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ネコ20匹を世話するため、本を書いたりバイク乗ったり。見えない世界ととその狭間を見ながら日常を生活する一人の男の物語。

アトランティスの記憶<後期アトランティス 7 >

2013-02-21 11:41:24 | 『日常』



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・創世記 アトランティス




あの時に襲いかかって来た人はなんだったんだろう。
私はそれを考えていた。自分の場所?
意味が分からない。
世界はこんなに広いのに。
自分で場所を作らないといけないのかしら?
それとも、あの温かな世界から出たら、何処かに自分の場所があるのかしら?
誰も教えてくれなかったし。
私はどうしよう。

森を抜け、草原にでると。
そこには半獣半人のような存在がたくさんいた。

鋭い牙と爪をもって。まるで人間と豹が合体したような存在が群れを作って走っている。
その先には、細いカモシカのような足を持った存在が、3人走っていた。

何をしているんだろう?
カモシカ足の人は必至で逃げているように見える。一方豹人間はそれを追いかけていて。
さっきの場面がよみがえる。
地面にたたきつけられた後に覆いかぶさった黒い影。
食べられる!

私はそのカモシカ足の人達のところに飛んだ。
彼らは驚いていたけど、私の言うとおりに逃げるよう教えてあげる。
上からみればどこに逃げればいいか一目瞭然だし。

右に見える岩場のほうへと誘導する。
その間、私が豹人間のところに行って、気を引いてみて。

案の定、この人達頭悪そうなんで、私に向かって飛びかかって来たわ。
空飛ぶ存在に当たるわけないのに。

そうこうしているうちに、カモシカ足の人達は岩場に行けたみたい。
豹人間は獲物を逃して、機嫌悪そうになにか叫んで戻って行ったわ。


さっきのカモシカ足の人のところに行くと、どうやら二人が女の子みたいで、一人は男みたい。

「危ないところだったわね。」
と私が話しかけると
「アリガトウ、ソウアイツラハイツモオレタチヲネラウ」
と片言の言葉で返してきた。口の作りがしゃべるのに向いてないのかも。

しばらく話を聞くと、私と同じようにいきなり外に出されたみたい。
ただ、彼らは3人一組で出されたみたいで、私みたいに一人ぼっちじゃないからいいなあ。と思ってしまった。

私はしばらく、彼らと行動を共にすることにした。
おなかが空くと、果物や食べられそうな草を食べて。
当ても無く草原を移動して。

馬の脚をもつ人達の群れとも遭遇したけど。彼らは私達に何も興味を示さなかった。
一目見て、自分たちの仲間でないとわかるとさっさと走り去ってしまったから。
その先には馬の脚をもつ人の集落があって。
そこに屋根のある家を作って暮らしていた。

子供と女が柵で囲まれた集落の中に居て。
槍や武器を持った男たちが外を見張っていて。

その集落の周囲を、たまに走って群れで危険を排除しようとしている感じ。

ここでも縄張り。自分の場所作りに一生懸命。
なんで、こんなに自分の場所を作りたがるのかな。

寂しいから?

でも仲間がいるなら良いじゃない。

と私は思う。私は一人ぼっち。
カモシカ足の人とは仲良くなったけど、でも、彼らは違うから。

彼と彼女たちが、腰を合わせて振っているところを何度か見た事がある。
互いに何かを通じ合わせているような。

私にはあれが良く分からない。
何をしているのだろう。何かのコミュニケーション?
互いに何かの絶頂を迎え、そしてその行為は終わる。

そこに私は入れない。

私は一人なんだ。

なんとなく空を見上げると、青い空が広がって、
そこに別の、翼をもつ存在がそらを舞っているのに気が付いた。
同じ、空を飛ぶモノなら仲間になれるかも。

私はカモシカ足の人達と分かれて。そして空へと舞った。


空の高いところに、その人達は居た。
雲の間を舞って、風に乗り。

私の非力な羽ではとても届かないような高い、高い空を舞っている。
凄い人達。
何十人も隊列を組んで飛んでいる。

私が興味を持ってちかづいて行くと、その中の一人がスーッと近づいてきた。
私の姿をじろじろと見る。

「あなた、そんな姿で空を飛ぼうと思っているの?ひ弱な羽に、細い体。
そんなんじゃ私達についてこれないわ。」

険しい顔をした女の人。肩からは力強い羽が生えていて。私みたいに腕があるところには何もない。
体も半分は羽毛に覆われていて、顔は私みたいな感じだけど、ちょっと口が大きい感じ。
体つきも大きくて、私よりもふたまわりくらい違う。

