イベント初日の朝。
まだ空が暗いうちから、私は自宅を出た。
昨日から夜間も降り続いていた雪はいつの間にか止んでいて、私はちょっと安堵した。
このまま雪が降らずにいてくれたら助かるんだけど。
マンションの前の歩道が少し凍結していて、うっかり足をとられそうになった。
私はタクシーをつかまえて、会場へと向かった。
タクシーの窓から、都心らしいモノクロームの雪景色を眺めた。
圧倒的に多いグレーに黒、そして中途半端な白。
子供の頃は、雪が降るとワクワクしたものだった。
まだ誰も足を踏み入れていない新雪の上で、キュッキュッと雪鳴きの音を立てながら、自分の小さな足跡をつけてはしゃいでいた。
かまくらに憧れて、庭の雪を一生懸命かき集めたっけ。
結局、豪雪地域でもない所では、雪の量が足りなくて、雪だるまにしかならなかったけど。
雪を嫌いになったのはいつからだろう。
毎朝通勤ラッシュにもまれ、社会的な責任を求められ、信用を失うリスクを避けるようになり、心にゆとりのない大人になってからだろうか。
そういえば、昨日更新された彼のブログでは『寒いの嫌い』って書いてあったけど、雪が嫌いとは書いてなかった…
今日も、彼はドラマの撮影なのかな。
昨夜、深夜番組の新しいコーナーに彼がメンバー全員と出演していた。
内容があまりに可笑しくて爆笑しながら見ていたけれど、そのうち不思議な気持ちになってきた。
テレビの中のこの人と、私は本当に付き合ってるの?
もしかしたら、今、私はとてもとても長い夢を見ているとか?
放送後、浮遊感にも似たモヤモヤとした疑問を抱いたまま、私は眠りについた。
だからだろうか。
今朝方見た夢に彼が出てきた。
ただ、その夢があまりにもリアルすぎて、目覚めた時、どうして隣に彼がいないんだろうと思ってしまったのだけど…
その時、タクシーが会場に近づいたのを見て、私は仕事モードにスイッチを切り替えた。
イベントの幕が開けた。
始まる前にまた雪が舞い始めたが、会場が商業ビルの中という立地条件と、それに連動したバレンタイン需要のおかげか、当初危惧していたほど客の入りは悪くない。
ちょっとだけ、肩の荷が下りたが、まだ油断は出来ない。
午後からまた本格的な雪になる、という予報が出ている。
スタッフとお昼の仕出し弁当を食べている時に、彼からメールが届いた。
『塩味やで』というメッセージと一緒に、温かそうなラーメンの写真が添付されている。
思わず微笑んだ。でも…
なぜメールなの?
いつもメールは面倒がってしない人なのに。
なぜ電話じゃなくてメールなの?
しかもこんなにマメに送ってくるなんて彼らしくない。
バレンタインが近いから?
何か期待してるのかな?
この前、ラジオでもたくさんチョコが欲しいみたいなことを言ってたし…
あれはリスナーへのリップサービスで言ってたんと違うの?
「え?なにそれ、おまえ、コーヒーを豆から挽くん?」
彼が好奇心の眼差しで、私の手元のミルを覗き込んできた。
「俺、豆でなんか買うたことないで」
「豆の方がね、酸化が進みにくいから美味しく飲めるの」
「こんなん映画でしか見たことないよ」
挽いてみる?と聞くと、欲しかったおもちゃをもらった子供みたいに、ニコニコしながらミルを挽き始めた。
ガリガリと豆が挽かれるたびに、コーヒーの芳香が部屋に満ちていく。
「あ、そや、チョコある?」
「もちろん」
私は冷蔵庫から出した箱を彼の前に並べた。
「ピエール・マルコリーニ、これはパイヤール、あとフェアトレードのチョコ」
「なんやカタカナばっか言われてもようわからん」
「どれがいい?」
「どれでもええよ。美味しいやつ」
「ええ?どれも美味しいんだけど」
「じゃあ…」
― おまえが俺にあげたい思てるチョコでええよ…
あれはたしか、ツアー前のことだったかな。
あの時は結局、味見と称して3つとも食べちゃったけど。
うちに来れば、チョコレートを常備してるからいつでも食べられるのに。
それでも、バレンタインデーという日にはチョコレートをもらいたいものなの?
