『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】
第652号(No.652) 2023/11/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(16)
左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン
右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第652号(No.652) 2023/11/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(16)
左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
9月以来の「楽器における左利きの世界」です。
9月は「左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」でした。
左用の<鍵盤ハーモニカからピアノへ>の展開を考えて、
鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。
いくつか思うところが見つかりました。
それをどう具体的なものに変えてゆくか、という点がまだ不明です。
まずは、過去のメルマガで左利きと鍵盤ハーモニカ始め楽器を
どう扱ってきたのか、その辺を振り返ってみたいと思います。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
{左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(2)
- 人のためにあるのが「作法」 -
過去の弊誌の音楽・楽器関連記事から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●弊誌の音楽・楽器関連号
まずは最近のものから、2018年には
<【左手・左利き用品を考える】右用と左用の違い(19) 楽器編>
があります。
--
第512号(No.512) 2018/2/17「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(19) 楽器編(1)バイオリン」
バイオリン―右手用と左手用との違い
●楽器とカメラ
●利き手で行うべき心の作用
●楽器には左用がない
●左利き用バイオリン
●純丘曜彰さんの左利きバイオリンに関する意見
●「RISAバイオリン教室」の瀧澤理紗さんの意見
●左利き用のバイオリンが普及しない理由
●利き手を無視して教えてきた楽器
●プロ野球の王選手も鳥谷選手も転向派
●自分の持って生まれた特質を活かす
●<楽器は心につながる利き手で演奏する>
第514号(No.514) 2018/3/17「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(20) 楽器編(2)カスタネット」
最初に出会う楽器―カスタネット
●最初に出会う楽器
●「正しい」? 楽器の叩き方
●既定の枠にこだわらないクリエイティブなやり方
●いつも変らぬ結論
--
私の持論――
「利き手は心につながっている」
のですから、
楽器の演奏も心の表現であるかぎり、
利き手主役で行うべきことです。
おんがく(音楽)は、「音学」ではなく、
「音を楽しむ」と書きます。
楽器の演奏も、辛いだけの“訓練”や“勉強”ではなく、
“楽しめるもの”であるべきでしょう。
そのためにも、楽器メーカーさんは
利き手に対応した楽器を用意して欲しいものです。
--
第516号(No.516) 2018/4/21「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(21) 楽器編(3)リコーダー」
学校で出会う楽器―リコーダー
●鍵盤ハーモニカ
●リコーダーは左右平等?
●リコーダーの正しい持ち方
●左用リコーダー
●片手リコーダー
●両用リコーダーの試み
第518号(No.518) 2018/5/19「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(22) 楽器編(4)鍵盤ハーモニカ・前編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・前編
●なぜ鍵盤ハーモニカを習うのか
●ピアノ演奏と左利きの苦悩
--
ガボちゃんのブログの3月30日の記事
「楽器の利き側の話を読むと思う事」
https://plaza.rakuten.co.jp/gabochan2007/diary/201803300000/
に紹介されていた
《学校では教えてくれない、音楽のことを書いてい》る
ブログ『ブー先生の音楽教室』の3月28日の記事
「左利きとピアノ演奏」
http://boosensei.hatenablog.com/entry/left-handed-play-piano-lesson
《ピアノの楽譜は大体が2段で出来ていて、
大抵の場合は右手がメインのメロディー、
左手はサブ的存在の伴奏を担当しています。》
《たとえ上級になっても、左手のための曲や、
左手で弾く指示が無い場合、
楽譜は「上段が右手」「下段が左手」が普通なんですよね。》
上段が右手担当で、下段が左手担当らしいのですが、
《右利きの自分からしたら考えたことも無かったのですが、
左利きの人は「メインが左・サブが右」
が当たり前の生活をしているのに、
ピアノを弾くときだけ逆にしろ
っていうのは難しい話なわけで…。
ピアノの「右手メイン」に違和感を感じてしまうのも
当然でしょう。》
--
●縦書き右開き本と横書き左開き本の違い
●ピアノも左利き仕様と共存へ
●左用ピアノと心の表現としての音楽
●ピアノと鍵盤ハーモニカとの左用の可能性
第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・後編
●鍵盤ハーモニカと左利き
--
事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」
http://www.pianonymous.com/entry/2014/08/19/%E5%B7%A6%E5%88%A9%E3%81%8D%E7%94%A8%E3%81%AE%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
■対策1:ホースを延長して、反対側まで伸ばす。
■対策2:右手を鍛えるための試練とおもって頑張る
■対策3:もういっそのこと私と同じスタイルで弾こうよ!