「あなた達はどこに居るの?」
と私が聞くと、何か妙な質問を聞いたような顔をして。
「ここに居るに決まっているじゃない。」
「そうじゃなくて、どこに住んでいるの?」
「私達は一定の場所に住んで無いわ。気が向くままに飛んで、旅しているだけ。」
「たのしそうね。」
と私が言うと、気を悪くしたようで。
「私達だって、一定の場所に住みたいよ。でも、地上は獣の足のあるモノ達に占領されていっるから。私達はそいつらの居ない場所にねぐらを取って。いつもは空で生活するしかないの。」
「ご飯は?」
「下りてからに決まっているじゃない。」
「何を食べるの?」
「あんたみたいな弱い奴。」
と言ってその人はニヤッと笑った。すると、口の端に鋭い牙が見える。足には確かに鋭い爪が生えているし。
ぞっとして、つい離れようとすると、その人は笑って、
「安心しな、生きている獲物は食べないよ。死んだ奴らと、死にそうな奴らを食べるのさ。」
そう言って、また牙を出して笑っている。
怖い、この人達ちょっと怖い。

キーっと鋭い声が聞こえてきた。すると、その女の人は上を見上げて、さっきの群れを見る。
「どうやら、食事の時間のようだ。あんたも来るかい?」
私は首を横に振った。
「ははは、あんたも群れに帰りな、一人だとすぐにやられちゃうよ。」
そう言って、その人は群れのところに戻っていった。

群れか。
他の人達を見ると、みんな、群れとか、複数で暮らしているような気がする。
なんで、私は一人なんだろう?

下を見ると、そこは地球のはて。海が見える。
海にも、人は住んでいて。
上から見ると、魚の人達が楽しそうに泳いでいる。
あの人達も仲間がいるし。

最初に私に襲いかかって来た人も、他に仲間がいた。
その人が獣に襲われている時に、仲間の人達が集まってきていたから。
たぶん間に合わなかったと思うけど、そうやって助けに来てくれる人がいるだけでも羨ましいと思った。

遠くに見える海の向こうには、私の住む場所もあるんだろうか?

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・ショット〈 初期アトランティス 〉


「ふうん、そういう風になっていたんだ。」
ヤーフルが興味深そうに僕のほうを見る。
「私は君と違って、そういう広い世界での記憶が無いからなぁ。部屋の中にこもってばっかりだもの。そんな幻想的な生き物たちと共に空を飛ぶって、とても良い経験だよね。」
羨ましそうにそう言うけど
「実際にその場に居るような気持ちになってごらん。そんな気持ちいとかまったくないから。」
「そう?」
情報粒子で同じもの見せてあげたのに。ヤーフルにとっては人の話なんで気軽に見れるのだろう。

ヤーフルと僕は、またショットに来ている。
と言っても、前回から数カ月は経っているかも。だんだんと社会の成り立ちの勉強に入ってくるので、ちょっと覚える事が多くなって時間が撮りにくくなていたから。

「ところで、昨日の勉強で行った神殿。それがフロルの時代はなんか違うものになっている感じ?」
とヤーフルは僕の情報を読みながら言う。この話は後期アトランティスの時の話だ。
さっきは創世記、今度は後期、と意識があっちこっちに行くので情報粒子で接続しておかないと、互いの話が通じなくなるところだ。

塔の横にある神殿。
そこは町、もしくはアトランティスのすべての政治的なものをつかさどる場所で。
大陸中にあるすべての町とのやり取り、情報粒子の接続を行っている。
だから、ここに来ると、すべての町、大陸の様子を知ることができて。
同じ情報を大陸中の人に送ることができる。

そこを昨日見学にいったけど。
広い場所に、何千人と青い服を着た人達が並んでいて。
そこで情報粒子に接続して町とのやり取りをしている。
みんなバンダナを使用していなくて、博物館なんかにあるカプセルに入っているので、ここはまるで透明の卵が並ぶ、人間の製造工場みたいな、不思議な感じに見えてしまう。
創世記の記憶に見た、「抽出される存在」が脳裏をよぎった。

