まかろんのお茶会

日々の小さなことを詩モドキにしてます。
皆さまのお茶菓子代わりに楽しんでもらえたら嬉しいです。

<未完作> ~ 「妖精の結婚式」 その156

2014-08-26 21:59:23 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
(その1から見たいという方は、こちらをどうぞ!
→ 2014年「妖精の結婚式」第1ページ



2018年のまかろんです。

この回で当お茶菓詩は中断いたしております。
まかろんの力不足で、皆さまを最後までご案内できなくて、すみませんでした。

読み返してみると、未熟で逃げてるところがある一方で、
ここまで練り上げて書く気力があったのかと驚くところもあり、
4年経った今、続きを書けるのか心もとない気がします。

今は、ここで乗り越えられなかったことを、
別の舞台で乗り越えてみようと格闘中です。

それも出す出す言って、ずいぶん時間が経ってしまいました。

今書いてる作品も、やっぱり妥協だらけで・・

それでもやっぱり物語を紡ぐことは、幸せなことですね。

毎日毎日苦しいことばかりで、物語を紡ぐのも99.9%の時間は苦しいことばかりですが。

いつかこの梅雨の庭に帰ってきたいです。

続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その156

  紫陽花は 根を伸ばした
  深く・・ できるだけ深く・・
  繊細な手が 地面から離そうと
  引っ張っているのを 感じる
  それともあれは 王の手かしら?

<つづき>

関係ないと 紫陽花の精は思った
私の望みは ここにいること
今行くわ サヤカ・・・
花の精は 渇ききった地面を進んだ
痛みと哀しみが 粉々になった焼けた大地を

花の精が 根を進めるにつれ
さまざまな 人間の顔や情景が
辺りにふっと浮かんでは また消えた
けれど それらに伴うはずの感情は
渇いた大地の どこにもなかった

紫陽花の根は その間をすいすいと進んだ
でもああ駄目だわと 花の精は
呼吸のたび水を奪うような 土の奥で思った
大地の隙間に 私の根が伸びてるだけ
これでは すぐにでも引き抜かれてしまう

それならばと 紫陽花は
伸ばした根の先から 力を抜いた
私は土になろう
サヤカの心の隙間を埋める 土になろう
私は花の精 土と水から生まれた者だから

けれど紫陽花が 土に還るには
すでに 水気を使い過ぎていた
受け止めるはずの 大地もまた
乾き果てて ただ沈黙していた
誰かが地上で 花をぐいっと引いた・・

ぱきん と乾いた大地に音がした
ぱらぱらと色あせた花が 地面に散った
茶色く変じた紫陽花は 深く広く伸ばした根を
地中に残したまま 根元から折れた
百年を経た紫陽花の精は 乾ききって死んだ


<つづく>

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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その155

2014-08-25 22:26:05 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
こんにちは、2018年のまかろんです。

前回で「ココカラ出ヨウ」と影が言っていたんですね・・・。
それなのにどうしてまかろんは、未だにこの続きを書けないでいるのでしょう・・・

いつかこの夏至の庭に帰れると良いのですが。

では、続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その155

  影の腕の中に 大きな植木鉢が現れた
  サアマダ間ニ合ウ ココカラ出ヨウ
  囲イカラ出レバ 君ノ王トテ手出シデキナイ
  コノ国ノ土ガ 喜ンデ君ヲ受ケ入レル
  影はまた 銀色に光るスコップをかざした

<つづき>

でも・・ と妖精は弱々しく言った
でもこの娘は・・
ドノミチコノ娘ハ 助カラナイ
影は紫陽花の幹に手をかけ 静かに言った
君ノ水デモ 癒セナカッタノダロウ

ナラバ ココニ居ルノハ無駄死ニダ
影は紫陽花を 軽く引っ張り
少しせわしげに 地面を掘りだした
紅暗い熱気を放ちだした空を 背に
その姿は いっそう暗く小さく見えた

紫陽花は足場を崩され ぐらぐら揺れた
銀色のスコップが ざくざくと
地面を掘り崩しては 遠くへ投げる
その音一つ一つが 切りつけるようだった
繊細な手が 紫陽花をつかんだ・・・

・・待ってください! と紫陽花は抗った
どうしてなのだろう よく分からなかった
ただ ここから逃げたら何もかも失う
そんな気がした
ここにいたら 自分の全てを失うのに・・

それでもと 紫陽花は干からびた大地に
植物の身体で できるだけしがみついた
ここには サヤカの全てがある
それは 余所で空っぽの自分にしがみつくより
よほど芳醇なことのように 思えた

紫陽花は 根を伸ばした
深く・・ できるだけ深く・・
繊細な手が 地面から離そうと
引っ張っているのを 感じる
それともあれは 王の手かしら?

<つづく>


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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その154

2014-08-24 22:11:51 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その154

  けれどと 蒼い紫陽花は地面の中に
  なんとか もうほんの少し根を伸ばした
  この娘は それと関係なく接してくれた
  お願いです・・ と妖精は必死に訴えた
  私に ここにいさせてください・・・

<つづき>

暗い人影は 地面にひざをついたまま
眼鏡の奥から 紫陽花をまっすぐ見た
紫陽花はまた 枯れ始めていた
君ハ死ヌコトニナルネ と影は言った
分かっております と妖精は言った

イヤ分カッテイナイ と影は言った
君ノ王ガ 君ヲ取リ返シタガッテイル
何ガ何デモネ・・・
影は 薄ぼんやりとした空を見上げた
空は紅みが増し ちりちりと震えていた

王ハコノ身体ゴト アノ光ノ路ニ
君ヲ 連レ込モウトシテイル
影は不穏な空の下 淡々と言った
ドウイウコトカ 分カルカイ・・?
紫陽花の精は はっと影を見た

コノ娘ハ焼カレテ 存在ノ核マデ消滅スル
ムキ出シニナッタ君モ と
影は眼鏡越しに 紫陽花をじっと見た
同ジク光ノ中デ 焼キ尽クサレル
王ハ 君ヲ守ルダロウカ・・?