《…以上、あまり解決に導けなくて申し訳ない。》
《※追記 2014/09/04
左利き用の鍵盤ハーモニカについて
スズキ楽器製作所へ直接問い合わせを行った。
結論からいうと、
現状どのメーカーも製造は一切していないようだ。
というのも左利き用のパーツを製造するには
倍以上のコストがかかり、
作りたくてもどこも作れない状況とのこと。
うちのサイトにきてくれた左利きの皆様、
有力な情報が提供できずすみません。》
●相談サイトでは……
●「ちょっと」だからこそ簡単!?
--
身体に服を合わせるのが、普通の考え方です。
服に身体を合わせるなんて、あり得ない! のでは?
手や腕は、右と左の二つしかありません。
単純に考えれば、
右用があれば、左用があっていいのではないでしょうか。
作っても二つだけです。
利用者全体の総数が違う、というかもしれませんが、
だからといって、多数決で決める必要はありません。
洋服のサイズを多数決で決められても困るでしょう。
...
結局は、心がけの問題ではないでしょうか。
発想の問題。
一人でも多くの人に音楽を楽しんでもらいたい、
と考えるかどうか。
心の優しさ、思いやりの問題とも言えそうです。
--
●左右平等の思想で……
--
右利きが多数派だから「右へならえ」せよ、
ではなくて、
左右平等で考えてほしいものです。
人は、みんなやっぱり人なのです。
心もあれば、それぞれに痛みも感じるのです。
「自分だけがしあわせであれば良い」
なんて、誰も思いませんよね。
「みんながしあわせになれる」
そういう社会にかえてゆきましょう
まずは楽器から、始めてみませんか?
--
第522号(No.522) 2018/7/21「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(24) 楽器編(6) 最終回まとめ編」
―最終回まとめ編
●心と身体の能力
●自分がされてうれしいことを他人にする
●楽器も学用品
●演奏方法と利き手
●右尊左卑を改めよう
●やる気があるかどうか、やる気になるかどうか
●上に立つ人の考え方と疑問に思う想像力
●左用の楽器の有無
--
「右用と左用の違い 楽器編」は、以上です。
第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」
で、《事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」》
を紹介しています。
これは、前回の「鍵盤ハーモニカの世界(1)」で紹介しました、
『鍵盤ハーモニカの本』の著者・南川朱生(ピアノニマス)さんの
記事でした。
鍵盤ハーモニカの専門家なので、それについて検索すれば、
この出会いは偶然ではなく当然のこと、だったようです。
こんな風に色々と考えてきたわけですが、
基本的に私の姿勢は変わっていないと思います。
「左利きには左利きの楽器が必要だ」という考え方です。
なぜなら、それが利き手というものの性質だから、です。
●「左利き講座<左利きQ&A>」
その十年前、2007~2008年には、
「左利き講座<左利きQ&A>」のなかで、【左利き用の楽器】や
「左利きに有利な楽器」という問いについての文章を書いていました。
--
第127号(No.127) 2008/4/5
「<左利きQ&A>(17)左利き用品って?《3》」
☆【左利き用の楽器】☆彡
――――――――――――
・第84号(No.84) 2007/6/2「<左利きQ&A>(8)左利きと音楽」
「左利き講座<左利きQ&A>/(8)左利きと音楽―序の口」
「左利きと音楽」と題して、左利き用の楽器を調べてみました。
●左利き用ギター
これは単純に弦を張り替えるだけでは、
必ずしも左利き用にはならない、
やはり専用のギターを購入すべきだそうです。
(画像:左利き用と右利き用の違い それぞれフェンダー・ストラトキャスター、ギブソン・レスポール(「エレキギター博士/左利き用(レフティ)エレキギターについて」https://guitar-hakase.com/lefty/より無断拝借))
●左利き用ピアノ
「左側が高音、右側が低音」と従来のものとは逆の構造で、
右利きの人同様に利き手(左手)でメロディラインが弾け、
伴奏には非利き手(右手)を使える、という。
(画像:左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏しているクリストファー・シード(Christopher Seed)さん)
●左利き用バイオリン
「全てを左右逆に作ってある特注品」を使っている人がいる。
しかし、幸いなことに、
左利き用バイオリンを市販する会社も出てきました。
前回「左利き用品って?《2》」(第122号)で紹介しました。
2007.09.07 左利き用バイオリン
