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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<後期アトランティス 6 >

2013-02-20 08:27:49 | 『日常』





それから、「地獄の一週間(ヤネッシュ姉さん曰く)」がスタートした。

確かに、目まぐるしく動く状況と。時間に追われたプログラムで。
確かに毎日が眠る時間も惜しいくらい忙しいの。

朝起きたら、最初は体の目覚ましでヨウシュン(ヨガみたいなもの?)を行って。
その後に、今回舞台で使用するすべての音楽の聴きこみをしながらフルーツ等を口にして。

各自今度はパートごとに分かれて練習。
この場合、各町から選ばれた人達が一緒になって練習するので、とっても面白いし、とってもエキサイティング!
全員を一度集めて、それからグループに分けてから練習をするのだけど、
このグループ分けをしてくれたのが、あの南の種馬・・・・じゃなくてトゥラさん。

人それぞれにはエネルギーのバランスがあって。それはその状況、その場所でも常に変化するものなんだけど。

それを見越した上で、集めるとそこでエネルギーが活性化して。より情報粒子から過去の情報を引き出せるようになる。それを目的として今回はグループ分けがされているの。
癒しとか、ヒーリングとか、そういう意味では無い踊りね。

そこで同じグループになったのは6人。
みんなキレイでかわいいし。やっぱり町の代表で選ばれてきただけの事はあるのね。
12のグループが出来ていたけど、私達のグループは人数少ないほうかも。
全部で200人くらい踊り子来てたから。
ひとりは西にある町から来ているアントスちゃん。今回の踊り子のなかでは最年少だって。
まだ幼い感じの顔なんだけれども、踊りは一級。見てびっくりしちゃった。良かったわ、こんな子が私の街に居なくて。すく追い抜かれちゃう。
赤い髪が印象的なのは南のほう出身のシラシット。私と同じ年なんだけど、もっと大人びていて。スタイルもいいのよねぇ、羨ましいわ。なに食べているか帰るまでに聞いておこう。
緑の眼と銀の髪が目立つこの子は中央の踊り子、カルン。真っ直ぐな銀色の髪の毛がとっても綺麗。ついつい触っちゃうわ。
おとなしいけど踊りは情熱的。シラシットにも似ているかな?外見は全く違うのに踊りになると同じような感じなのは面白いわね。
明るい茶色の髪の毛の、ヒラリーは西のほう、アントスちゃんのとなり町なんだって。
短めの茶色い髪と、バンダナを頭に巻いているから、パッと見男の子かと思ったけれども、
脱いだらすごかった。着やせするのね。
細身の綺麗な男の子みたいなんで、仲間のなかでも結構人気者。
最後にこちらも中央からの踊り子さん、アフルス。こちらは紫っぽい銀色、という変わった色なんだけれど、染めているわけじゃないって聞いてびっくり。
ついつい触ってしまうわ。
目も紫っぽいからお人形さんみたい。一番しゃべる子で、独り言も多いし、見ていて楽しい女のこ。思った事がすぐに口に出るからわかりやすくていいわ。
悪い時は悪い、ってすぐいってくれるし。
ちょっと凹むけど。


そして、私達のところには、北にある町のトレーナーのハッディって人が付いてくれたんだけど、この人綺麗な女の人で。びっくりしちゃった。

トレーナーって、私の街では職人的に動いていて。結構ルックスは微妙な人多いんだけど。
他の街だと踊り子並みに表に出てくる華やかな仕事なんだって。
この人が踊り子かと思ったもの。

「トレーナーのハッディです。みなさんよろしく。」
と言って初めて挨拶されたときなんが、私がちょっと照れちゃった。
綺麗な薄い色の金髪に、背が高くて。声も澄み切って響き渡るくらの美しさ。

才色兼備って感じかしら。

このグループは仮に「スべロス」と名前がつけられていて。
それは、創世記の時に現れた1つの存在の名前から取ったものなんだって。
12のグループにはそれぞれ、創世記に現れた存在の名前がつけられていて。今回のイベントの目的をイメージさせてくれるわ。

今回は「創世記」の情報探索。

これまでに私も町では何度も演じてきたテーマだけど、今回は規模も場所も違うからどんなに素晴らしい情報が降りてくるのか。
考えただけでもゾクゾクきちゃう。

濃い情報が私の体に下りてくると、私の体はその情報で動かされ、すべての情報と一体となって。
お客さんと私と、すべてが1つになって。
最高のエクスタシー。

それがこの規模で体験できたら。

もう男なんていらないかも(笑)。


それが目的ではないけど、それも目的である感じで。
私達はハッディさんと共に、演目の練習を毎日することに。

そこで、私の街とも違う踊りをするメンバーを見て、とても勉強になったりして。

「手の指先を、こうはねると、この瞬間に情報がもっと入ってくるから。」
とかアフルスに言われたり。
「足さばきでこの角度に足を置くとぉ、手の動きと重なってさらに情報が降りてきますよ。」
とかアントスちゃんに言われちゃったし
いろいろと教えてもらって。今まで自分の知っている技術以外の、他の踊り子が経験で得てきた話も聞けたりして。
だんだん、脳みその中も一杯になって来た感じ。


