学校は、当たり前だが男ばかり。
僕の学年は5クラス居て、一クラス10人くらい。
その小単位で行動する感じになっている。
教室は分かれている訳ではなくて。大きな広い建物の「部屋」なかに、それぞれのグループが机とネットワークを使って島を作って点在している感じなので。他のクラスの男子とも顔はしょっちゅう合わせている。
授業用の一単位が「クラス」という感じで。
僕が部屋に入ると、先に来ていたシェラットが声をかけてきた。
これは僕と違うクラスの男なのだが、第一学校時代は同じ集落にいたのでそれからの腐れ縁でもある。今は同じ集落ではなくて、親の都合で2ブロック先の地域へ移動している。
「いいなぁ、お前、セティファムと仲良くて。」
僕が席に着くと、そんな事を言って来る。動く道でのやり取りを見てたのか。
とはいえ、別にやましい事はしてないので。僕もさらっと答える。
「同じグループになったからね。」
僕の机に腰をおろして、
「俺なんか、一緒のグループになってもそんなに話したりできなかったぞ。」
「それは、シェラ(シェラットの事を僕はこう呼ぶ)が話しかけないからだよ。」
「なんか、下ごころあると思われると嫌じゃないか。」
「有るから、そう思うんだよ。」
なんて会話をして、机の上にあるシェラの尻を端末の角で押しやって。
今日ある授業の話などをしていた。
同じ部屋に居るとはいえ、授業の内容は毎日違っていて。
そのクラス独特の授業内容が組まれている。このクラスというのも、何か個人の特性ごとに集めてあるような感じなので。
ちょっと似たような雰囲気の人が集まっていたりするのだけど。
僕のクラスは、なぜか微妙な性格のキャラクターが多いような気もする。シェラのとこはみんな気の良いやつらが多いから、人々を導く方向に行くクラスなのかもしれない。
僕らのほうは技術者っぽいかな。
クラスはそのまま、将来の仕事に関係してくる場合も多かったりする。
もしくは、すべてのクラスを体験するような人もいる。
毎年クラス替えは有るのだけど、まったく動かない人と、しょっちゅう動く人といるからね。
ちなみに、僕は全く動かない。
しばらくして始まりの音が聞こえてくる。
それからはそれぞれのクラスで、今日の授業についてのディスカッションが行われる。
先生は僕らのディスカッションが終わってからしか来ない。
先に自分たちで「今日やる事」を決めてから、それを導くように先生が動いてくれる感じ。
今月の流れ、とか今年の流れ、とかがあって。それに従って計画を立てて、自分たちでそれを動かしていく。
第2学校からはそういうやり方がメインであって、第一学校のように先生の授業に従う感じではないかな。
僕らのクラスは、女子のクラスとグループ討議の場を設けていて。今日はそれが行われるので、朝セティファムとその話をしていたのだった。
これは、各クラスそれぞれに女子のクラスとグループを作るようになっていて。
今回僕らはセティファムのいるクラスとたまたま同じになっている、という感じ。
シェラ達はまた、別の女子クラスと一緒に同じような事をしている。
このグループ討議は、月末(太陽を地球が一週するのを一年、それを6に分けたのが「ひと月」というイメージです。)には発表会等もあるので。それに向けての内容詰めを今日のメインとしていく感じ。
なにせ、僕のクラスは思考の偏りがちな人が多いので。
同じテーマでも内容も見方も全く違う路線が多く出てきて話しにまとまりがつきにくいところが難点だ。
つまり、協調性があまりないクラスとも言う。
これはこれで、新しい発見あるんだけどね。
でも、討議の時間がいつもギリギリまで盛り上がるので、先生が入ってくるまでに終わった試しは無い。
なので、今回も僕らのクラス担当のセデック先生が来ても、まだ話していたので。
セデック先生が入って導くことでやっと終わった。
最初はこの国の仕組みについての話を先生が行って。
それから自主活動に入っていく。
セデック先生は肩までの髪の毛を持った、僕らより倍くらい年を重ねた女性。
黒髪のすこしやせ気味で。ハッキリとした目つきをした意思の強そうな先生。
男子の方には女性の先生が多くて。女子のほうには男性の先生が多い。
これも何かのバランスを取るためだというけど、僕には良く分からない。
みんなそれぞれにメモと情報を得るための端末と、紙媒体の資料を引っ張り出して話を聞く。端末は直接脳波にもつなげるアタッチメントがあるので、それを頭にセットして授業を受ける。
同じ部屋で他のクラスも別々に授業が行われているけど、端末と頭にセットしたアタッチメントで他のクラスの音はほとんど聞こえてこないから。
端末に地図と国のシンボルが表示される。
三角と四角の複雑な組み合わせで示されたシンボルは、その昔、僕らの先祖がこの地を作り上げた時に、その力を表現するシンボルだと言う。
僕らの居る街は国の西側にあって、そこは農業の盛んな地域。
もう少し西に行くと海産物の豊富な地域にいくけど、その手前に広がる肥沃な大平原で農業がおこなわれている。
僕の住む集落からこの町まで、畑しかないからね。
ここで、大陸全土の穀類を生産しているという話。
東側に行くと、それぞれにまた特色のある地域が出てきて。
政治の中枢、経済の中枢。
そして、惑星全体と、宇宙との交流を行っている地域も存在する。