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/09/post_3896.html
「e-String」というネット通販サイトで販売
トップページ > 楽器 > ・ 左利き用バイオリン
楽器 バイオリン 左用
バイオリン 左利き用 130,000円(税込)
(画像:左利き用バイオリン)
●リコーダー、ホルン
サイト「クラシックギターのフォーラム」の
「左利きって?」の質疑応答、
ギター初心者は右利き用がよいのか左利き用がよいのか、
のなかで「待雪」氏のコメントより。
「リコーダーには左利き用の楽器が存在していた」
「現在でもリコーダーの一番下の管(足部管)は回転しますが、
これは左利き右利きを切り替えるため」
「ホルンはベルに突っ込んでいる手の操作が音色や音程にダイレク
トに影響するので、極めて稀ですが、左利き用(つまり左手をベ
ルに突っ込む)のホルンというのがある」
さらに探してみれば、
色々な楽器において左利き用が作られているケースがある、
と思われます。
(画像:左利き用(左)と右利き用(右)のフルート(『フルートと音楽の日々』「Aihara 左利き用フルート:Yamano Flute World '14」より))
☆ 左利き用の鍵盤ハーモニカ ☆彡
―――――――――――――――――
相談でよく問われるのが、
「左利き用の鍵盤ハーモニカ」の有無です。
・第89号(No.89) 2007/7/7
「<左利きQ&A>(9)鍵盤ハーモニカ」
「左利き講座<左利きQ&A>/(9)左利きと音楽・序二段
―鍵盤ハーモニカ」
どうやら、「鍵盤ハーモニカは右手で使う」というのが、
現状では仕方のないこと、ということに落ち着きそうです。
しかし、左手用鍵盤ハーモニカが現れ、
それを左利きの子供たちが左手で扱うようになれば、
その発展形として、
将来、左利き用ピアノが普及するようになるかもしれません。
--
第97号(No.97) 2007/9/1
「<左利きQ&A>(11)左利きに有利な楽器」
では、音楽人類学の研究者の著作
『楽器からのメッセージ 音と楽器の人類学』西岡信雄/著
音楽之友社(2000)より「利き手と楽器の右左」の章から紹介。
西岡信雄氏は、利き手との関連で楽器を三種に分類しています。
1・左右の手の役割が自由に交代できるタイプ…打楽器
2・どちらか一方の手が演奏を主担するタイプ…金管楽器
3・両手がつねに演奏に関与するタイプ…木管・弦・鍵盤楽器
1は、「好きなように叩けばよいのであるから
利き手の左右に有利不利がない」
2は、「逆にこれが明確である」
「トランペットやトロンボーンは右利き、
ホルンは左利きが絶対に有利である。」
ところが、ネットで調べてみますと、ホルンにおいて、
実際に楽器を持ち、機械的なバルブの操作を行うのは左手ですが、
右手には重要な音の調節という役割があることがわかり、
決して左手有利な楽器ではない、というのです。
リコーダーの件も、
フィルドゥング(S. Virdung 1465~?)の音楽教本
『Musica getutscht und ausgezogen』のリコーダーの挿絵を示し、
左右の手のどちらが上でも下でもよかったこと、
楽器もそれに合わせて穴位置が工夫された構造になっていること
(リコーダーの一番下の小指が担当する穴は、
左右両側にあいていて、使わないほうをろうでふさぐ。)
というふうに、昔は左右の手の決まりはなかった、というのです。
次に、「音大生の利き手と楽器アンケート」を紹介しています。
--
「木管楽器に限らず、作法が成立する以前の時代の絵画には
現在から見ると左右逆の例がいくらでもある。」
これらの左右逆転の例は、
「右利き左利きの問題を提起しているというより、
当時は作法がなかったということを伝えているに過ぎない
と思いたい。」
☆ 音大生の利き手と楽器アンケート ☆彡
――――――――――――――――――――
「このあたりを解明するためのヒントになれば」
と1993年5月、氏の講義を受講する音大生約200人に
アンケート調査をしたそうです。
3のタイプの楽器に対して
・自分の専攻する楽器に自分の利き手が不利と感じている者 …31%
・自分の専攻する楽器で左手が音楽的により重要な役割を果たしている
と感じている者 …34%
・現状とは左右逆の作法で演奏できる楽器が存在したらいい
と願っている者 …7%
・将来左利きの子供が生まれたら
右利きに矯正したいと思っている者 …61%
この結果に対して、氏は、
「非常に複雑な心理的葛藤が内在していることを示す」
と注釈されています。
「三人に一人が自分の利き手を不利に思い、
現在の楽器は左手がより重要と感じている」
「一方で現状の作法が変わって欲しくない」
「しかし右利き優位社会を肯定する」
「作法という文化的条件が
利き手という生理的条件に優先していることを示す」