短時間で演目を覚えるのと、新しい技術の習得ですっかり疲れて。
3日目にはへとへとになって自分の宿舎に戻ったら、ヤネッシュ姉さんに食事に連れ出されちゃった。本当は部屋で寝たかったのに。

そこは夜だけ空いているショットなんだけど、来ている人はほとんど地元の人っぽい感じで私は最初気後れしちゃったけど。
ヤネッシュ姉さんが席を確保してくれて、そこでスラルジュースの入ったお酒を飲んでちょっと落ち着いて。


そこで、私が「他の踊り子達から聞いたりした、新しいしぐさ、技術も取り入れるのに頭と体を使って、疲れちゃってます。」
とこぼすと、ヤネッシュ姉さんは笑って

「何しにここに来たんだい?」
ときいてきます。

何しに?

すると、ヤネッシュ姉さんは優しく微笑んで麦のお酒を飲みながら、
「あなたがここに呼ばれてきたのは、今までのあなたの踊りが必要だったから。今回のイベントには今までのあなたが必要だったから、メンバーに選ばれてここまで来たんでしょう。新しい技術とかを自分の中に取り込めもせず、ただ焦っているあなたが必要なわけじゃないのよ。」
そう言ってくれた。

そうか、私は他の街の他の人達の技術ばかりに目が奪われて。その違いを自分との差だと思ってそれを埋めようと努力しちゃったけど。
今ここに居る人達はみんな同じ理由で集められてきていて。
そこには何の差も無いんだわ。

単に、私が他の人は私よりも知識も経験も優れている。
と思い込んでいたから、それに合わせようと無理していたのかも。

私がちょっとしょんぼりしていると、ヤネッシュ姉さんが
「誰でも、初めてこういう場所に来たらそういう気持ちになるのよ。今あなたの周りに居る踊り子だってみんな同じ状態なんだから。互いの技術、そういうものは今のうちにしっかりときいて置くことは大切。
でも、それは町に帰ってからその技術を習得すればいいもの。
今フロルがやるべきことは、今まで自分が身につけてきた技術を全力で表に出す事じゃないの?」

「そうか、そうですね。」
ヤネッシュ姉さんのおかげでかなり吹っ切れたわ。
そう、これまでの自分が身に付けた技術を出して。それでも表現できないところに来たら、他の町の人が教えてくれた、新しい技術を試してみれば良いんだわ。

頭の中の優先順位が片付いて、スッキリしちゃった。
こう言うときに、ヤネッシュ姉さんみたいな人がいてくれるのは本当にうれしい。

そして、ヤネッシュ姉さんと宿舎へと帰る途中、ヨルハンとばったり出会っちゃった。
ヤネッシュ姉さんはすぐに旦那さん(私の町のトレーナーの人)とミーティングがあるからって私達を置いて先に帰っちゃったし。
その時の目配せの意味が気になるけど。

夜の「中央」はとても神秘的な風景。

水晶の結晶がいくつも立ち並ぶ街並みに、天をつくくらいに高くて巨大な塔。
それらがぼんやりと光っていて。光るカスミがかかっている感じ。

その下には人々の生活する明りがあって。
空の星と地上の星、その間に揺らめく幻影のような姿。

ちょっとした高台でヨルハンをそれを眺めていると、ヨルハンがぽつりと

「俺、今回はなんでここに居るのかなって、思うよ。」

と言ったので、町の姿を見ながら続きを言うのを待っていると。

「いろんな人のところに行けば行くほど、自分の才能の無さを思い知らされて。自分はこういう人達と並んで仕事ができるようになるんだろうか、って不安になるよ。」
と言うの、ちょっとさっきの私とヤネッシュ姉さんの時と同じような感じでおかしくなっちゃった。

「じゃあ、ヨルハンがここにきた理由は何?」
「理由?」
「私もさっき、自分の今を見失いそうになっていたんだけど。ヤネッシュ姉さんと話していて、ここに来た理由を知ったら。急に楽になっちゃって。
だから、ヨルハンもここに来た理由を思い出せれば、きっとそんな弱気っくな考えも無くなるわよ。」

