アームとは。
この星に降り立った最初の人間であり、神話の時代。創世記を語る上で、もっとも重要な存在である。
そのころ、星の上には意識を持ち、それを他の惑星規模で広げて行く存在はいなかった。
惑星の意識と共に存在し、惑星の意識の中ですべては生まれ、育ち、子孫を残し、そして死んでいった。
意識は惑星の重力の範囲内で循環し、他の惑星と意識のつながりを持つような、そんな存在は地上にはいなかった。
地球意識は、生物の進化と共に成熟してきて。
恒温的な生物が地上を占めるようになってくると、徐々に他の惑星との意識をやり取りする存在を生み出そうとしていた。
その時、星の海より、6の星が形作る門から意識のルートが開かれた。
それは地球に新しい意識の誕生を促し、そこから新しい惑星との意識をつなげる存在が一気に誕生した。その中に、最初の人間、アームも居た。
しかし、新しい意識を持った存在は、形も姿もこれまでの地球生物とは異なるので。それらは無秩序に活動し。
他の惑星意識とのつながりはできたが、地球意識とのつながりが希薄となり。
地上の生物たちに悪い影響を及ぼすようにもなってきた。
その時、最初の人間。アームがそれらの存在をまとめて行く。
地球意識とつながり、そして宇宙意識ともつながれる、双方の特徴を持つ存在を選別しだしたのだ。
そのため、他の惑星とのつながりが強い存在は、アームへと反感を持ち、そして、アーム率いる地球意識と宇宙意識を持った存在達(サルバスト)と、他の惑星意識に強くつながっている者たち(イーヘルト)との争いが起こっていく。
人間の力では想像のつかない意識の戦いが地球でおこり、
5つの大陸で1000の存在が滅んだ。
サルバスト達は次第にイーヘルトを地球の重力外へと追いやり、地球をサルバストの星へと変えてしまった。
そして、アームはそのサルバスト達を率いて、地球各地にサルバスト達の拠点を築き。
イーヘルト達がまた戻って来ないようにと結界を張った。
アームは「光のゆりかご」を作りだし、そこでより、地球意識と宇宙意識をバランスよく体現できる存在を選別することをした。
すべてにバランスの良い巨大な個体か。
小さくとも集団で意識を分担することで、広くすべてを覆う存在か。
いろいろな方向性を考える上で、アームは、自分と同じ、すべてにおいて地球と宇宙意識とのつながりを常に持つ存在を一人選別し、そばに置いた。
それは自分と同じであり、すべてにおいて不都合は内容に見えたが。
同じであるがゆえに、何も変化がおこらなかった。
ただ、そこに存在しているだけである。
そこで、次にその自分と同じ存在に対して、反対の属性を持つ存在を作りだし、そばに置いた。
すると、それは互いに引きつけ合い、
そして、変化が多く起こった。
しかし、その新し存在(イーフ)はアームをも引き付け始めたのであった。
アームは迷った。自分が自分の作りだしたものにひきつけられるはどうしたことなのか。
そして、自分と同じ存在がイーフを奪う敵のように見えてきたのだ。
3つの存在で、いろいろな感情が表れ、そして特殊なエネルギーも生まれてきた。
仲間、愛し合う存在、敵、憎しみ合う存在。協力、不協和音、怒り、悲しみ。
アームは心の中から出てくる、あらゆる感情に揺れ動いた。
今までにない、たくさんの感情が情報として蓄積されていく。
そして、その中から、小さな1つの光を見つけた。
一つの大きな存在ではなくて。小さな多くの存在達の活動が、より強い光を発する事を。
アームは今の自分たちの情報をすべて分割し、それをすべての小さな存在に分け与え。
そして、地球へと送り出した。
それが、僕たち。
『アトランティスの民』なのだ。
アトランティスの民、
それが僕らの事を指す。
そして、すべてはアームの作りだした子孫、と言う事になっているのだが。
「ところで、これって、本当の事なの?」
とシェウを呼び出し聞いてみる。
「これは神話の話。そして、神話には、ある程度の真実と、ある程度の脚色が含まれています。
そして、神話でない部分の情報は、今あなたが見ている、この状態の事。
光のゆりかごに存在する、肉体をもったコーディネーターの事を知れば、この神話についても理解が進むと思うわよ。」
と言われた。