「器楽の場合、左利きがぎっちょと考えるより、
作法に対して左右逆であることをぎっちょと考えるほうが
説明しやすいことを示している」
結語として、詭弁と断りながら、
「現状の作法が全世界的に解体したとしたら、
左利きの人も右利きの人もその三分の一が
晴れて今とは逆の作法で演奏することを予言している」
「オーケストラなどはなかなか愉快の光景であろう。」
--
--
本来、人のためにあるのが「作法」であり、
「作法」のために人が「ある」わけではありません。
多数派のための文化から、少数派も無視しない文化へ
と踏み出して欲しいと願っています。
--
というふうに、私は締めています。
・・・
今回はあちこちの文章をつぎはぎしたものです。
次回は、
9月に出版された大路直哉さんの著書『左利きの言い分』から、
「第5章 左利きの才人、偉人たち」の音楽家たちについて
思うところを書いてみましょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(16)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」と題して、今回も全紹介です。
といいましても、今回は過去の弊誌の記事をあれこれ継ぎはぎしたような内容になっています。
過去に2007~2008年のものや、2018年のものです。
そんな前から左利き用品の一つとして左用の楽器について考えていたのだと知っていただきたい、という気持ちです。
ハサミを筆頭に生活必需品的な左手・左利き用品に関しては、かなり普及してきました。
そういう状況にあって、楽器は、一番遅れている左利き用品のジャンルの一つだ、と思っています。
しかし、楽器こそ“心”の生活必需品だと思っています。
音楽というのは、いつもいいますが、音を楽しむもの。
心から楽しむためには、心につながっている利き手で、利き手主体で演奏してこそ、心を満たすことができるものだと思います。
演奏する自分自身の心も、演奏を聴く人の心にも、届くようになるのだ、と。
音楽(楽器)こそ利き手で演奏を! と力説したいものです。
・・・
弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
『レフティやすおのお茶でっせ』
〈左利きメルマガ〉カテゴリ
--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(2)-週刊ヒッキイ第652号
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第652号(No.652) 2023/11/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(16)
左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」
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「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
楽器における左利きの世界(16)
左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」
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9月以来の「楽器における左利きの世界」です。
9月は「左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」でした。
左用の<鍵盤ハーモニカからピアノへ>の展開を考えて、
鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。
いくつか思うところが見つかりました。
それをどう具体的なものに変えてゆくか、という点がまだ不明です。
まずは、過去のメルマガで左利きと鍵盤ハーモニカ始め楽器を
どう扱ってきたのか、その辺を振り返ってみたいと思います。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
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- 人のためにあるのが「作法」 -
過去の弊誌の音楽・楽器関連記事から
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●弊誌の音楽・楽器関連号
まずは最近のものから、2018年には
<【左手・左利き用品を考える】右用と左用の違い(19) 楽器編>
があります。
