旅してマドモアゼル

Heart of Yogaを人生のコンパスに
ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

「新選組!!土方歳三 最期の一日」

2006-01-05 | 観たものレビュー
一昨年の12月。
大河ドラマ「新選組!」最終回を見終わったとき、私の胸をよぎったのは意外にも、清々しいともいえる爽快感だった。
ドラマを見ている間は、ラストシーンへ向かって、登場人物たちの思いや行動が悲しみとなって押し寄せるとともに、もうこれで終わりなんだと、みんなと会えなくなるのだという切なさとで、ただただいっぱいだったのだが。

1年という間を置いて、今回の続編。
いったいどんな感情が私を包むのだろう。
分からなかった。
ドラマそのものはすごく楽しみではあったけれど、反面、見るのが怖かった。
1年前と同じ感情は、自分の中に残っているのか。
あの最終回に感じた思いは、1年間という長き期間を、試衛館のみんなと過ごしてきたからこそ自然と沸いて出た感情だった。
私の中で、あの思いは、あの最終回である意味、区切りがついていたのだ。

と、思ってた。

でも、続編の前に流れた総集編。
DVDを最後に見て以来の懐かしい顔を見た途端、嬉しくて涙が出た。
芹沢鴨の死、山南敬助の死、そして近藤勇の死。
涙はあふれて止まらなかった。

おいおい。
成長してないな、私。

あの日に、あの12月の最終回の日に戻るために総集編を見たみたいじゃん?

準備は万端。
いざ。最期の一日へ。


「待たせたな」

くうーーっ!そうきましたか
ミタニン、やることニクイね~
そのセリフで、御大を登場させるとは。
山本土方の殺陣。振り返りざまに、ふわりと舞うコートの裾。

か、か、か、カッチョエーーー!!!!!!!(!多すぎやな)

ブルブル……
興奮のあまり、心も体もぷるぷる震えてます

それにしても、「誠」の旗がなんとボロボロに……(涙)
歴戦をかいくぐってきた有様が目に浮かぶ。

役者陣が喜んだという五稜郭の再現セット。
すごいなー
そのすごさをじっくりと自慢するように見せるカメラワーク。

愛之助榎本に吹越大鳥もここで登場。
榎本役は、大河のまま「草なぎ君で!」と思ってたんですが、いやー、片岡愛之助さん、いいですねー、品があって。
洋行帰りの匂いがプンプンですよ?
吹越さんの大鳥は、まだこの時点ではどんな人物に描かれるのか、ちょっと分かりにくいんですが、愛嬌がそこかしこににじみ出ていて、私のイメージする大鳥さんと近いかも。

大鳥圭介という人は、「燃えよ剣」などでは土方さんと敵対する立場で出てきて(山南さんもそうでした)、土方サイドから見るとあまりイメージはよくないんですが、この戦争後に、土方や箱館戦争で亡くなった人々を祭った「碧血碑」を函館の港を見下ろせる山の中腹に建てたりしたんですよ。
考え方は対立したのかもしれないけれど、参謀タイプの土方は、陸軍奉行の大鳥を奉行補佐として、意外とちゃんとサポートしてたんじゃないかなーと思うんですよ。
それに、大鳥は根っからの「おぼっちゃま」ですから、なんとなく愛嬌があって、どこか抜けてる所が、土方の「母性」をくすぐっていたんじゃないかなーと(それはありえない?)
ただ、大鳥はおぼっちゃまゆえ、プライドも高かったので、商人上がりの土方の実力は認めても、それ以上親しくなることは、大鳥自身したくても出来なかったんじゃないかなーと。

あ、ドラマの話に戻ります。
京都の頃と違う顔の土方歳三。
でも、島田と尾関以外は見知った顔がいないことに、「ああ、ここまできちゃったんだ」と、ちょっと見当違いな方向から、そんな思いを抱く私。

土方、みずからの過去を語る。

「最初は8人だった。近藤さんに俺に総司。永倉に左之助に平助に源さん。それから山南さん」

それから山南さん、それから山南さん、山南さん、山南さん……
(注)エコーはかかってませんでした

一番最後にそのお名前を持ってきていただけるなんて。
ああ、ミタニン、あんたはどこまで私たちを喜ばせれば気が済むの?
でも、私の大好きな相馬君に、山南さんを小馬鹿にするような言い方をさせたのは許せん。
相馬主計は、そういうことをいうヤツじゃないと思うんだけどーーー

「山南さんは武士の中の武士だ。山南さんがいなければ今の新選組はなかった」

ううううう……その言葉が聞けただけでも本望です、副長……(by 私)

新選組を、古参の島田、尾関、蟻通、山野の4人に託し、箱館山を守れと言う土方に
「俺はあんたと一緒にいたいんだよ!やだ!」とお子ちゃま度全開の島田。
もらい泣きしちゃいましたよ……
だって、これが仲間たちとの別れになったんですよね……
そのあとも、まるで身辺整理みたいな土方の行動が続きます。
武蔵野楼の女将にたまったツケをまとめてお支払い。
市村鉄之助に、多摩へのお使いをお願い。