そう言って笑いかけると、ヨルハンは
「フロルは強いね。いつもそうだ。」
そう言って空を見上げて
「いつも俺の先を行っているから、いつも俺は追いつけない。」
その横顔がちょっと切なく見えて、胸の奥がちょっとうずいてくる感じがあって。

「そんなことは無いのよ。」
そう言って、私はヨルハンの背中に体を預けた。
思ったよりも広い背中。とても安心する感じ。

「こんなふうに。私は、いつもそんなヨルハンに支えられているんだから。」

ヨルハンが体を固くするのが伝わってくる。
「ヨルハンはもっと自信を持って。今ここに居る事自体が、選ばれてきたって事なんだから。」

私が体を離してそう言うと、ヨルハンは1つ頷いた。
言葉よりも、こうやって体で触れ合う事で伝わる事もある。

私達はなんて、素晴らしいものをたくさん持っているんだろう。
歌、踊り、文章、それに体。

その全部が私達を表現し、つなげてくれる。

「ちょっと踊ろうか?」
私に出来るのはこれ。
ヨルハンの手を取って、そして、妖精の町の中で。
空の星と、大地の星と、その境目の幻想の中で。





あっという間に、ついに公演の前日になっちゃった。
毎日毎日、忙しく踊りの稽古にかまけていると、今がいつなのかもわからなくなりそう。
私の町で行われる踊りは、長くても3時間くらいで終わるけど。
今回はまる一日、つまり、24時間あるってこと。
誰がこんな事考えるのかしら?
と思っちゃうけど。お祭りみたいなものだしね。
踊り子は、その最中全部踊っている分けではなくて、自分達の出番のあるところだけを踊るんだけど。
それでも半日は出番あるわね。
起きてご飯食べて、寝て。トイレ行って。
それ以外は踊るって事。

だから、きちんと向こうと繋がり、情報を下せるようになっていないとダメなのよね。

今日は半日休憩の後、最終打ち合わせ。
それから、明日の講演に備えるの。なんていったって、開始が夜中の0時だから。
とりあえず、私は寝る事にしたわ。

しばらくすると、扉をたたく音。
この扉にも圧力センサーがついているので、耳触りでないような音に変換されて部屋に響くのだけど、それで睡眠を妨害された私の不快感がなくなる分けではないの。

扉をあけると、そこにはヨルハンが。
私が不機嫌そうに見ると、
「そんな目で見ないでくれないかな。もう時間なんだよ。」
とヨルハン。ヨルハンの持っていた端末をひったくって時間を見ると、あら、もうそんな時間。
ヨルハン達は宿舎の入り口で待っている、と言う言葉を聞く前に扉を閉めて、速攻準備。
まあまあ見苦しくない程度に服装を整えておけば、あとは現場でお化粧も着替えもするから。

荷物を抱えて下に降りると、そこにはみんな揃っていて。私待ちだったみたい。
皆に誤って、そしてギャロットで会場へと移動。

黄昏時の「中央」は、赤やオレンジの太陽の光をそのまま反射して。
昼間や夜には見られない、一瞬の美しさを見せてくれていた。
だんだんと変化する色合い。
オレンジ、赤、紫。
そして、濃紺

美しい結晶の町

これからお祭りなので、街も賑やかだし。
たくさんの人が歩いている。
その様子を見て入ると、私もだんだんテンション上がってくるわ。

その様子を、ヤネッシュ姉さんにも笑われながら、私達は塔へと向かっていた。

だんだんと近づくそれは、大きな大きな空を支える柱のように見えて。
「この、塔からすべてが始まっている、と言われているのよ。」とヤネッシュ姉さん。
創世記の情報を体に下してきた時、この塔の姿が良く見えたりするって。
私はまだ無いから、今日の踊りは楽しみ。

私達はその横にある大きな神殿に入っていく。
この大きさだけで、私の町の半分くらい入りそう。

神殿には今日参加する踊り子、そのほかの人々も合わせて1000人くらい入って。最初に私達はみんなで瞑想を行った。

今日の踊りに関して。創世記の情報との繋がり。
今の自分の状態、最高の演技をしている姿。
そして、最後には全員が笑顔でいる様子。

そんなイメージも浮かんでくる。
よし、今日は大丈夫。

神殿ではそのまま、演技の流れとパート別の話になって。

少しの休憩のあと、会場である「思考の間」へと移動する。
そこでは、前日に全員で通し稽古なんかもしているので、入るのは3回目くらいかしら。
「なんだろう、この感覚?」
入ってすぐ、私の体にまとわりつくような、そんな何かの流れを強く感じるようになってしまった。
手を動かす、足を動かすたびに、私の体に何かが流れ込んでくるような感じ?
ヤネッシュ姉さんが
「今日は情報粒子の濃度を濃くしてあるから。その分、踊り子に下りてくる情報量も多くなっているのよ。」
と言われて。体がピリピリするような、そんな感じをうけてしまう。