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第512号(No.512) 2018/2/17「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(19) 楽器編(1)バイオリン」
バイオリン―右手用と左手用との違い
●楽器とカメラ
●利き手で行うべき心の作用
●楽器には左用がない
●左利き用バイオリン
●純丘曜彰さんの左利きバイオリンに関する意見
●「RISAバイオリン教室」の瀧澤理紗さんの意見
●左利き用のバイオリンが普及しない理由
●利き手を無視して教えてきた楽器
●プロ野球の王選手も鳥谷選手も転向派
●自分の持って生まれた特質を活かす
●<楽器は心につながる利き手で演奏する>
第514号(No.514) 2018/3/17「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(20) 楽器編(2)カスタネット」
最初に出会う楽器―カスタネット
●最初に出会う楽器
●「正しい」? 楽器の叩き方
●既定の枠にこだわらないクリエイティブなやり方
●いつも変らぬ結論
--
私の持論――
「利き手は心につながっている」
のですから、
楽器の演奏も心の表現であるかぎり、
利き手主役で行うべきことです。
おんがく(音楽)は、「音学」ではなく、
「音を楽しむ」と書きます。
楽器の演奏も、辛いだけの“訓練”や“勉強”ではなく、
“楽しめるもの”であるべきでしょう。
そのためにも、楽器メーカーさんは
利き手に対応した楽器を用意して欲しいものです。
--
第516号(No.516) 2018/4/21「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(21) 楽器編(3)リコーダー」
学校で出会う楽器―リコーダー
●鍵盤ハーモニカ
●リコーダーは左右平等?
●リコーダーの正しい持ち方
●左用リコーダー
●片手リコーダー
●両用リコーダーの試み
第518号(No.518) 2018/5/19「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(22) 楽器編(4)鍵盤ハーモニカ・前編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・前編
●なぜ鍵盤ハーモニカを習うのか
●ピアノ演奏と左利きの苦悩
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ガボちゃんのブログの3月30日の記事
「楽器の利き側の話を読むと思う事」
https://plaza.rakuten.co.jp/gabochan2007/diary/201803300000/
に紹介されていた
《学校では教えてくれない、音楽のことを書いてい》る
ブログ『ブー先生の音楽教室』の3月28日の記事
「左利きとピアノ演奏」
http://boosensei.hatenablog.com/entry/left-handed-play-piano-lesson
《ピアノの楽譜は大体が2段で出来ていて、
大抵の場合は右手がメインのメロディー、
左手はサブ的存在の伴奏を担当しています。》
《たとえ上級になっても、左手のための曲や、
左手で弾く指示が無い場合、
楽譜は「上段が右手」「下段が左手」が普通なんですよね。》
上段が右手担当で、下段が左手担当らしいのですが、
《右利きの自分からしたら考えたことも無かったのですが、
左利きの人は「メインが左・サブが右」
が当たり前の生活をしているのに、
ピアノを弾くときだけ逆にしろ
っていうのは難しい話なわけで…。
ピアノの「右手メイン」に違和感を感じてしまうのも
当然でしょう。》
--
●縦書き右開き本と横書き左開き本の違い
●ピアノも左利き仕様と共存へ
●左用ピアノと心の表現としての音楽
●ピアノと鍵盤ハーモニカとの左用の可能性
第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・後編
●鍵盤ハーモニカと左利き
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事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」
http://www.pianonymous.com/entry/2014/08/19/%E5%B7%A6%E5%88%A9%E3%81%8D%E7%94%A8%E3%81%AE%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
■対策1:ホースを延長して、反対側まで伸ばす。
■対策2:右手を鍛えるための試練とおもって頑張る
■対策3:もういっそのこと私と同じスタイルで弾こうよ!