コルクだよ、コルク……

いちいち泣く私。

つーか、酒に頼るのは弱い男って……酒で風邪を治すあんたの言葉か(それは山本君)

鉄之助君、かわいい……「義経」ではほんのちょっとの出演だったけど。
あのときの方が、大人びて見えたけど、それは頼朝役だったからかな?
土方に「鉄」って言われてるよ。ククク。

そしていきなり回想シーン。
回想といっても、まったく新しいシーンにしているところにミタニンの意地を見る。
それにしても。
まさか山本太郎とぐっさんの顔を見ただけで泣けるとは思いもしなかった。
ほのぼのとしたシーン。
多摩の頃の、まだ無名だった頃の、ただの食客だった頃のみんな。
京都なんて、不貞浪士なんて、佐幕も倒幕も縁の遠かった頃のはなし。
はるか遠い、遠い、思い出。
すべてが懐かしくてたまらない。
鉄之助が土方にした質問と同じ質問を沖田がしている。
「世の中で一番強い生き物はなんだろうな」
獅子、熊、虎……
「いやー、オレは加藤清正だと思うなー」
ツッコミ甲斐のある答えを言うサノも相変わらずだね。
笑い泣きしちゃうよ。
「決まってるじゃねえか、ぬえだよ」
自信満々で答える表情がなんだかおかしい。
でも、鉄之助君に答えたときと、違う表情なのがなんだか切ない。
頭が猿、胴はタヌキ、尾が蛇で手足は虎……胴がタヌキですか……タヌキ……
ま、いいや。
その自信たっぷりの答えを「それはどうだろう」と、おなじみの言葉で山南さんに却下された土方の苦そうな顔。
それにしても随所に散りばめられた試衛館ワールド。
たまらん…・・・
土方は総司には、ぬえが何であるか教えたのに、鉄之助には自分で調べろと言ってたね。
この多摩の頃から、箱館に至るまでの間に、何が彼の心に生じたのだろう。

「やはり、一番恐ろしいのは人ではないでしょうか。人は人を欺く」
……知的な回答、山南さん、お見事です。
でもなんだか、皮肉ですね。
その後、山南さん自身が土方とともに、人を欺きながら新選組を作ったんですから。

「みんないなくなっちまった」

たしかに、もうたった一人きりなのだと
戦う仲間はたくさんいても
まだ多摩でくすぶっていた頃からの、本当の戦友は
もう誰もそばにいないのだと。

永井さん。本当にいい人だ。
近藤の無念を晴らすためだけにこの日まで生き延びてきた、ここで降服したら、近藤に何と言って詫びればいいのかという土方に永井さんが言う。
「ごめんなさい、でいいじゃないか。それで怒る近藤さんじゃないだろう」

号泣です……

永井さんも無念なんだろうね。
でも、これ以上の無駄死には増やしたくない。
これもありなんじゃないかと、上に立つ者として、己の部下たちの、他人の命の尊さを思えばこその発言。

会津のシーンもオリジナルの回想。
会津の町を見下ろす高台に設けられた近藤さんのお墓。
俗名は入れないのかと尋ねる容保公に、墓に入っている者の素性が知れたら、薩長に何をされるか分からないと答える土方。
悔しい……悔しいよ……
これが負けた方の立場なのかと、死んでもなお、その身を隠し、ひっそりと誰にも気付かれないようにしなければならないのかと、当時の彼らの気持ちを思うと心が痛む。

模型のミニチュアを作っている大鳥。
プラモデルづくりに夢中になっている少年のようで、いいなあ、こういうシーン。
箱館のジオラマを作ったのも大鳥なんだろうなあ。(本当に作ったのは美術さん)
ジャイアン土方が、のびた大鳥の大事なミニチュアをパシンパシンとはじき飛ばす。
それをいちいち拾いにいく大鳥クン。
「ゲリラ戦」という言葉は、まだ当時の日本にはなかったと思うけれど、まさにそのゲリラ戦法を提案する土方。戦いを知る男。
榎本総裁に呼ばれた土方は、除け者にされた大鳥に、総裁選挙の一件で最後の一撃。
「あんた、自分に自分で入れただろ」
「いま、ここで言うことじゃないだろー!」
大鳥くん、がんばれ。

片岡さんも山本君も驚いたという、二人きりの芝居が続く長いシーンがスタート。
「君は死に場所を求めているんだろう」
ああ、言われちゃいましたね、土方さん。図星ですよね。
そんなヤツに自分の軍を預けることなど出来ない、これ以上自分以外の死者を出すつもりはないという榎本。

