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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

レムリアの記憶 第一章 <第18話>

2013-06-03 09:57:20 | 『日常』



翌日の朝一番。僕はセティファムにメールを送っておいた。
夕方に前の場所で会おう、という事で。


朝になって、いつものように家族で食事をして。
といっても今日は父親がいるのでいつもより食卓が賑やかになっている。昨日釣ってきたナマル料理も並んでいるからでもあるけど。
父と、母をみて。
この二人にもいろいろとあって今があるんだなぁ、と思うとちょっと面白いと思っていると。
「なに?あなたお母さんみてニヤニヤして。」
と母親がいって、そして直ぐに父親をみて
「ナバラさん?何かアレットに言った?」
母親は父のことを名前で呼ぶ。
「いや、俺たちの馴れ初めを、ちょっと話しただけさ。」
「まぁ、あの歌の話?」
「ああ、今のアレットにはちょうどいい話だろう?」
それを聞いてレル姉が
「あの4人に歌送った話? なんだ、もしかしてアレットは似たような状態になっているの?今。」
と言ってくる。全くこういうことにすぐ興味持つんだから。
「別にいいだろう。僕の個人の問題だ」
「だから、どっちが我が家に来てくれるかで今後が変わってくるんだから。私達にも関係あるのよ。そういうことは」
明らかに、サラッティとセティファムと僕に何かがあったことは分かっているみたいな口調だが。
僕は食卓で話題にされるのも嫌になったので、途中でさっさと学校へと向かうことにした。
道の途中でサラッティのデシックルと出会う。

「おはよう」
先に声をかけてきたのはサラッティ、いつものように笑顔で話かけてくれる。
僕も挨拶を返して、そのまま一緒にしばらく走る。
「ごめんね。」
いきなりサラッティが話しかけてきて、ちょっと驚く。
「なにが?」
「私、ちょっと焦りすぎてた。と思って。」
僕を見て、少し恥ずかしそうに笑う。
「あのあと、良く考えたら。私ってかなり嫌な女だよね。」
「いや、それは僕のやり方もまずくて・・・。」
「ううん。結局私が走りすぎたって思う。でも、結果的にアレットに想いを伝えられたからよかったけど。」
僕が何も言えずにいると、
「アレットはアレット。その優柔不断さがいいの。」
と言って、急にデシックルを横に近づけてきて。
「はやく、セティファムに歌を作ってあげて。」
ぼくが驚いて見ると、その表情は真剣だった。
「そうじゃないと、不公平だもの。」
と言ってニッと笑って
「それから、あの時の話の続きをしましょう。」
「あの時って?」
「バカ、こういう時はわからなくてもわかった振りをしてよ。空気読めない人ね」
そう言われて、あの時って?とまた考えていると
「ほら、置いていくわよ。」
と言ってサラッティはデシックルのスピードをあげた。
僕もそれを追いかけていく。


街についても、セティファムの姿を見かけることはなかった。
学校に到着すると、シェラがニヤニヤしながら自分の端末を覗いている場面を見つけた。
「なんだ、あさから気持ち悪いなぁ。」
そう言うと、シェラは
「フッテロットから、今度の休みに遊びにいかないかって、誘いが来たんだよ。」
と言ってまたニヤニヤしている。
「セティファム狙いじゃなかったのか?」
「セティファムはお前が好きなんだろう?なんか旅行中修羅場になってたそうじゃないか。」と言ってニヤニヤ笑う。さっきの楽しそうな笑顔とは違って、少し毒のある笑顔だ。
「修羅場って、そうじゃないと思うが」
「だから、俺もフッテロットに切り替えるよ。お前はセティファムとなんとかしろよ。女の子泣かすもんじゃない。」
こいつ、急に上から目線になっていて。浮かれているのが良くわかるが。
言われることも最もなのであえて反論はしなかった。
だが、シェラの足を軽く蹴って自分の席にむかう。
セティファムをなんとか、か。
今日来てくれるのだろうか?

