(法的根拠)
家事審判でも裁判官(審判官)の忌避を申立てることはできます。
法律上の根拠は、家事事件手続法11条になります。
第十一条 裁判官について裁判又は調停の公正を妨げる事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。
2 当事者は、裁判官の面前において事件について陳述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
(忌避申立てと手続きの停止)
忌避を申立てた場合、裁判所の対応は次の二通りがあります。
A 次のような要件を充たす場合は、忌避を申立てられた裁判官自身が却下の判断を行う(簡易却下)
ア 家事事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき。
イ 当事者は、裁判官の面前において事件について陳述をした後で、裁判官を忌避した場合。ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
ウ 忌避の申立てについての最高裁判所規則所定の手続きに違反するとき。
B 裁判官が合議体で忌避が妥当かを判断する。
法律上は、Bの方が原則として書いてあります(家事事件手続法12条)。この場合、もともとの手続きは停止します(同条4項)。
しかし、忌避の申立ての度に、このような強力な効果を与えてしまったら、手続きは進まなくなってしまいます。そこで、忌避を申立てられた裁判官自身が判断できるし、この場合は手続きは停止しない(同条5項、7項)という簡易却下の制度を規定しています。
簡易却下には、前記ア~ウの要件がありますが、もっとも用いられるのは、「ア 家事事件の手続を遅滞させる目的のみでされたことが明らかなとき。」でしょう。
(忌避を認めない決定についての異議申立手段~即時抗告)
忌避を認めない決定について異議申立てをしたい場合には、即時抗告ができます(同条9項)。
家事事件手続法の即時抗告は、「審判」に対するものと、「審判以外の裁判」に対するものをわけていますので、この二つを取り違えてはいけません。
忌避を認めない決定は、「審判以外の裁判」になりますから、同法99~102条の規定が適用されます。
・即時抗告は1週間以内に行わなければなりません(同法101条1項)。
・即時抗告をしても、執行停止効はありません(同条2項)。