ならば、さっきの情報に意識を戻すことにしよう。
チューブやカプセルのつながった、光のゆりかごの中にある「公園」に今僕はいるような感じだ。グローブをつけた手で触ってみると、そのカプセルは柔らかく、そしてかすかに鼓動しているように感じた。
「ここにあるものは、すべて生物を生み出すものだから。全部あなたたちの肉体と同じ物質で作られているのよ。」
とシェウが言う。
「ということは、これ全部肉?」
僕が驚いて聞くと、
「同じ物質でも、肉とは限らないでしょう。
同じたんぱく質の合成物質せで、アミノ酸や脂肪、そういうものを使って作りだされているシステムなの。」
しかし、このようなモノから合成される、肉体をもったコーディネーターとはどういうものなのだろうか。
そして、このシステムはどういう流れで肉体を持つコーディネーターを生み出すのだろうか。
また、情報粒子を介して、このシステムの情報を引き出してみる。
またシェウにはちょっと休んでもらって。
制限のある情報なので、僕にはさわりしか見る事ができないが、
シェウに聞くよりも一瞬でやり取りが終わるので、概要をつかむのにはこちらの方が効率がいい。
光のゆりかご、中央の塔には他の星より送られてきたあらゆる「情報」が詰め込まれている。
その情報から、今の地球に最も適切と思われる数種類の生物の情報を抽出する。
その情報と、地球に居る生物の情報を集めて、それらを合成して、1つの肉体情報を作成する。
肉体情報を、1つのカプセルに保管。
カプセルにナンバーが打たれて、それは次の段階に運ばれる。
その1つのカプセルにある肉体情報をもとに、アミノ酸などから1つの肉体が合成される。
それは、地球上でも活動でき、そして、自立して地球上で増殖も可能。
そして、それは1つのカプセルにある情報と直結した存在である。
なので、この「公園」にあるだけの数の肉体が合成され、それは壁にある「区」へと送られ、そこで地球上での活動が可能かどうか、最終的な調査が行われている。
と、ここまで受け取って、
あれ?アームのような肉体をもったコーディネーターの話は?
と思って先の情報を降ろしてくる。
「コーディネーター」
はこれらは区で合成される存在とはさらに違いがあり。
1つのカプセル情報だけを持っている訳ではなく。
光のゆりかごにあるすべての情報とアクセスして、それで活動できる存在。
その肉体は公園のカプセルで情報を合成して作られるわけではなく。塔の中央にあるチューブのなかで情報は合成される。
そして、リングの公園へと情報が送りだされ、合成される。
公園に常にいて、塔の情報を受け取りながら区の存在の観察を行い。
そして、地球への旅に送り出すまでの面倒を見る。
コーディネーターはその一代限りの存在であり、老いもしない。
たいてい、1つの公園に1つの肉体をもったコーディネーターのペアが存在していて。
肉体の性能には多少の差がつけられていて、それで情報の受け取り方にわざと差異を持たせてある。
同じ個体であると、同じ情報のものにしか活動しないので、そこで変化が発生しない。
しかし、情報を受け取るのに差を作っておけば、それらは対話して、新しい活動を生み出す事が可能となる。
そして、地球へと解放する時に、二人の意見が同意しないとそれができないようにもなっている。
コーディネーターにはある程度の「個性」が与えら得れていて、しかし、その行動原理は光のゆりかごにある塔の情報が基本である。
と言う感じの情報を得る事ができた。
対話するために、わざわざ2人必要なのか。
そういえば、僕が見た過去のイメージにも、二人出てきていたな?
あれがそうなのかな?
じゃあ、あの羽をもった存在は、1つのカプセルとつながった存在ってことなのかな?
アーム、とはこのコーディネーターの事らしいけど。
神話とはちょっと違うような気もする。
どうなんだろう?
「どう?神話との違いは分かった?」
画面を戻すと、シェウが現れ、そういった。
僕は頷く。
「アーム」というのはコーディネーターの総称であって、神話のように個人を指示している訳ではないんだなあ、と言う事で。
そういえば、アームが自分と異なる性質の存在を作りだした、と神話にあるけど、それはこの場合どういう事?