《…以上、あまり解決に導けなくて申し訳ない。》
《※追記 2014/09/04
左利き用の鍵盤ハーモニカについて
スズキ楽器製作所へ直接問い合わせを行った。
結論からいうと、
現状どのメーカーも製造は一切していないようだ。
というのも左利き用のパーツを製造するには
倍以上のコストがかかり、
作りたくてもどこも作れない状況とのこと。
うちのサイトにきてくれた左利きの皆様、
有力な情報が提供できずすみません。》
●相談サイトでは……
●「ちょっと」だからこそ簡単!?
--
身体に服を合わせるのが、普通の考え方です。
服に身体を合わせるなんて、あり得ない! のでは?
手や腕は、右と左の二つしかありません。
単純に考えれば、
右用があれば、左用があっていいのではないでしょうか。
作っても二つだけです。
利用者全体の総数が違う、というかもしれませんが、
だからといって、多数決で決める必要はありません。
洋服のサイズを多数決で決められても困るでしょう。
...
結局は、心がけの問題ではないでしょうか。
発想の問題。
一人でも多くの人に音楽を楽しんでもらいたい、
と考えるかどうか。
心の優しさ、思いやりの問題とも言えそうです。
--
●左右平等の思想で……
--
右利きが多数派だから「右へならえ」せよ、
ではなくて、
左右平等で考えてほしいものです。
人は、みんなやっぱり人なのです。
心もあれば、それぞれに痛みも感じるのです。
「自分だけがしあわせであれば良い」
なんて、誰も思いませんよね。
「みんながしあわせになれる」
そういう社会にかえてゆきましょう
まずは楽器から、始めてみませんか?
--
第522号(No.522) 2018/7/21「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(24) 楽器編(6) 最終回まとめ編」
―最終回まとめ編
●心と身体の能力
●自分がされてうれしいことを他人にする
●楽器も学用品
●演奏方法と利き手
●右尊左卑を改めよう
●やる気があるかどうか、やる気になるかどうか
●上に立つ人の考え方と疑問に思う想像力
●左用の楽器の有無
--
「右用と左用の違い 楽器編」は、以上です。
第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」
で、《事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」》
を紹介しています。
これは、前回の「鍵盤ハーモニカの世界(1)」で紹介しました、
『鍵盤ハーモニカの本』の著者・南川朱生(ピアノニマス)さんの
記事でした。
鍵盤ハーモニカの専門家なので、それについて検索すれば、
この出会いは偶然ではなく当然のこと、だったようです。
こんな風に色々と考えてきたわけですが、
基本的に私の姿勢は変わっていないと思います。
「左利きには左利きの楽器が必要だ」という考え方です。
なぜなら、それが利き手というものの性質だから、です。
●「左利き講座<左利きQ&A>」
その十年前、2007~2008年には、
「左利き講座<左利きQ&A>」のなかで、【左利き用の楽器】や
「左利きに有利な楽器」という問いについての文章を書いていました。
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第127号(No.127) 2008/4/5
「<左利きQ&A>(17)左利き用品って?《3》」
☆【左利き用の楽器】☆彡
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・第84号(No.84) 2007/6/2「<左利きQ&A>(8)左利きと音楽」
「左利き講座<左利きQ&A>/(8)左利きと音楽―序の口」
「左利きと音楽」と題して、左利き用の楽器を調べてみました。
●左利き用ギター
これは単純に弦を張り替えるだけでは、
必ずしも左利き用にはならない、
やはり専用のギターを購入すべきだそうです。
(画像:左利き用と右利き用の違い それぞれフェンダー・ストラトキャスター、ギブソン・レスポール(「エレキギター博士/左利き用(レフティ)エレキギターについて」https://guitar-hakase.com/lefty/より無断拝借))
●左利き用ピアノ
「左側が高音、右側が低音」と従来のものとは逆の構造で、
右利きの人同様に利き手(左手)でメロディラインが弾け、
伴奏には非利き手(右手)を使える、という。
