ピダハン/ダニエル・L・エヴェレット
1冊3570円の価格設定
部数が伸びるジャンルでは無いので、
仕方ない価格設定だが満足のいく内容だった。
アマゾンの奥地に住む、少数民族ピダハン。
400人を割る彼らは、滅びゆく言語を話す。
キリスト教の伝道師として著者は彼らの村へと派遣される。
布教活動(聖書を彼らの言葉に訳す)を行うには、
彼らの言語を理解することが必要だが、
彼らの言語だけでなく文化、思考、哲学に触れていくうちに衝撃を受けて行く。
結末を言ってしまうと、著者は最終的に無神論者になってしまう。
言語学的なところは難しいので、そこはさらりと流して
私は彼らの文化的な側面に注目して読み進めた。
驚くべきは、彼らには私達が当たり前だと思っている
右と左の概念が無い、数の概念が無い、色の名前も存在しないのだ。
右/左に値する単語が無いので、
自分を基準にした、相対的な右/左では無く、
地理的に川の上流/下流を使って、絶対的な表現で左右を表現する。
色についても同様で、赤は「それは血」、黒は「血は汚い」、緑は「いまのところ未熟」だ。
そして、直接的な経験しか語らない、信じない彼らには
どの民族にもある、創生神話が無い。
そんな彼らにどうやって、イエスの存在を信じさせることが出来ようか。
言語を習得するということは、そこで暮らす人々の文化的知識が無ければ、
完璧に習得することは出来ないのだな、と改めて感じた。
本作というか著者の考えは、言語学的には物議をかもしているようだが
一般向けの内容としての読み物としては、大変興味深い内容だと思う。