と聞くと、「アーム、は公園に必ず2人いて、それは互いに異なる性質を持っています。それを神話的に書くとそうなるってことね。」
性質が異なるものが必要、と言うのはなぜ?と聞くと、
「地上に出ていく存在は、常に変化することが必要だから。そして、変化について理解を示せるのは、自ら変化をするものだけだから。
コーディネーターはより地上の存在と近い関係を持てないといけないのよ。でないと観察して、それが考える内容が理解できないから。
あなたも基本的にはそうでしょう?ペアと過ごす事で新しい自分を見つけたり。いろんな事考えたり。」
確かにそうだ、ヤーフルは僕と違って直感型なので。
話していると訳の分からない事をたまに言いはじめるけど、それが僕には刺激になっていたりする。
困る事もおおいけど。
そうか、ペア、という概念はこんなに初期のころからあったんだなあ。
でも、僕が羽のある存在の時見えたアームは、2人の男性のように見えたけど。
僕は、ちょっと記憶を思い出して。カプセルに入った羽のある存在の事を情報粒子で伝えてみた。
すると、シェウが
「このような記録は、残念ながらここで君は見る事はできないわよ。すでに制限かかっているもの。」
「え、じゃあ、ここに来たの意味ないじゃないか。」
「でも、あなたのその別の生は、明らかにこの「光のゆりかご」での体験みたいだから。こんどはそのあたりで探してみたら?」
「羽のある存在とか、初期に地上に出て行った存在とかの情報は見られないの?」
「その概要は見られるわよ。初期の地上の様子、みたい?」
「それじゃあ、その風景を見せて。」
と言うと、とたんに僕の周囲の風景が変化した。
最初には青い海から視界が走り出す。
海の中からは何かが飛びあがっていたり、泳ぎ回っている姿が見えた。
それは半分人間、半分魚のような形をした存在。人魚だ。
人魚が海を泳いでいる姿を見ながら、そのまま僕は陸上へと移動する。
海岸を走る、半馬半人の存在。
そして、獣のような足と角を持つ存在が大地を駆け回り、空には翼をもった存在が鳥と共に空を舞う。
そんな中に、透明の翼をもった存在もちらっと見えた。
そこに視界を持って行こうとしたが、この映像は自動的に流れるものなので、僕の意識は優先されない。
映像はそのまま光のゆりかごへと戻り、公園の中へと入っていく。
「どう?今の地上は。」
「あんなにさまざまな存在がいたら、地上はよけいに混乱するんじゃないの?」
「どのパターンが一番最適なのか。それを調べる事も必要なの。」
結局、神話の世界で言われていた事は、ある程度本当の事であって。
そこにあるエッセンスは事実を含んでいるのだな、と言う事を理解することができたけど。
「結局、僕のみた過去の生にかんする情報を詳しく知るには、どうすればいいのかな?」
「情報粒子を使う場合は、年齢に沿った制限があるから。生きていればすべて理解できるようになっているわよ。」
「今知りたいんだけど。」
「ならば、芸術などから得られる、「宇宙の書庫」からの情報断片から自分で調べてみたら?」
「芸術が宇宙の書庫につながっているの?」
「あなたたちの意識は、常に宇宙の書庫と地球の意識につながっていますから。意識すればそれは受け取ることはできるのよ。」
「どうすれば?」
「それは自分で見つけ出してね。人それぞれなんだから。」
「僕に合うやり方とかないの?」
「私は図書館の情報であって、あなた個人の情報ではないので。あなたに何が合うかまでは教えてあげられないわ。」
「じゃあ、宇宙の書庫とアクセスするやり方はどれくらいあるの?」
と言ったら、目の前の映像がすべて文字で埋め尽くされた。
「これくらい。」
シェウが手を広げて示してくれたけど。
正直、今読める感じではない。
こんなにいろんな手法があるのか。
「人それぞれ、あなた自身でいろいろと見つけてみることね。」
と言う感じで。本来の目的に関してはあまり情報も得られず。シェウと分かれてカプセルの画像をもとに戻した。
僕は今回の情報を収めた端子をくぼみから取り外し、胸当てに収める。
まあ、家に帰ってから考えよう。って事で。
図書館から出ると、太陽もだいぶ上にか上がっている。
情報粒子でのやり取りがほとんどだったので、図書館に居た時間はそれほど長くない。
さて、そろそろ午後の施設見学がある。どこか途中で食事をしてから行こうか。
と思っていると、向こうに手を振っている誰かの姿が見えた。
手をかざして見ると、情報粒子が相手の情報を伝えてくる。
あれはヤーフルだ。
なんでここに居るのが分かったんだ?
ヤーフルが駆け寄ってきた。
「カシェットからきいたんだ、君がここに居るって。」
なるほど。
「で、ヤーフルも調べ物?」
「そんなことしないよ。図書館は息がつまりそうだもの。」
そう言って、眉をひそめる。
「じゃあ、何しにここに?」
「君とごはんでも食べに行きたいな、と思って。」
ぱっと表情が、花が開くように変化した。
いつもながら、分かりやすい。
そうだな、こんな感じで、僕とは違う雰囲気を持っている。だから、ペアになるのかな、なんてふっと思った。
わざわざ食事をするためにココまで来てくれた事で、僕もちょっと嬉しかった。
「じゃあ、どこかのショットにはいろうか。」
シェウの言うとおりだ。図書館で調べ物をして学ぶよりも、僕はヤーフルとちょっと会話うぃするだけで、たくさんの体験ができそうだ。
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