まるの日<へミシンクとミディアムな暮らし> まるの日圭(真名圭史)の公式サイト

ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

ちょっと童話でも

2009-07-01 19:49:19 | インポート


これは、以前私が「ねこの手帳」に送りつけた童話です。まあ、残念ながら、次回頑張ってね的な表現でちょこっとタイトルだけ載った作品です。
なので、ここで公開してもまあ、問題ないかな、と。

まあ、こういうちょっとくだらない話でも読んで、ほわっとしてもらえればと思います。
ラストシーンは私の頭にイメージが浮かんでいて、それを元に書いた作品ですね。まあ、文章がまだ稚拙な頃ですので、そのあたりは大目に見てくださいね。
なんとなく、載せてみたくなりましたので。




【みかんねことヒヨドリかあさん】                 まるの日圭作

 ある小さな町に、みかん色の毛皮をした大きな猫が住んでいました。
この猫は普通の猫たちとちょっと違っていて、果物だけしか食べないのです。なかでもミカンが大好物なのです。
他の猫たちが鳥やネズミを追いかけている間、この猫は八百屋の前で、果物をもらっています。だからこの猫を、みんな『ミカン猫』と呼んでいました。
ミカン猫はいつも他の猫にからかわれていました。だって、体は大きいのに、縄張り争いにも参加しませんし、猫の集会にも来ないのです。だからミカン猫はいつも一人でした。
ミカン猫は、今日も八百屋に向かいました。ところが今日はお店がお休みのようです。ミカン猫は仕方なく、町の外れに向かいました。町中は他の猫の縄張りなので、見つかると追いかけられるからです。それに、町の外れにはそろそろ野イチゴが実っている頃です。
ミカン猫が久しぶりに町外れに来ると、そこには新しい家が建っていました。庭には、木がたくさん植えてあり、花もたくさん咲いています。しかもブルーベリーやジューンベリーなど果物のなる木が植えてあります。でも今は春なので、まだ実はなっていません。ミカン猫は他に果物の実っている木は無いかと探してみました。すると、木の枝にミカンがさしてありました。
「む、あれは、このあたりでは滅多にお目にかかれないデコポンではないか。」
 ミカン好きのミカン猫は、普通はなかなか口にできないデコポンを発見し、喜んで近づいて行きました。そのミカンが刺してある場所は、どうも野鳥の餌台のようです。この家の持ち主が野鳥を呼ぶために作ったのでしょう。でもミカン猫にはそんな事は関係ありません。大きい体のわりには軽い動きで餌台にひょいっと飛び乗りました。
すると、そこには先客がいました。美味しそうにミカンを食べていたヒヨドリは、突然大きな猫が現れたので、びっくりして固まっています。自分が食べられると思っているみたいで、羽を膨らませて震えはじめました。
 ミカン猫はその様子を気にもせず、前足でヒヨドリをそっとどかすと、枝に刺さっているデコポンを美味しそうに食べ始めました。
 ヒヨドリはしばらくは、ぽかんと口をあけてその様子を見ていましたが、餌を横取りされたことに気が付いて、
 「ちょっと、あんた!ここは私が先に目をつけてたところよ。後からきてなに横取りしているのよ。」
頭の羽毛を逆立てて、大声で叫びました。
ミカン猫はじろっと見て、
「僕はデコポンが大好きなんだ。少しくらい分けてくれてもいいだろう。」
「あんた猫のくせにミカンなんか食べるの?」
「うん、大好きさ。君は空が飛べるんだろう?椿でも梅でも花の蜜を吸いに行けばいいじゃないか。」
 すると、ヒヨドリは羽を広げて見せて、
「私は今、羽を痛めていて、うまく飛べないの。だからこの餌台にしか来られないのよ。ちょっと、私の話を聞きなさい。」
 ミカン猫はデコポンの皮を舐めながら、ヒヨドリの話を聞いていました。
 ヒヨドリは、自分には4羽の子供がいて、そのためにもたくさん餌が必要だと。だからこの餌台は必要だと言う事を一生懸命ミカン猫に話して聞かせました。
「あんたもいい年だから子供の一匹や二匹いるだろう。ならば私の気持もわかるでしょう?」
すると、ミカン猫は、食べ終わった皮をぽいっと捨てて、餌台から飛び降りました。ヒヨドリに振り向いて、
「僕は変わり者だから奥さんはいないし、子供もいないよ。でも分かったよ。今日はご馳走様。今度来る時はかわりに何か持ってくるよ。」
 ヒヨドリはミカン猫が去って行くのを眺めていました。そして、世の中には変わった猫がいるものだと、つぶやいてから、子供達の元へとよたよたと帰ってゆきました。
 次の日、ほんとうにミカン猫はミカンをお土産に持ってきました。
