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青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

悪魔のいけにえ

2015-07-17 06:36:19 | 日記
『悪魔のいけにえ』(1974年のアメリカ映画。日本での公開は1975年)は、トビー・フーパー監督が16ミリフィルムで撮影したデビュー作である。テキサス州を旅行中の5人の若者が、人皮の仮面を被った大男・レザーフェイスによって不条理に殺害されていく様を捉えたホラー作品だ。無駄な描写が一切なく、何度観ても飽きないと思う。
殺人鬼レザーフェイスとその一家の残虐行為のみをカメラで追い、レザーフェイスの生い立ちやトラウマなどにはまったく触れていない。彼の行動に対する言い訳が一切無いのである。心理描写を廃した乾いたストーリーと、舐めるような粗い画像が臨場感たっぷりで、多くのフォロワーを生んだのが納得できる傑作である。

《1973年8月、サリー、ジュリー、カーク、パム、フランクリンの5人は、テキサス州を車で旅行していた。車中で、占い雑誌を読んでいたパムは、この旅行中に不吉なことが起きることを懸念するが、仲間たちに軽く笑い飛ばされてしまう。場近くを通った時に家畜の殺し方について面白そうに語るフランクリンに顔を顰めるサリーとパム。ハンマーで頭を殴るだの皮を剥ぐだの、彼らの末路を暗示させる言葉が飛び出してくるが、言っている本人には勿論何の予感も無い。
5人は、ヒッチハイカーの男性を拾った。彼は突然自らの掌をナイフで切り、流血にも構わず、ポラロイド写真を撮影して、5人に売りつけようとする。断ると腹を立てたのか、フランクリンの腕を切りつけた。車から降ろされても悪態をつきながら車体を蹴りつける彼を置き去りにして、給油所に向かう5人。しかし、給油所ではガソリンは明日にならないと届かないと言われてしまう。

怪我をしたため車椅子を上手く操作できないフランクリンをほったらかしにして、廃屋を探検し出す4人。先程のヒッチハイカーの件からは何のダメージも受けていないようである。カークとパムは、別行動をとるので1時間後に落ち合おうと提案してきた。

カークとパムは白い家を見つけた。帰りたがるパムを外に待たせ、中に入るカーク。すると、奥の部屋からレザーフェイスが無言で出てきて、ハンマーで無造作にカークの脳天を殴りつけると、奥の部屋に引きずって行き、ドアをピシャリと閉めてしまった。
なかなか戻らないカークに痺れを切らしたパムは、屋内に迎えに行く。すると、無数の骨の散乱する奇妙な部屋に入ってしまった。家具?オブジェ?明らかに人骨とわかる頭蓋骨が飾られているのを目にし、すっかり恐慌を来してしまうパム。レザーフェイスに後ろから羽交い絞めにされ、奥の部屋に連れ込まれ、無造作に食肉を吊るす大鉤に背中から突き刺されてしまう。台の上にはカークの死体。唸るチェーンソー…。

夕刻になっても戻らない2人をジェリーが探しに行く。白い家に辿り着くと、中から女性の呻き声が…。中に入ったジェリーは冷蔵庫に閉じ込められたパムを見つけて驚く。そして、驚いている間にレザーフェイスにハンマーで撲殺されてしまうのだった。

とっぷり日が暮れてから、口論しながら3人を探しに行くサリーとフランクリン。すると、フランクリンは、突如現れたレザーフェイスにチェーンソーで切り刻まれてしまった。叫び声をあげながら逃げるサリー。選りに選って、あの白い家に逃げ込んでしまう。2階の部屋でミイラ状の老人を見つけたサリーは、半狂乱になって窓から飛び降り、給油所の主に助けを求める。「電話が無いから、トラックを出してくる」という主を待っていたら、主は何故か大きな袋とロープを持って戻ってきた。滅茶苦茶に殴られ、縛られ、袋を被せられたサリーはトラックに載せられる。

着いた先で袋を外されると、そこはあの白い家で、目の前にはあのヒッチハイカーが…!彼らは家族だったのである!!ミイラだと思っていた老人に血を吸われ、気絶するサリー。目を覚まし、叫び声をあげるサリーに大喜びする一家。サリーの見開いた瞳のアップと一家の哄笑する顔が何度も交錯する。ハンマーで殴られている最中に、2階の窓をぶち破り、血塗れになって逃げ出すサリー。ハンマーを片手に追いかけてきたヒッチハイカーは途中でトラックにはねられ、サリーは別の車の荷台に乗り込む。サリーを乗せた車が去っていくのをレザーフェイスが追いかける。彼は、朝日を浴びながらチェーンソーを振り上げ、踊りのような動きを見せた…。》

この種のホラーでありながら、驚くほど血の量が少ない。が、それが却って不気味な臨場感を醸し出しているのだ。無駄な効果音も無く、登場人物も少人数でありながら、リアルなカメラ回しで最後まで盛り上げてくれる。要らないものは一切無く、必要なものはちゃんとある。なんと!なんと!の怒涛の展開で、観る者に息もつかせない。サリーは本当に逃げ切れたのだろうか?彼女が乗り込んだ車の向かう先が、あの白い家ではないと言い切れるだろうか?そんな余韻も残すプッツリとしたラストも秀逸である。
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