死に場所を失くしかけて「どうすればいいんだ」と悲壮感漂う土方。
「どうすればいいだろうねえ」とどこか暢気な榎本。

煮詰まったところで、ひとまず「休憩」。

初めてのワイン。
初めてのサンドイッチ。
榎本の「夢」。
新しい国。
何万頭の牛。
バターにチーズ。
牧畜に農業。
死に場所を求めていた土方と、夢を追っていた榎本。
共に戦いながらまったく異なる目的に向かっていた二人の男。

「おれはあんたの夢にかける」

本当の武士になる、という夢にかけていた男がいた。
新しい国を作る、という夢にかけていた男がいる。

決してあきらめない、生きるために戦うんだ、というその目の力、山本君は本当に素晴らしい役者だよね。
人生を達観して、まるで仏のようになりかけていた表情だったのが、江戸を出発した頃の、京都で近藤さんや山南さんたちと新選組を作るために奔走していたあの頃の、生き生きとした表情に変わってる。

「ロマンチ」

歴史にもしもはないけれど、もしも戦に勝って、夢がかなったなら、この言葉が北の大地で流行語になったかもしれない。
ところで、真剣な顔で「ロマンチ」を連発する土方に、笑っていいのか、泣いたほうがいいのか。

箱館のジオラマを前に、一人、何か策らしきものを考えている大鳥。
机の下に落としたミニチュアを拾おうとしてかがんだときに、土方と榎本がやってくる。
二人で軍議。
まさかここでも「山南さん」の名前が出てくるとは、ほんっとにサービス精神たっぷりで、感謝のしようがありません。
「私が山南さんの代わりを務めるとしよう」
え、片岡さんが堺さんの代わり…?(違)
ジオラマを見ながら、いきなりふきだす土方。……素ですか?
「いちいちうるさいな」
おーっ、久しぶりの高い声!
調子が乗ってきましたねー、歳三クン。

「やつらは、薩摩だの長州だの土佐が混ざって出来た『ぬえ』だ。その化け物を最後に人が倒す」

上手い!!!
ミタニン!!!
座布団3枚、いや4枚持ってこーい!!!

榎本に呼ばれて、机の下からごそごそと這い出てくる大鳥クン。
この間抜けた感じが大鳥君ですよ~
こっちの守りは任せろ、存分に戦ってこいと土方に言う大鳥。
私抜きで二人で心を通わせるなと、榎本。
妬いてます(笑)
でも、最後は3人で仲良く手を合わせて、レッツラゴー。

次々と新政府軍に破られる旧幕府軍。
敵は五稜郭目指して前進中。
手薄になった敵の本陣へと向けて、土方が出陣。
こちらの思惑通りに事が進むかと思いきや、そんなことはあるわけもなく、夜中のうちに、箱館山の裏から上って山に布陣した敵からの攻撃が、新選組のいる陣地を襲う。
弁天台場まで後退させられた新選組。
敵の本陣に着いた土方にも、箱館山の様子が目に入る。
慌てて五稜郭に引き返し、弁天台場へ向かおうとする土方に、榎本は戦況から見て、行くなと引きとめようとする。
「榎本さん、あんたこそ死ぬんじゃない。生きのびて、ここで夢の花を咲かせろ」
この地を開拓して、牛を飼い、チーズを作る。
そんなことができるのは、あんたしかいない。
あちゃー予言しちゃったよ。
不吉だね……

そして、昨年の5月に訪れた(私がね)見覚えのある場所。一本木。
ドラマの時間上、流れの上でも、そろそろ来るとは思ってたけど、やだよやだよ!
やだと言いつつ「その瞬間」を、固唾を呑んで待つ私。
濁った銃声の音。
馬上からゆっくりと落ちる土方。
でも、仲間たちを救うため、再び刀を手に立ち上がる。
敵方に名前を問われて、返した言葉は

「新選組副長、土方歳三」

最後まで、彼は新選組だった。

「榎本さん、すまん」
あきらめかけた人生を、もういちど掛けようとした夢が、消えていく……

死ぬ間際に、土方歳三という男が何を思ったのか、知る由もない。

でも、「新選組!!」の土方歳三の心に、死ぬ間際に去来したのは

「かっちゃん」

勇の笑顔。
歳三の笑顔。
その笑顔に、わたしたちは救われる。

残された者たちの悲痛。
生き長らえることの辛さ。
でも、そこに希望はある。
歴史の事実を、志半ばで逝った者たちの思いを、誰かに伝えるため
あきらめない
だから、生きるのだと。


ありがとう、三谷幸喜さん。
ありがとう、大河ドラマのスタッフさん。
ありがとう、出演者のみなさん。
今度は「新選組!!!」!3つめをよろしくお願いします。
オダジョーが狙ってるらしいので。(新選組ムック談より)


さて。
ここまで、長々とおつきあいいただいてありがとうございます。
もしかすると、「トロピカーナな毎日」で書いた最終回の感想よりも長かったりして。