僕らの住むところには他の星の人なんか見かけないから。一度そういうところに行ってみたいな、と思うところ。
そういう、現在の地域による産業の違いは前回からのおさらいで。
今日からは、その「この国が出来た」時の話を聞く事になっていた。
この国は、もともと地球上にあった国ではなくて。
宇宙と惑星意識を結びつける存在の抽出を、「塔」と「リング」呼ばれる場所で行っていた頃、
そこに存在した「抽出された存在」達とそれを作りだした存在達「アーム」が居て。
塔とリングを中心に、1つの宇宙意識と地球意識を結ぶ形が作られ、その地域は閉鎖的な特定の情報共有転生システムを作り上げた。
26の存在が塔とリングを支配したため、その支配の形に同調できない「アーム」達は新たな自分達の形をつくるために、惑星上に移動していき。
そして、4のアーム「リリフェス」「アシュテル」「ハドバッシュ」「リアム」達が行きついた場所がここになり。
「リアム」がこの国を作るときに、26の存在からの影響を排除するために、一人空へと上がり結界を構成した。
レムリアのパートナー、ハドバッシュは結界の維持のために地上に残り塔とリング、そして26の存在たちからの影響を完全に排除した空間を維持することにしていた。
リリフェス、アシュテルは地上の生物との融合と、循環を意識した存在たちの抽出と管理を行い、現在のレムリア人、と言われる存在はこのときに生まれでたもの。
国の名前は、「リアムの収める土地」という意味で「レム・リア」となっている。
塔とリングのある場所は、今僕らは行く事は出来ないけど。国同士でやり取りはしているみたいなので、いろんな話は伝わってくる。
でも、今はそのやり取りもできなくなりそうなくらい、塔のある国は全体の意識の集まりが希薄になっているらしい。
今回のグループ討議のテーマはこの「塔とリングのある場所」とのやり取りがスムーズにいかなくなった時に、自分達にどのような影響がでてくるのか。を話し合っていくという感じ。その地域が役割を終えたとき、レム・リアがどのようになっていくのか?
しかし、同じ塔とリングから生まれてきたはずなのに、今は僕らの国とその場所はそんなに変化しているんだろう。
「私達は変化を約束されたグループだから。安定と停止ではなくて、常に先に進まないといけません。「塔」と「リング」の地域は『安定』を選んで、今に至ります。」
僕がぼんやりと考えた事が端末を伝わって先生のとこに行ったらしい。
授業中はこう言う感じで。ふと浮かんだ疑問に対しての事も返答してもらえるので。良い時もあれば悪い時もある。
塔とリングのある場所では、8のグループがそれぞれに抽出した存在を作り上げていたが、そのうちある1つのグループが惑星意識と宇宙意識をつなげる強力な存在を作りだしてしまい。
それが塔とリングの周囲に配置されてしまった事で、他の7のグループは別の地域に同じようなシステムを構築するために移動せざるを得なかった。
塔が存在しないために、そこで生まれて情報の源に帰還するには、惑星上にある「情報の源」につながる必要があって。「塔とリングの地域」以外の存在達は惑星意識とのつながりをより強力にしていった。
そうなると、惑星意識だけの循環になってしまい、他の惑星との意識交換が行われなくなるため、積極的に他の惑星との間でもやり取りを行うように努めていて。
現実面で様々な交流が行われていた。
「非物質的に宇宙と地球を結びつけるルートを「塔とリングの地域」が行っているから、私達の国は「物質的に」地球と宇宙の意識を結び付けている感じですね。」
という説明。
ふーむ。
端末の情報と、脳に送られてくる情報を受け取りながら授業を受けていると、その場に意識が入りこんでしまうので。
まるで自分がその場を見ているような感覚になる時もある。
塔とリングのある地域で行われていた存在の抽出作業というのは、何とも今見るとホラーちっくで。
動物とも人間ともつかない存在や、妖精のような存在、天使のような存在、そんなものが見えてきて。
なぜに、こんなにいろいろ作る必要が有ったのか、良く分からなかった。
「これは「前宇宙の記憶」から抽出されて。すべて、意識を上げるための、この地で経験を積ませるための存在ですから。いろいろな形をしていたほうが、たくさんの情報を集める事ができるのです。」
と先生。
「では、なぜ今私達はこのような姿で固定されているのですか?」
と他のクラスメイトが聞くと、先生は
「すべてにおいて、バランスが良いからですよ。意識、肉体、思考、それらのバランスをとれる形というのが存在していますから。」
「もっと様々な形が有った方が、もっと情報が循環するのでは?」
他のクラスメイトも聞く。
「いいえ、余りに形が違いすぎると、違いすぎる認識を持ってしまうので、細かい意識の変化、細かい意識の情報、を得るには不向きなのですよ。同じ形態の存在同士が見つけて行く「ちいさな情報」のほうが今は必要とされているのです。」
「情報集めが終了したらどうなるんですか?」
と僕が聞くと、先生は微笑んで
「それが終わる時は、私達はこの世界に存在しないでしょうね。」
と、さらっと答えていた。
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