★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇旧東独の名演奏家たちによるブラームス:ワルツ集「愛の歌」「新・愛の歌」

2022-07-18 09:54:46 | 合唱曲


ブラームス:ワルツ集「愛の歌」
 
         1.いってくれ、世にも愛らしい少女よ(四重唱)
         2.巌の上を水が流れる(四重唱)
         3.おゝ、女というものは(テノール、バス)
         4.夕べの美しいくれないのように(ソプラノ、アルト)
         5.緑のホップのつるが(四重唱)
         6.一羽の小さな、かわいい小鳥が(四重唱)
         7.とてもうまくいっていた(ソプラノ、アルト)
         8.お前の瞳がそんなにやさしく(四重唱)
         9.ドナウの岸辺に(四重唱)
         10.おゝ、なんとおだやかに(四重唱)
         11.いいや、ぼくは世間の奴らと(四重唱)
         12.錠前屋よ、起きろ(四重唱)
         13.小鳥が大気をそよがせて飛ぶ(ソプラノ、アルト)
         14.ごらん、波がなんと明るいことか(テノール、バス)
         15.夜鶯があんなに美しく歌っている(四重唱)
         16.恋は真っ暗な、深い穴だ(四重唱)
         17.歩きまわるんじゃない(テノール)
         18.繁みがふるえている(四重唱)

      ワルツ集「新・愛の歌」

         1.救助は諦めるがいい、おゝこころよ(四重唱)
         2.夜の暗黒のとばり(四重唱)
         3.両手のどの指にも(ソプラノ)
         4.お前たち、黒い瞳よ(バス)
         5.あんたの坊やを(アルト)
         6.母が私にバラをつけてくれる(ソプラノ)
         7.山から津波のように(四重唱)
         8.猟区のやわらかな草のしとねは(四重唱)
         9.私の胸を噛む(ソプラノ)
         10.ぼくは甘い囁きをかわす(テノール)
         11.みんなみんな風に吹き散る(ソプラノ)
         12.黒い森よ(四重唱)
         13.だめ、恋人よ(ソプラノ、アルト)
         14.炎のような瞳、黒い髪(四重唱)
         15.終曲(四重唱)
      
ソプラノ:バーバラ・ホエネ
アルト:ギゼラ・ポール
テノール:アルミン・ユダ
バリトン:ジークフリート・ローレンツ

ピアノ:ディーター・ツェヒリン
ピアノ:クラウス・ベスラー

指揮:ヴォルフ・ディーター・ハウシェルツ

録音:1974年3月8日~16日、ベルリンクリストス教会

LP:徳間音楽工業(エテルナレコード) ET-3063

 ブラームスの音楽は、ドイツの深い森のように深遠な曲がほとんどであり、晦渋さがその全体を覆い尽し、渋い感覚が独特の雰囲気を醸し出している作品が多い。このため、人生の奥深い迷路のような局面を表現する曲には打って付けではあるが、何か重々しく、息苦しくなる時もままある。ところが、このLPレコードの4手のピアノと4声部のために書かれたワルツ集「愛の歌」「新・愛の歌」だけは例外で、陽気で心が弾むような曲からなっている歌曲集である。特に、1869年に書かれた「愛の歌」は、ブラームスがシューベルトを思い浮かべながら書いたと言われ、ウィーンの舞曲を基に作曲したものであり、陽気で、心が浮き浮きしてくるような楽しい18曲からなる。ワルツといっても指定は“レントラーのテンポで”となっている。その4年後に書かれたのが「新・愛の歌」であり、全部で15曲からなる。こちらの方は、特にレントラーといった指定はないが3/4拍子で書かれており、「愛の歌」の続編と言えるもの。曲自体の楽しさと、それまでのブラームスのイメージを一新したという意味では、最初の「愛の歌」の方に軍配が上がろうが、曲の充実度としては「新・愛の歌」の方に軍配が上がるのではなかろうか。ここで歌っている独唱陣は旧東ドイツの歌手であるが、その完璧な歌唱技術には脱帽させられる。4手のピアノ演奏との相性も抜群に良く、この2つの曲集を聴くのには、全くもって申し分がない。「愛の歌」は、ゲオルク・フリードリヒ・ダウマーの「ポリドーラ」(ロシア、ポーランド、ハンガリー等の民族的な詩をドイツ語に翻訳したもの)という詩集によった全部で18曲からなる歌曲集。内容は文字通り“恋愛”をテーマとしたもので、男と女それぞれの心理が描かれている。1868年~69年にかけて作曲され、初演は1869年にクララ・シューマンとヘルマン・レヴィのピアノと4人の歌手によって、まず10曲のみが演奏された。全曲の初演は翌年の1870年にブラームスとクララ・シューマンのピアノと4人の歌手で行われた。1874年にブラームスは、声楽パートを省き、ピアノ・パートを部分的に変更した連弾版を作成し、これを作品52aとして出版している。その後、ブラームスは、同じくダウマーの詩によって「新・愛の歌」を作曲したが、全15曲のうち、第15曲目だけはダウマーでなく、ゲーテの「アレクシスとドーラ」という詩に作曲した。「愛の歌」と同じ趣旨だが、女声のほうが積極的な内容になっている。(LPC)


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