(画像:左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏しているクリストファー・シード(Christopher Seed)さん)
●左利き用バイオリン
「全てを左右逆に作ってある特注品」を使っている人がいる。
しかし、幸いなことに、
左利き用バイオリンを市販する会社も出てきました。
前回「左利き用品って?《2》」(第122号)で紹介しました。
2007.09.07 左利き用バイオリン
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/09/post_3896.html
「e-String」というネット通販サイトで販売
トップページ > 楽器 > ・ 左利き用バイオリン
楽器 バイオリン 左用
バイオリン 左利き用 130,000円(税込)
(画像:左利き用バイオリン)
●リコーダー、ホルン
サイト「クラシックギターのフォーラム」の
「左利きって?」の質疑応答、
ギター初心者は右利き用がよいのか左利き用がよいのか、
のなかで「待雪」氏のコメントより。
「リコーダーには左利き用の楽器が存在していた」
「現在でもリコーダーの一番下の管(足部管)は回転しますが、
これは左利き右利きを切り替えるため」
「ホルンはベルに突っ込んでいる手の操作が音色や音程にダイレク
トに影響するので、極めて稀ですが、左利き用(つまり左手をベ
ルに突っ込む)のホルンというのがある」
さらに探してみれば、
色々な楽器において左利き用が作られているケースがある、
と思われます。
(画像:左利き用(左)と右利き用(右)のフルート(『フルートと音楽の日々』「Aihara 左利き用フルート:Yamano Flute World '14」より))
☆ 左利き用の鍵盤ハーモニカ ☆彡
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相談でよく問われるのが、
「左利き用の鍵盤ハーモニカ」の有無です。
・第89号(No.89) 2007/7/7
「<左利きQ&A>(9)鍵盤ハーモニカ」
「左利き講座<左利きQ&A>/(9)左利きと音楽・序二段
―鍵盤ハーモニカ」
どうやら、「鍵盤ハーモニカは右手で使う」というのが、
現状では仕方のないこと、ということに落ち着きそうです。
しかし、左手用鍵盤ハーモニカが現れ、
それを左利きの子供たちが左手で扱うようになれば、
その発展形として、
将来、左利き用ピアノが普及するようになるかもしれません。
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第97号(No.97) 2007/9/1
「<左利きQ&A>(11)左利きに有利な楽器」
では、音楽人類学の研究者の著作
『楽器からのメッセージ 音と楽器の人類学』西岡信雄/著
音楽之友社(2000)より「利き手と楽器の右左」の章から紹介。
西岡信雄氏は、利き手との関連で楽器を三種に分類しています。
1・左右の手の役割が自由に交代できるタイプ…打楽器
2・どちらか一方の手が演奏を主担するタイプ…金管楽器
3・両手がつねに演奏に関与するタイプ…木管・弦・鍵盤楽器
1は、「好きなように叩けばよいのであるから
利き手の左右に有利不利がない」
2は、「逆にこれが明確である」
「トランペットやトロンボーンは右利き、
ホルンは左利きが絶対に有利である。」
ところが、ネットで調べてみますと、ホルンにおいて、
実際に楽器を持ち、機械的なバルブの操作を行うのは左手ですが、
右手には重要な音の調節という役割があることがわかり、
決して左手有利な楽器ではない、というのです。
リコーダーの件も、
フィルドゥング(S. Virdung 1465~?)の音楽教本
『Musica getutscht und ausgezogen』のリコーダーの挿絵を示し、
左右の手のどちらが上でも下でもよかったこと、
楽器もそれに合わせて穴位置が工夫された構造になっていること
(リコーダーの一番下の小指が担当する穴は、
左右両側にあいていて、使わないほうをろうでふさぐ。)
というふうに、昔は左右の手の決まりはなかった、というのです。
次に、「音大生の利き手と楽器アンケート」を紹介しています。
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「木管楽器に限らず、作法が成立する以前の時代の絵画には
現在から見ると左右逆の例がいくらでもある。」
これらの左右逆転の例は、
