何時もの道
今朝も何時もの時間に起きて何時もの地点を
通過する
通過してくる対向車の灯りが
蛇行してくる
だんだん其処に近ずく
其処にはかなり大きな黒い塊が見える
鹿が道路の横断に失敗して
車にひかれた知る限り今年四頭目
いや
横断に失敗したのでなく
其処はもともと獣道だったのだろう
其処に道路ができたのかもしれない
それと
今の自動車は獣が道路にいても減速しない
何もなかったようにひいていく
人としての感情がなくなった
ひかれた姿を見たら無残さがわかる
其の姿を写真として載せることは好まない
書くことがない
今日一日生きていたのだから
昨日と何の変化もないと嘆かずとも
見渡せば
山肌を覆う木々
残り少なくなった葉は目にわびさびを訴える
山々は白くなり冷たい風を吹き出し肌に寒さを訴える
水は冷たくなり沸き立つ間がのびて飲するまでの長さを訴える
それを感じ取れないのは
自然がもたらす母にも似たぬくもりに
抱かれているせいか
それとも鈍感なのか
しかし
一日の長さ
一月の長さ
一年の長さ
が
糧を得るためとしては確実に時が短くなっている
変化の大きさに気づく
隧道
常用漢字以外の文字が使われていることで
今では隧道とは言わないらしい
人、生まれたときにどの隧道を
通るか決まっているらしい
怖さを感じる素掘りの隧道
暗く先の見えない隧道
針穴ほどの明かりの見える隧道
先には光の差し込むさまが見える隧道
明々とあかりの灯された隧道
しかし
己の全てをつぎこんだ努力でツキをも呼び込み
暗く怖さをも楽しさに変えて
先にある光を手中にできる
だが
己の努力を忘れ傲慢さをむきだしにして
ツキにも見放され
己の正当性を唱え
明々と灯された明かりさえ暗いと嘆き
先にある光が見えないと
更に嘆く
電話
ある地方の田舎から
モシモシ東京の○○○○番お願いします
電話を切って2時間程お待ちください
つい40数年前のこと
東京まで何人の交換手が関わったことだろう
のんびり時間をやり過ごし繋がるのを待っていた
自動化が進み
丸い穴に指を入れて回すダイヤル式電話
はやくなった
交換機室では交換機がガチャガチャと音をたてていた
呼び出し音もベルの音だけ
其の電話機も姿を消した
新聞の写真もよく見れば黒い点と白い点の組み合わせ
其れも消えた
機械の進化と一緒に
人情も薄らいだ
しかし
線も無い電話から
声だけしか知らない方に電話をした
そして
とり止めもない話もした
温もりを感じる会話だった
めぐる雨
初冬に降る冷たい雨
体の芯まで冷やす
時には心も荒む
あと少し気温が下がれば霙に変わる
更に下がれば雪へと変わる
月が過ぎて
気温が上がれば
雪がみぞれに変わり
更に冷たい雨となる
そして
草木の芽生えを促す雨
人の心に浮き浮き感をもたらす
暑い時期に降る雨はすがすがしさをもたらす
傘なしで濡れてみたい雨
汚れを落としてくれる雨
あめ・雨・あめ
壊れる
パソコンが壊れ
十八年使い続けた
お気に入りのスピーカーも壊れた
新しくスピーカーを買った
其れが気に入らなかったのか
十八年使い続け
大事にしていた音響のプリメインアンプが壊れた
最大出力まで音量を上げたのは
ほんの数回
壊れた訳でもないのに壊されるものもある
街の粗大ごみに日に出向いたら
使い手を待っている今以上の機器に出会えるかも
しかし
時代の流れに惑うことなく
今まで楽しませてくれた機器
今一度蘇らせよう
そして最大出力まであげて
響かせよう
自分の老い先を考えれば
最後の最後までつきあうのが愛であろう
生きてるもだけに愛があると考えるのでは
物悲しい