『脳を探検する』(講談社 1998)
・・・
紙切り芸というのがあります。
*参照:
紙切り(寄席) - YouTube
https://youtu.be/0rBztNaRbe8
鋏と紙が作り出す即興の芸
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202003/202003_06_jp.html
これもハサミを持つ利き手よりも紙を動かす左手の役割が、
重要なのです。
ハサミを持っている方の手はほとんど動かしません。
紙の方をグルグルと動かすのです。
これも感覚器官としての非利き手の役割を活かしているのですね。
ギターだって、いい演奏をしようと思えば、
弦を押さえる非利き手の動きが大事です。
さてさて、そうはいっても、
肝心なのはハサミを持つ、あるいは弦を弾く、
器用な運動器官としての利き手なのは変わりません。
それを補完するのが、感覚器官としての非利き手です。
そして、利き手と非利き手がそれぞれの役割を十全に発揮したとき、
優れたパフォーマンスが完成するのです。
●演奏は利き手と非利き手の相互作用によって成り立つ
「なぜ左用楽器がないのか?」というと、
それは
「両手で使うから利き手は関係ない」と誤解されているから、
です。
でも本当は両手にはそれぞれの役割があるのだ、ということです。
そして、今現実にある、一般の楽器が両手を使うといいながら、
実は右手を利き手として主体的に演奏するように作られている、
という事実がよく知られていない、ということでしょうか。
知られていないというよりも、理解されていない、
と言い換えるべきでしょう。
楽器を演奏するという行為の実際は、
単に両手、二つの手を使うというのではなく、
利き手と非利き手の相互作用によって成り立っている、ということです。
そして、現在の楽器の多くは、
右手を利き手として使用する人たち向けのものになっているのです。
これらのことを正しく理解してもらえれば、
私の願い――左利き用の楽器の普及も夢ではない、といえるでしょう。
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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」と題して、今回も全紹介です。
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手-週刊ヒッキイ第635号
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