一面に広がるカプセルと、その間を動く人々。
ここでは個人のバンダナでの接続は禁止されている。
あまりにも情報量が多すぎて、慣れないと拾いすぎて頭がパンクしてしまうから。
このように情報が多く集まる場所は、情報にそれぞれ指向性を持たせているという事。

科学的な情報は、このエリアにいる人達が見て。
生活的な情報は、ここの人達が見る。
そして、その中でのそれぞれに分けてあったりして。

情報粒子に指向性を持たせるのと、それを小分けに分類して収集することができる、というのをはじめて理解できた。

ここはまるで、脳内の神経回路がそのまま現実化しているような場所に見える。
アトランティスの頭脳。

情報が飛び交い、思考が促進される。
では、この大陸の「意識」はどこにあって、意思決定はどうなっているのだろう?

ちょっと気になったのが、シルバーコートを着た人物がその間を歩いていた事。
ヒトヲメンバー?

それがどうしてここにいるんだろうか?
粒子を使う場所には必ずいるのかな?

「そんな、勉強の話よりも、創世記の世界をもっと見せてよ。」
ヤーフルはそう言ってちょっと膨れてみせる。
僕の思考を情報粒子で見たんだな、
「人の考えを覗くなんて。」
「君と私の仲だから、いいじゃない。」
そう言って、ヤーフルはにっこりと笑った。

その笑顔で、創世記の孤独な気分は一気に吹っ飛んだ。

「それで?僕が外で孤独を味わってた時に、ヤーフルはどうしてたの?」
すると、ヤーフルは情報を選んで僕に流してきた。

そこには、研究室のようなところで、何かの画面のようなところにいて。
一生懸命何かを探しているようにみえた。

「こうやって、私のほうは君を探していたんだよ。」
「どうやって探すの?」

ときくと、その情報を僕に送ってくれる。
情報を見ると、
「抽出された存在」達には特定の意識パターンがあるので。その意識パターンを知っていれば、いくら遠くに離れても、肉体を持っている以上は発見できるのだとか。
もしも肉体が無くなったらどうなるんだろう?
と思って聞くと、新しい情報を送ってくれる。

抽出された存在は、肉体を失うと情報に戻る。
多数の情報と共に存在することになるので、肉体を持っている時の意識パターンとは異なるものになるらしい。
見せてくれたのが、植物のイメージ。

木の葉、の意識と。木の意識は異なっているという事。
木の葉、は自分の木の葉の範囲の情報と生命活動を仕切っていて、落葉するときに自分の死を思うが、その葉の情報は木にすでに存在している。
葉が存在している時も、木には葉の情報はすでにあるのに、葉があるときは葉の情報が目に見える形で存在しているので、そちらを意識しやすい。

なんとなくわかるたとえだけど、なんとなく分かりにくい話でもあるね。
「つまり、葉っぱはすぐに見つけられるけど、その葉っぱが落ちた後に、その葉っぱの事を知ろうとしたら、木の情報を解析しないといけないから。
すっごい面倒になるってこと。」
とヤーフルの簡単説明。
なるほど、分かりやすいといえば分かりやすい。

その、生存しているスーべロスを探すのに、なんでそんなに時間かかってんの?と僕が聞くと、ヤーフルはちょっと怒ったように。
「君はそこにある木の葉っぱの中から、特定の一枚をすぐに見つけられるかい?」
確かに、それは時間がかかりそうだ。

「じゃあ、僕のほうの話ばかりでなくて、ヤーフルのほうの話もしてよ。」
「ヨルハンの事?」
「そんなのよりも、創世記の話だろう。」
「そんなのって失礼だな。後期では君のほうがちょっと上から目線だからって良い気になっているんだろう。」
ヤーフルがまた、みょうな理屈を出してくる。
まあ、これはカラかっているようなものだし。

「そのバランスをとるのにも、創世記の話を見せてよ。」
と僕が言うと、
「スラルのジュースを頼んでくれたらね。」
と笑顔で言われてしまった。
時代を超えても、このジュースは存在しているんだなあ。
とちょっと面白く思えた。






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