この日は旅行についてのレポート書きがほとんどで。個人で資料をまとめたり横のやつから拝借したりと、同じグループ内でメールのやり取りも頻繁に行われて。それぞれのデスク上には投影モニターが何十と並んで、それのあいだでレポートを端末で仕上げていく。

僕の場合はほぼ「アレット、まとめたの見せてくれ」というメールばかりで。最初っからアテにされていたのがよくわかる。
その代わりほかの連中にはどっかで埋め合わせしてもらおう。

結局そのレポート書きが一日中かかったので、ほぼ夕方になったが以前セティファムからはじめて引越しの話をされた高台へと急ぐ。
早く会って、話をしたい。
動く道も急ぎ足でいどうして、階段も息をきらせて駆け上がってきた。
あの場所へとやってくると、

そこにはだれもいなかった。

夕方の光が向こうの街にあるタワーを照らしていて。広い空が変化している空浮きが感じられる。
そこには、あの時の空だけが広がっていた。

まだ時間が早かったのかも?
と思って、向こうの街に明かりが灯るまで待っていたが。その日は結局セティファムがやってくることはなかった。


家に帰ると、直ぐに父親が
「その顔だと、うまくいかなかったな。」
と言ってきた。
「・・・いや、こなかったんだ」
僕が言いながら荷物を椅子の上に下ろすと
「それは、もう一度周りを見ていけってことだな。」
と言って父はにやっと笑った。
夕食までの時間に何かできることはあるかな?
セティファムにもう一度メールを送る。開封するとこちらにメッセージが来るように設定をしてみた。
セティファムとの直接のやりとりはまだできそうもないから。
サラッティにメールを送ると直ぐに返事がきた
「セティファムは今日学校に来てないんだよ。」
という事で。何?学校に来てない?
理由を聞くと、それはまだ教えてもらえてないということだった。先生もまだそれについては言わなくて、「質問してみたら「ちょっと家庭の事情のようです」ということだったわ」というメールが戻ってきた。

家庭の事情。

もしかして?

すぐにゲートに潜り込む。
そこでセティファムの住所を調べる。生徒の住所はゲートに公開されていて、それぞれで自由に調べてアクセスすることができる。
逆に、それだけ自由に公開されているため、しっかりと住所を調べることもほとんどない。気づいたら検索すればいいのだし。それに、滅多に住所を調べる必要もないし。
会話は端末で、立体映像で、いつでも可能なのだから、わざわざ家までいくことはほとんど無いからだ。
僕はセティファムの住所を見つけて、それをこちらの端末に落とし込む。
そして、ファイルをいくつか開いていくと、数日後に上書きされるデータの存在を見つけた。

これは、
いつからその住所になるのかを調べると、3日後。
つまり、もう引越しの日が決まっているということか。
しまった!
もう時間がないじゃないか。

明日はグループ討議がある。だからセティファムも来るかもしれない。
その時に話ができれば。

「食事よ~」
とレル姉の声が聞こえてきた。しょうがない、食事をしてからにするか


その夜、僕はセティファムのことを考えていた。

今の学校に入って最初のグループ討議の時、僕たちは初めて出会った。
最初見たとき、なんて綺麗な髪の毛なんだろう。というのが第一印象だった。
褐色の肌も銀色の髪も、それが風にそよぐ様子をみていると僕のハートが高鳴った。

そして、会話しているとセティファムの考えていることが分かってきて。
お互いに似たような考え方をしていることも感じられて。
一緒に買い物をしに行ったとき、それが一番よくわかった。
同じものを見て笑って、同じものを見て手にとって。

そして、髪飾りをあげたとき。その時の笑顔を思い出した。
そうだ、あの笑顔は僕が歌を作って上げるって行った時と同じだったじゃないか。

端末を立ち上げた。
直ぐに音楽のゲートにつないでいく。
歌を作ろう。

僕の心にあるセティファムを歌に表そう。





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