紫陽花は黙って 話す影を見つめた
ソウ・・分カッテキタネ と影は言った
君トイウ意識ハ オソラク灰モ残ラナイ
彼ガ必要トシテイルノハ 君ノいのちノ力
君トイウ器ハ ドウデモ良イコト

影の腕の中に 大きな植木鉢が現れた
サアマダ間ニ合ウ ココカラ出ヨウ
囲イカラ出レバ 君ノ王トテ手出シデキナイ
コノ国ノ土ガ 喜ンデ君ヲ受ケ入レル
影はまた 銀色に光るスコップをかざした

<つづく>


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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その153

2014-08-23 21:52:41 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
昨年から物語詩を連続で創っておりますが、
物語を書いてて一番、よしッと思うのは、
前々から決めてた設定を、バシッと書き表わせた時だったりします。

まあ、ホント、ホッとしますね。

それ当てにして、思わせぶりなこと散々書いてるのに、
作中で出せないまま終わらせることになっちゃったら、
読む人はどー思うだろう、と気が気じゃないのデス。

当茶菓子もまだまだネタが隠れて(うーん、本人は隠してるつもり)るので、
なんとか全ての隠し扉を開きつつ、
ゴールまで皆さまをご案内していきたいですね。
(と言いつつ、2018年現在、再開の見込みは全くないのですが・・・。
 本当にすみません)

では、続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その153

  スコップは ざくざくと
  渇いた地面を 掘り進めていった
  暗い人影は ぐらぐらと揺れ始めた
  紫陽花を見上げて 笑った
  眼鏡の奥の目に 桃色の娘が映っていた

<つづき>

ああそうだったと 妖精は
切り裂かれるような想いで思った
この方が・・この方が
視てらしたのは いつだって・・
妖精は 桃色の自分のまた奥を見つめた

貪欲に 世界中から草花を集めた
陽の沈まない国は 蒼い花を手に入れた
華やかに形を変えた花は 異国の土と水で
桃色に色を変え 人々の庭で愛でられた
東洋の青年が学ぶ宿 その隣の庭でも

桃色の東洋由来の花 彩る庭で
咲きにおうは 無邪気な金髪の天使
ふるさと戻って見た 蒼い花
同じ花と聞くに 愛し慕わし遠き国
懐カシイナ・・・

暗い人影は また地を堀り始めた
お願いです ・・さま!
百年を経た紫陽花の精は 叫んだ
どうか捨て置いてください・・
私は・・私は“青花”です!

暗い人影は 掘るのを止めて
黒い目で 蒼い紫陽花を見上げた
私は 貴方の“天使”ではありません・・
紫陽花の精は 震えながら言った
彼の地の色すら もうないのです・・・

けれどと 蒼い紫陽花は地面の中に
なんとか もうほんの少し根を伸ばした
この娘は それと関係なく接してくれた
お願いです・・ と妖精は必死に訴えた
私に ここにいさせてください・・・

<つづく>


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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その152

2014-08-23 21:35:11 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
どもども。静かな夜です。

続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その152

  ・・さま? 妖精はつぶやいた
  ふいに身の裡に 水が湧いたような気がした
  暗い人影は 微笑んだようだった
  紫陽花の精は ぼんやりと笑い返した
  暗い人影は 渇いた地面にしゃがみこんだ

<つづき>

暗い人影は 紫陽花を掘り返し始めた
いつの間にか その繊細な手には
銀色の小さなスコップが 握られていた
スコップは 薄ぼんやりとした明りの中
ギラリと 光を弾いて光った

・・お待ちください! と妖精は言った
お気持ちは嬉しゅうございますが けど・・!
心配シナイデイイカラネ と人影は言った
君ハ 僕ノ家ノ庭ニ植エテアゲル
人影は花をなでた 大丈夫ダヨ・・・

ああこれはと 妖精は思った
百年前に あの方が言ったこと
舶来品として連れてこられて
陰気な花だと捨てられそうになった私を
留学先でよく見た花だと 拾ってくれた

百年 この家の人は良くしてくれた
紫陽花は 根を踏んばりながら思った
主を失い代を替えても 戦の気運に
重くなる空気の中 家を守り庭を守って・・
干上がる夏には じょうろの甘露・・・

アジサイがやっと 世間で認められると・・
妖精は スコップを一心に動かす
繊細な手を ざわめく思いで眺めた
この家の人は 表に挿し木をしてくれた
うちの自慢の花を見てもらおうと・・・

スコップは ざくざくと
渇いた地面を 掘り進めていった
暗い人影は ぐらぐらと揺れ始めた
紫陽花を見上げて 笑った
眼鏡の奥の目に 桃色の娘が映っていた

<つづく>


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※修正のご報告:2016年1月10日
陰気な花だと捨てられそうになった私に → 陰気な花だと捨てられそうになった私を
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