14日に彼と会う約束はしていないけれど、何か用意しといた方がいいのかなあ…
会場に戻ると、雪が雨に変わったという報告を受けた。
それなら、積雪の影響は明日には及ばないだろう。
しかも、天気予報によると明日は晴れで、明後日のバレンタインにまた雪か雨が降るらしい。
クライアントの若手社員が私に向かって、天気を味方につけましたね、と笑顔を向けた。
2月14日まであと2日。
To be continued…
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最後の回まで彼を出さない予定だったのですが、自分が耐えられなくなりまして(笑)、回想という手を使って出しちゃいました
うん…
この話の通りに、夢に出てきちゃったんですよね…
うん…
夢の内容は言えませんけども…
今日は、V6の坂本君が主演している舞台「ゾロ・ザ・ミュージカル」を観てきました
むちゃくちゃ楽しい
とにかく痛快
フラメンコが超カッコイイ
フラメンコギターを演奏されてる方とか、外国人のダンサーさんはプロの方みたいですね。
ダンスの技と迫力が違う
でも坂本君も全然負けてない
とてもレベルの高いミュージカルです。
アンコールはフラメンコの競演で見応えあります。
ミュージカルが好きな方は観に行って損はないですよ
まだ空が暗いうちから、私は自宅を出た。
昨日から夜間も降り続いていた雪はいつの間にか止んでいて、私はちょっと安堵した。
このまま雪が降らずにいてくれたら助かるんだけど。
マンションの前の歩道が少し凍結していて、うっかり足をとられそうになった。
私はタクシーをつかまえて、会場へと向かった。
タクシーの窓から、都心らしいモノクロームの雪景色を眺めた。
圧倒的に多いグレーに黒、そして中途半端な白。
子供の頃は、雪が降るとワクワクしたものだった。
まだ誰も足を踏み入れていない新雪の上で、キュッキュッと雪鳴きの音を立てながら、自分の小さな足跡をつけてはしゃいでいた。
かまくらに憧れて、庭の雪を一生懸命かき集めたっけ。
結局、豪雪地域でもない所では、雪の量が足りなくて、雪だるまにしかならなかったけど。
雪を嫌いになったのはいつからだろう。
毎朝通勤ラッシュにもまれ、社会的な責任を求められ、信用を失うリスクを避けるようになり、心にゆとりのない大人になってからだろうか。
そういえば、昨日更新された彼のブログでは『寒いの嫌い』って書いてあったけど、雪が嫌いとは書いてなかった…
今日も、彼はドラマの撮影なのかな。
昨夜、深夜番組の新しいコーナーに彼がメンバー全員と出演していた。
内容があまりに可笑しくて爆笑しながら見ていたけれど、そのうち不思議な気持ちになってきた。
テレビの中のこの人と、私は本当に付き合ってるの?
もしかしたら、今、私はとてもとても長い夢を見ているとか?
放送後、浮遊感にも似たモヤモヤとした疑問を抱いたまま、私は眠りについた。
だからだろうか。
今朝方見た夢に彼が出てきた。
ただ、その夢があまりにもリアルすぎて、目覚めた時、どうして隣に彼がいないんだろうと思ってしまったのだけど…
その時、タクシーが会場に近づいたのを見て、私は仕事モードにスイッチを切り替えた。
イベントの幕が開けた。
始まる前にまた雪が舞い始めたが、会場が商業ビルの中という立地条件と、それに連動したバレンタイン需要のおかげか、当初危惧していたほど客の入りは悪くない。
ちょっとだけ、肩の荷が下りたが、まだ油断は出来ない。
午後からまた本格的な雪になる、という予報が出ている。
スタッフとお昼の仕出し弁当を食べている時に、彼からメールが届いた。
『塩味やで』というメッセージと一緒に、温かそうなラーメンの写真が添付されている。
思わず微笑んだ。でも…
なぜメールなの?
いつもメールは面倒がってしない人なのに。
なぜ電話じゃなくてメールなの?
しかもこんなにマメに送ってくるなんて彼らしくない。
バレンタインが近いから?
何か期待してるのかな?
この前、ラジオでもたくさんチョコが欲しいみたいなことを言ってたし…
あれはリスナーへのリップサービスで言ってたんと違うの?
「え?なにそれ、おまえ、コーヒーを豆から挽くん?」
彼が好奇心の眼差しで、私の手元のミルを覗き込んできた。
「俺、豆でなんか買うたことないで」
「豆の方がね、酸化が進みにくいから美味しく飲めるの」
「こんなん映画でしか見たことないよ」
挽いてみる?と聞くと、欲しかったおもちゃをもらった子供みたいに、ニコニコしながらミルを挽き始めた。
ガリガリと豆が挽かれるたびに、コーヒーの芳香が部屋に満ちていく。
「あ、そや、チョコある?」
「もちろん」
私は冷蔵庫から出した箱を彼の前に並べた。
「ピエール・マルコリーニ、これはパイヤール、あとフェアトレードのチョコ」
「なんやカタカナばっか言われてもようわからん」
「どれがいい?」
「どれでもええよ。美味しいやつ」
「ええ?どれも美味しいんだけど」
「じゃあ…」
― おまえが俺にあげたい思てるチョコでええよ…
あれはたしか、ツアー前のことだったかな。
あの時は結局、味見と称して3つとも食べちゃったけど。
うちに来れば、チョコレートを常備してるからいつでも食べられるのに。
それでも、バレンタインデーという日にはチョコレートをもらいたいものなの?
14日に彼と会う約束はしていないけれど、何か用意しといた方がいいのかなあ…
会場に戻ると、雪が雨に変わったという報告を受けた。
それなら、積雪の影響は明日には及ばないだろう。
しかも、天気予報によると明日は晴れで、明後日のバレンタインにまた雪か雨が降るらしい。
クライアントの若手社員が私に向かって、天気を味方につけましたね、と笑顔を向けた。
2月14日まであと2日。
To be continued…
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最後の回まで彼を出さない予定だったのですが、自分が耐えられなくなりまして(笑)、回想という手を使って出しちゃいました
うん…
この話の通りに、夢に出てきちゃったんですよね…
うん…
夢の内容は言えませんけども…
今日は、V6の坂本君が主演している舞台「ゾロ・ザ・ミュージカル」を観てきました
むちゃくちゃ楽しい
とにかく痛快
フラメンコが超カッコイイ
フラメンコギターを演奏されてる方とか、外国人のダンサーさんはプロの方みたいですね。
ダンスの技と迫力が違う
でも坂本君も全然負けてない
とてもレベルの高いミュージカルです。
アンコールはフラメンコの競演で見応えあります。
ミュージカルが好きな方は観に行って損はないですよ