「八百屋からもらった傷物のウンシュウミカンだ。2個あるからあげるよ。」
 ヒヨドリ母さんはまさかほんとうに持ってくるとは思っていなかったのでびっくりしましたが、ありがたく2個とももらいました。
 次の日から、ミカン猫は毎日のようにりんごやらミカンやら傷物の果物を持ってきてはヒヨドリ母さんにあげて、代わりに餌台に刺さっているデコポンを食べるのでした。
「なんでこの餌台にわざわざくるの?」
ある日、ヒヨドリ母さんが尋ねました。すると、ミカン猫は、
「この庭にはデコポンが刺さっているだろう。僕はミカンの中でもデコポンが大好きなんだ。八百屋じゃなかなかくれないからね。」
 ミカン猫が餌台にやってくるようになってから、他の猫は近づいてきませんし、カラスも来ないので、ヒヨドリ母さんはゆっくりと落ち着いて食事ができるのでした。
 ある日、またまたミカン猫がりんごを咥えてやってくると、餌台に雛鳥が4羽止まっていました。ヒヨドリ母さんも並んで猫を待っています。雛鳥が巣立ちしたようです。
 ミカン猫は挨拶をして、りんごを差し出しました。
「これは、今日は家族勢ぞろいかい?」
すると、雛鳥達が、大きな声で、
「ミカン猫さん、ありがとうございました。」
とお礼を言ったのです。ミカン猫は驚いてヒヨドリ母さんを見ました。ヒヨドリ母さんは頭の羽毛を動かしながら、
「この子達が立派に育ったのもあんたのおかげだよ。ありがとう。」
ミカン猫はにっと笑って、
「僕はデコポンを食べにきていただけさ。」
そう言って餌台に飛び乗り、デコポンを咥えました。
「私もねえ、羽の調子もだいぶ良くなってきたし、桜も咲き始めて、花の蜜が美味しい時期だから、そろそろこの庭からおいとましようかと思ってね。それであんたに挨拶しておこうと思ってさ。」
 ヒヨドリ母さんはミカン猫に言いました。ミカン猫は一言、
「そう、じゃあ元気で。僕を見かけたら気軽に声でもかけてよ。」
 二匹が話をしていると、家のほうから二人の人間が出てきました。一人は白髪頭のおじさん、もう一人は若い女の人です。なにやらミカン猫を指差しながら近づいてきます。ヒヨドリは逃げてしまいましたが、ミカン猫は餌台に乗っかり、ゆうゆうとデコポンを食べています。
「ほら、見て、おじさん。これが最近庭にくるミカンを食べる猫なの。」
「ほう、ほんとうにミカンを食っているな。」
そう言って、おじさんは慣れた手つきでミカン猫の喉をなでてきました。ミカン猫は抵抗もせず、撫でられています。
「どうだ、お前は私のデコポン園にこないか?鳥を追い払ってくれればデコポン食べ放題だぞ。」
ミカン猫はその話を聞いて、喉を鳴らして擦り寄って行きました。デコポン食べ放題とは素晴らしい話です。女の人がミカン猫の頭を撫でながら、
「おじさんところの猫が、去年死んじゃったから、あんたおじさん所に行きなさいよ。ミカン食べる猫なんておじさんのところにぴったりだわ。」
 ミカン猫は、喉を鳴らして答えました。
 ミカン猫はその日、そのおじさんに連れられて、南のデコポン園へ連れて行かれました。
 電線でこの話を聞いていたヒヨドリ親子は、
「南に行くんだって。」
「僕らも冬になったら南に行くから、そのときに遊びにいってみようか。」
 子供達はそんな話をしていました。
 そして、デコポンが実る季節。ミカン猫はデコポン園の見回りをしていました。
ここに連れてこられて以来、昼間はデコポン園に近づく鳥を追い払い、夜はおじさんの家でたくさんデコポンを食べるような、ミカン猫は夢のような生活を送っています。だから最近、毛並みがさらにミカン色になってきているようです。
 夜のデコポンを楽しみに、今日もデコポン園に近づく鳥を追い払いにパトロールをしていると、4羽のヒヨドリが近づいてくるのが見えました。ミカン猫は威嚇の声をあげようと身構えます。すると、
「おーいミカン猫さーん。」
聞き覚えのある声で呼ばれました。よく見ると、春に出会ったヒヨドリ母さんの子供達です。
ミカン猫と4羽のヒヨドリはミカン猫が持ってきたデコポンを食べながら、いろいろ話をしました。ヒヨドリ母さんはまだ山に残っているそうで、子供だけ、先に南へ来たそうです。
「いつまでいるの?」
ミカン猫が聞くと、
「お嫁さんがみつかるまでいるかな。居心地が良ければこのまま住むかも。」
 それから度々、ヒヨドリたちはミカン猫の元に遊びに来ました。ミカン猫もデコポンを準備して、待っています。
 そして、翌年の春、れんげ草がデコポン園に咲き乱れる頃、ヒヨドリ兄弟は結婚して、デコポン園に住み着きました。ミカン猫はまた、ヒヨドリたちが巣立つまで、見守る事になりそうです。








