『今度、一緒に食べに行こか』
彼から豚しゃぶの写メが届いたのは、イベントの2日目が終わりに近づいた頃だった。
今朝、イベント会場に向かいながら、久しぶりに青空を見上げたような気がした。
太陽の日差しは、心を自然と前向きにしてくれるし、気持ちを奮い立たせてくれる。
それにしても、最終日に晴れるなんて私は本当についている。
バレンタインデー前日の追い込みとポカポカした陽気に誘われて、土曜日以上の、もちろんそれをはるかに超える集客で会場は賑わった。
開催日程では意見の相違があったクライアントと私だったが、オーガニックとフェアトレードとチャリティーというテーマでは、方向性が最初から一致していたので、この結果に全員が喜んだ。
日程のことで私に皮肉を言った上役からも「結果オーライだよ」と満面の笑顔で握手を求められ、やっと肩の荷がすべて下りた気がした。
「明日の夜、反省会を兼ねた打ち上げするから。君もぜひ」
明日の夜?
今回のイベントの担当者が申し訳なさそうな顔で近づいて言った。
「すみません。上司の予定が空いてるのが明日しかなくて」
うちの社員たちからも、なんでバレンタインの夜にと文句が出たんですが、と苦笑混じりで言われては、こちらは何も言えない。
なにしろクライアントあっての私たちの仕事なのだから。
次に繋げるための付き合い、営業活動だと割り切るしかない。
もちろん出席させていただきます、と笑顔で返した。
2日間のイベントは大きなトラブルもなく、無事に終わった。
撤収作業も比較的スムーズに終わり、最後の搬送トラックが会場を出るのを見送ってから、私はタクシーに乗り込んだ。
心地良い疲労感を座席シートに預けて、私は彼から届いていたメールに返事を出した。
『ドラマの撮影が終わったら、私におごらせて』
今のドラマが全部で何回の放送になるのかわからないが、普通に考えてオールアップは来月になるだろう。
撮影が終わったら、というのは私なりの気遣いのつもりだった。
とにかく、彼の仕事の邪魔になるようなことは一切しない。
それが、彼と付き合うようになった時、私が私自身に課した制約だった。
だから、私からは極力、電話もメールもしないようにしている。
だけど…
最近、彼の声を聞いたのはいつだろう。
最後に、彼と会ったのはいつだろう。
たぶん、もう1ヵ月以上、彼と会っていない。
声を聞いたのも、ドラマの初回オンエア前にかかってきた電話が最後だと思う。
彼からずっと連絡が来ていないことは分かっていた。
でも、今はお互いに忙しい時だからと自分に言いきかせてきた。
会いたい気持ちを心の奥底に封じ込めて、何重にも鍵をかけた。
だから、久しぶりに彼からメールが届いた時、呪縛から解放されたように気持ちが弾んだ。
嬉しさが先に立って、いつものように電話ではないことに最初は疑問すら抱かなかった。
どうして電話をくれないの?
あなたの声が聞きたいのに。
ううん、違う。
本当はあなたに会いたい。
会いたくてたまらない。
でも、会えないのなら、せめて声だけでも聞かせて。
まるで心のダムが決壊したみたいに、彼への想いが溢れ出して、自分の力じゃ止められない。
息が詰まりそうになるほど苦しくなって、私は胸の前で両手を握りしめた。
どんな気持ちにも耐えられるよう、幾重にもかけたはずの鍵は、いったい、いつ外れてしまったのだろう。
自分の気持ちから目を逸らそうと、私は固くぎゅっと目を閉じた。
2月14日まであと1日。
To be continued…
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
連載って…
大変ですね(笑)
各新聞の朝刊に毎日連載小説が掲載されていますけど…
私みたいに1話分のボリュームもテキトーで、明日で連載終わりなんていうのとは格が全然違います(そりゃそうだ)
さて、明日が連載の最終話となりますが、どんなラストを迎えるんでしょうか?