「右利き左利きの問題を提起しているというより、
当時は作法がなかったということを伝えているに過ぎない
と思いたい。」
☆ 音大生の利き手と楽器アンケート ☆彡
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「このあたりを解明するためのヒントになれば」
と1993年5月、氏の講義を受講する音大生約200人に
アンケート調査をしたそうです。
3のタイプの楽器に対して
・自分の専攻する楽器に自分の利き手が不利と感じている者 …31%
・自分の専攻する楽器で左手が音楽的により重要な役割を果たしている
と感じている者 …34%
・現状とは左右逆の作法で演奏できる楽器が存在したらいい
と願っている者 …7%
・将来左利きの子供が生まれたら
右利きに矯正したいと思っている者 …61%
この結果に対して、氏は、
「非常に複雑な心理的葛藤が内在していることを示す」
と注釈されています。
「三人に一人が自分の利き手を不利に思い、
現在の楽器は左手がより重要と感じている」
「一方で現状の作法が変わって欲しくない」
「しかし右利き優位社会を肯定する」
「作法という文化的条件が
利き手という生理的条件に優先していることを示す」
「器楽の場合、左利きがぎっちょと考えるより、
作法に対して左右逆であることをぎっちょと考えるほうが
説明しやすいことを示している」
結語として、詭弁と断りながら、
「現状の作法が全世界的に解体したとしたら、
左利きの人も右利きの人もその三分の一が
晴れて今とは逆の作法で演奏することを予言している」
「オーケストラなどはなかなか愉快の光景であろう。」
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本来、人のためにあるのが「作法」であり、
「作法」のために人が「ある」わけではありません。
多数派のための文化から、少数派も無視しない文化へ
と踏み出して欲しいと願っています。
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というふうに、私は締めています。
・・・
今回はあちこちの文章をつぎはぎしたものです。
次回は、
9月に出版された大路直哉さんの著書『左利きの言い分』から、
「第5章 左利きの才人、偉人たち」の音楽家たちについて
思うところを書いてみましょう。
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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(16)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」と題して、今回も全紹介です。
といいましても、今回は過去の弊誌の記事をあれこれ継ぎはぎしたような内容になっています。
過去に2007~2008年のものや、2018年のものです。
そんな前から左利き用品の一つとして左用の楽器について考えていたのだと知っていただきたい、という気持ちです。
ハサミを筆頭に生活必需品的な左手・左利き用品に関しては、かなり普及してきました。
そういう状況にあって、楽器は、一番遅れている左利き用品のジャンルの一つだ、と思っています。
しかし、楽器こそ“心”の生活必需品だと思っています。
音楽というのは、いつもいいますが、音を楽しむもの。
心から楽しむためには、心につながっている利き手で、利き手主体で演奏してこそ、心を満たすことができるものだと思います。
演奏する自分自身の心も、演奏を聴く人の心にも、届くようになるのだ、と。
音楽(楽器)こそ利き手で演奏を! と力説したいものです。
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弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。
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(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
『レフティやすおのお茶でっせ』
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(2)-週刊ヒッキイ第652号
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