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10 コメント

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皆様、ご感想ありがとうございます。 (marunohi)
2009-07-02 20:36:40
このようにたくさんいただけるとは思ってもいませんでした(笑)。

この作品は、2年くらい前に書いたもので、かなり初期の作品です。
原稿用紙の枚数指定があるので、ちょっと後半急ぎ足ですが。
ヘミシンクし始めた頃の作品でして、このなかで生まれ変わり的な思想を込められればなあ、という感じで書いているものですね。

まあ、きほん、ほのぼの系ですので、読み終わって、ほわっとなってもらえればいいかな、という事で。

ちなみに、子供のヒヨドリ達は、みかんネコからもらうデコポンで生活していくみたいですので。
それと、子育ての時は虫を取ってきますので、果樹園の害虫退治にも役立つという設定もあったりします。
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Unknown (Anna)
2009-07-02 11:27:34
猫ネタ反応しちゃいます。うちも餌台設置してます。ヒヨドリがきだすと他の小鳥は来なくなっちゃいますね。鳥さんたちは果物大好き!飼い猫も若くて元気だと餌台の鳥を狙いますが、老猫はただ窓から眺めるだけで、その後姿(猫の)が笑えます~。
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まるさん、おはようございます。 (wingmakers.m)
2009-07-02 06:36:39
素敵なお話、聞かせていただきましてありがとうございます。
ごく普通に見える、なにげない自然の営みの中に、愛があるのでしょうね。
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Unknown (パパゲーノ)
2009-07-02 00:17:20
私、実は、鳥好きです。巣から落ちたヒヨドリのヒナも、2羽、拾って育てたことがあります。かごに入れてベランダに置くと、お母さんがいろんな餌を運んできました。巣立たせた時は、本当に寂しくて涙、涙でした。 このお話でも、ミカン猫がどっか遠い所に行っちゃうの~?と、一瞬、悲しかったけど、なんとヒヨドリが渡って来ちゃうわけですね。なるほど!!と嬉しくなりました。 でも、fifafinalさんのご指摘どおり、言われてみると、確かに、果樹園で鳥追いのネコ飼ってる意味がないかも?!ですが・・・。
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ほのぼのですね~ (makomax)
2009-07-01 22:22:58
輪廻というか、繰り返される「生」がそこにあります。

「女の子」がルリカさんに見えるのは気のせいかしら。
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 連投失礼します。 (MUNE)
2009-07-01 22:14:32
 この作品は、ラストシーンが圭さんの頭にあってそれをもとに作られたものなのですよね。
 私は感受性が足りなくてそのラストシーンの感慨をはじめに読んだときには感じ取れなかったようです。
 もう一度読むと、最後の2文で語られた内容がすごくいとおしく感じられました。
 最近の刺激の強い映画ばかり見ている私に、この作品は感受性の必要性を感じさせてくれました。
 どうもありがとうございます。
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昨日も猫の話題がちらっと出ていましたが、今日も猫さんの話なので釣られてきました。 (こんにちは)
2009-07-01 21:30:27
お話の批評云々はできませんけど、ストーリーは人生をあらわしているように感じました。
ドラマチックなこともあれば、平凡な何気ないこともありです。
それを不満に思うか幸せに感じるかは人それぞれの感覚ですから。

ご自分の作品をくだらないと言わないでくださいね。

猫がいる生活では何気ないことがストーリーになっていたり、なってなかったり・・・。
猫飼い初心者ですけど、毎日ブログで猫様との日々をつづっておりますので、今度コメントなどいただけるとうれしいです。
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こんばんわ・・・ (なおぽん(naoponpon))
2009-07-01 21:30:02
ほのぼのしました(*^_^*)
いつもありがとうございます。

吸い込まれるように読みました(*^_^*)
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 圭さんこんばんは。 (MUNE)
2009-07-01 20:34:59
 ほのぼのした暖かい雰囲気のある作品ですね。私も締めにもう一つ何か欲しいような感じがしました。とても感じのいい作品なので最近の作品もぜひ読んでみたいです。
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なかなかおもしろかったですよ! (迷走者)
2009-07-01 20:19:33
みかん猫のライフスタイルは、私に近いカモ(笑)
ただ、オチというか締めが弱いような気がします
(ごめんなさい)
ブログでは、心に残るフレーズが多々あるのですから、なにかその様な余韻を意識して創作されれば良いような気がします。

素人が評論してすいません(^o^)/~
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