ここでは、トレーナーの人の指導で、情報の下し方の練習を少しする。全員が同じものに繋がっていないと、踊りはちぐはぐなものになってしまうから。
この練習、面白いのはみんな同じ動きをし始めるところ。
トレーナーが降ろしてきた情報を踊り子がキャッチすると、何の打ち合わせもないのにみな同じように体を動かし始めたりして。

傍から見ているときっとたのしいのだろうなあ。と思うけど私はその最中にいると、そんな余裕はないわ。

情報とのリンクも良くなって、体を濃い流れを通りぬける感覚があって。

踊り子のチューニング終了、って感じかしら。

そして、今度は練習していたグループに分かれて、メイクと衣装合わせに行く事に。

こんなにたくさんの人が同時にメイクしている姿見るの初めて。

衣装合わせもあって、私がもらったのは青い衣装。
ゆったりとして、それでいて踊ると体の線がちゃんと見えて。
私はこれまで、青い衣装は来た事無かったんだけど、意外と似合うのね。
鏡の前でくるっとまわって確かめたりして。
同じグループでも、同じ服の色とは限らなくて。
アントスちゃんと私の2人が青、シラシットとヒラリー、カルンの3人がレモン色、 アフルスが黒。という感じ。
黒もセクシーで良いわね。

同じグループの人達と、打ち合わせみたいなものもして。
踊り子全員で一度思考の間に集合。
皆で一斉に「始まりの踊り」を舞う。

これは、不思議な事にどの町でも同じ踊り。
何かの意味があるものらしいけど、私達にとっては、これから始まる舞台を無事に終えられるように。そんな祈りの踊りでもあるの。

色とりどりの服がゆらめき、ステップと手拍子が加わって。
その場はすべてが1つになって。

その踊りが静かに終わった時、

そして、お祭りが始まるの。




静かに、ゆっくりと。
優雅な流れでスタートして。
その様子は会場に居る人達だけでなく、端末を使ってすべての町にも配信されてる。
私も去年はその様子をかぶりつくようにして見ていたけど。
今年は自分がその舞台に上がる。

それを思うだけで、なんだか緊張してきちゃうわ。

舞台の上には妖精の旋律が流れていて。それは情報粒子の流れと重なり、人の耳に聞こえる調べと、頭で受け取る聞こえない音の調べが存在して。
会場に居る人は、みんな見えない姿、聞こえない音も感じて、その踊りを鑑賞するの。
だから、端末ではこのあたりの事が伝わらないから、やっぱりこの会場にみんな入りたがるわ。

横で控えている私達にも、音が聞こえてくる。
でも、この音は情報粒子から来る音。天上からの音のような、繊細な響き。
そして、周りに流れる音楽は、弦の響きを生かした演奏。低い位置からの太い音ともあって。
周りの音とと頭の音が重なると、そこには和音が響いて。
もう頭のなかくらくらなっちゃいそう。

そして、踊りはえんえんと続けられる。
お客さんは入れ替わったりする人が多いんだけど、24時間お付き合いしてくれる人も居て。
そう言う人は体大丈夫なのか心配だわ。

そして、2回の場面移動のあと、私の出番がやってきた。

舞台の袖で、同じグループの子達と抱き合って落ち着いて。ハートの流れを良くして。

そして、いざ、

まぶしい照明。
10万人を超える人の波、
そして音、

圧倒されそうになったけど、すぐに自分のすべてをそこに出す。
笑顔、ステップ、

手にまとわりつく流れ、すべてに繋がる動き。
情報粒子から下りてくるままに、体を動かして行く。

青い衣装が揺れて、踊って。
指先で空中を弾くと、そこには角の生えた動物の姿。
足のステップを踏むと、そこには人魚の姿。
だんだんと自分の周りが創世記の世界になっていく。

翼のある存在、大地をかける存在。

風と大地と。そして、遠くに見える塔。
これは中央にある「塔」。

私は体では踊りを踊り、そのリズムとステップは今までやって来たものを忠実にやっているけど、
今見えているのは、これまでに見た事のない風景。

大地には多くの幻想世界の生き物がいて。
緑の大陸に塔が立ち。

そして、その中を私は飛んでいた。

透明な翼を広げて。

今の自分がなんで飛んでいるのかも分からずに。




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