私もわかりません(笑)
この回まではほぼ書き上がっていたんですが、最終話だけまったく手付かずです。
明日、ちゃんとアップ出来るのかなあ
彼から豚しゃぶの写メが届いたのは、イベントの2日目が終わりに近づいた頃だった。
今朝、イベント会場に向かいながら、久しぶりに青空を見上げたような気がした。
太陽の日差しは、心を自然と前向きにしてくれるし、気持ちを奮い立たせてくれる。
それにしても、最終日に晴れるなんて私は本当についている。
バレンタインデー前日の追い込みとポカポカした陽気に誘われて、土曜日以上の、もちろんそれをはるかに超える集客で会場は賑わった。
開催日程では意見の相違があったクライアントと私だったが、オーガニックとフェアトレードとチャリティーというテーマでは、方向性が最初から一致していたので、この結果に全員が喜んだ。
日程のことで私に皮肉を言った上役からも「結果オーライだよ」と満面の笑顔で握手を求められ、やっと肩の荷がすべて下りた気がした。
「明日の夜、反省会を兼ねた打ち上げするから。君もぜひ」
明日の夜?
今回のイベントの担当者が申し訳なさそうな顔で近づいて言った。
「すみません。上司の予定が空いてるのが明日しかなくて」
うちの社員たちからも、なんでバレンタインの夜にと文句が出たんですが、と苦笑混じりで言われては、こちらは何も言えない。
なにしろクライアントあっての私たちの仕事なのだから。
次に繋げるための付き合い、営業活動だと割り切るしかない。
もちろん出席させていただきます、と笑顔で返した。
2日間のイベントは大きなトラブルもなく、無事に終わった。
撤収作業も比較的スムーズに終わり、最後の搬送トラックが会場を出るのを見送ってから、私はタクシーに乗り込んだ。
心地良い疲労感を座席シートに預けて、私は彼から届いていたメールに返事を出した。
『ドラマの撮影が終わったら、私におごらせて』
今のドラマが全部で何回の放送になるのかわからないが、普通に考えてオールアップは来月になるだろう。
撮影が終わったら、というのは私なりの気遣いのつもりだった。
とにかく、彼の仕事の邪魔になるようなことは一切しない。
それが、彼と付き合うようになった時、私が私自身に課した制約だった。
だから、私からは極力、電話もメールもしないようにしている。
だけど…
最近、彼の声を聞いたのはいつだろう。
最後に、彼と会ったのはいつだろう。
たぶん、もう1ヵ月以上、彼と会っていない。
声を聞いたのも、ドラマの初回オンエア前にかかってきた電話が最後だと思う。
彼からずっと連絡が来ていないことは分かっていた。
でも、今はお互いに忙しい時だからと自分に言いきかせてきた。
会いたい気持ちを心の奥底に封じ込めて、何重にも鍵をかけた。
だから、久しぶりに彼からメールが届いた時、呪縛から解放されたように気持ちが弾んだ。
嬉しさが先に立って、いつものように電話ではないことに最初は疑問すら抱かなかった。
どうして電話をくれないの?
あなたの声が聞きたいのに。
ううん、違う。
本当はあなたに会いたい。
会いたくてたまらない。
でも、会えないのなら、せめて声だけでも聞かせて。
まるで心のダムが決壊したみたいに、彼への想いが溢れ出して、自分の力じゃ止められない。
息が詰まりそうになるほど苦しくなって、私は胸の前で両手を握りしめた。
どんな気持ちにも耐えられるよう、幾重にもかけたはずの鍵は、いったい、いつ外れてしまったのだろう。
自分の気持ちから目を逸らそうと、私は固くぎゅっと目を閉じた。
2月14日まであと1日。
To be continued…
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
連載って…
大変ですね(笑)
各新聞の朝刊に毎日連載小説が掲載されていますけど…
私みたいに1話分のボリュームもテキトーで、明日で連載終わりなんていうのとは格が全然違います(そりゃそうだ)
さて、明日が連載の最終話となりますが、どんなラストを迎えるんでしょうか?
私もわかりません(笑)
この回まではほぼ書き上がっていたんですが、最終話だけまったく手付かずです。
明日、ちゃんとアップ出来るのかなあ
