「生きる糧」 2023-03-21 16:33:00 | 治りませんように p79「健常者、いつもリスパダール飲んでるようなもんなんだろうか」…あれほど強いエネルギーで高揚し、あるいは深い虚しさに苦悩する彼ら当事者の力が、私にはなかったということなのだろうか。それとも自分をあざむくことに慣れきって、病気にもなれないのだろうか。病気になる力がなかったということなのか。
「幻聴とのダンス」 2023-03-20 15:43:00 | 治りませんように p73「幻聴さんの世界ってのはやっぱりなんていうか、離れがたい魅力があるんですよね。つらさのなかにね。(一方)現実のつまんない、自分の苦労と直面したらおもしろくないじゃないですか。たとえば恋人ができないとかさ」p74幻聴や妄想がもたらす劇的な世界に比べ、現実の世界はなんとささやかなことだろう。
「新しい薬」 2023-03-19 08:00:00 | 治りませんように p68 あたしもうがんばれない。発病したときも、彼女はこの言葉をつぶやいていた。大卒の新入社員として働きながらサトラレに襲われ、必死に耐えたにもかかわらず過呼吸の発作に倒れ、絶望の淵から、ああ、あたしもうがんばれない、とつぶやいている。
「立ち往生」 2023-03-18 07:56:00 | 治りませんように p62「もう自分のことは自分で決めなくていいから、みんなに決めてもらおう」…「薬も、任せるかい」と聞かれて「なんでもいいから助けてください」というのがせいいっぱいだった。…わかったような気になっても、かならずわからない部分が残っている。ベテルのメンバーは「病気になってよかった」「病気は宝」などとよくいうけれど、この病気にはそうした標語にけっして回収されない、いつまでも手なずけることのできない饒舌さがまとわりついているのである。
あきらめる 2023-03-17 08:01:00 | 治りませんように p50「自分ってものが逆に、ひとりぼっちのときは見えなかったんだよね。まわりにいっぱいいろんな人がいて、いろんな人を通してくる自分ってものが見えてきたとき、はじめて自分ってこんなものかなってぼやって見えてきたっていうか」p56一人で悩んでいるころは、考え抜けば頂点に至って答えがみつかり楽になるのではないかと思っていた。今ではとてもそんなふうに思えない。一人で考えていても、どこにも出口は見つからない。出口は、おそらく人とのかかわりのなかにしか見つからない。