昨日はせっかくいただいた質問にまったく答えないまま、
全然別の問題に関して語ってしまいました。
今日こそはご質問にお答えすることにしましょう。
競技ダンスの採点に関するこういう質問でしたね。
「競技会の採点についてですが、ジュニアの場合、男子の数が少ない場合、
女子同士ペアで出場することがあります。
その場合、ある指導者の方から、女子同士ペアに比べてどうしても
男女ペアの方が優先的に点数が入り易いと聞いたことがあります。
女子同士でも立派にリーダーを務める女子もいるのに
実力とは裏腹な採点があるのは本当でしょうか?
あと、男女ペアについても、リーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているとも…
そんなことがあるのでしょうか?」
質問は2つあります。
2番目のほうが答えやすそうなのでそちらから答えていくことにしましょう。
ただ昨日も述べたように、私はもう競技ダンスの世界から身を引いてしまっていますので、
この手の質問に対してきちんと答えられる立場にありません。
ずっと昔にジャッジを務めた経験を思い出したり、
その他、いろいろと想像をめぐらせながらお答えしてみますが、
これはあくまでも素人の私見ですので、
競技ダンス界の公式見解ではないということをご理解の上お読みください。
Q-1.競技ダンスの試合ではリーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているんですか?
A-1.競技ダンスの採点に際しては、基本的にリーダーとパートナーを同じ比重で、
カップルのまとまりとしてそれぞれの組のダンスを評価しているはずで、
リーダー7割、パートナー3割といった配分が決められていたりはしません。
ただし、現在のシステムではゼッケンがリーダーの背中にのみ付けられていますので、
ジャッジが未熟な場合、どうしてもリーダーの背中ばかり目で追ってしまう、
ということが起こりえるかもしれません。
繰り返し申し上げているとおり、今のところ競技ダンスというのは、
同一フロア内で複数のカップルが同時に踊り、それを相対評価するという方法で採点しています。
多い場合には12カップルくらいがいっぺんに踊っているわけです。
ところが選手を特定するための番号が記されたゼッケンはリーダーの背中にしか付されていません。
競技中は選手たちは激しく動き回っていますので、常にそのゼッケンが見えるわけではありません。
すると勢い、ジャッジはゼッケンの付されたリーダーの背中を目で追うことになります。
ジャッジが未熟な場合、短時間で全カップルの相対評価をするために、
ゼッケンが見えている時にのみそのカップルの踊りの良し悪しを判断してしまうこともあるでしょう。
これはひょっとすると昨日論じた競技ダンスの黒歴史の一部なのかもしれません。
もともとはリーダーの踊りさえ評価できればいいと考えられていたのかもしれません。
(以前は、カップルを解消した場合にリーダーのみがA級やB級といった級を維持できましたが、
これもこの問題と連なる根深い男女差別問題だと思います。)
この問題を解消するために私はパートナーにもゼッケンを付けるべきだと思っています。
パートナーはドレスを着用しますので、リーダーのような大きなゼッケンは付けられないし、
たしかにドレスにゼッケンを付けるとちょっと興ざめな感じもしてしまうかもしれませんが、
競技ダンスにおける男女平等を推進するためには、
パートナーの肩のあたりとかにちょっと小さめのゼッケンを付けるという工夫は必要な気がします。
このような改善を加えていけば、質問者が抱いたような疑問は少しずつ解消していくでしょう。
続いて今回のメインの質問です。
Q-2.女子同士カップルに比べて男女カップルの方が採点上優遇されていたりするのですか?
A-2.システムとして女子同士カップルの出場を認めた以上、男女か女女かに関わらず、
純粋にダンスが上手いか下手かという観点だけで平等に評価されているはずです。
ただし個々のジャッジの明白な信念や隠された価値観によっては、
上手い下手の判断のなかに別の基準が紛れ込んでいる可能性があるかもしれません。
これもちょっと玉虫色なお答えで申しわけありません。
建前上は最初の文でお答えしたことがすべてのはずです。
しかしながら、そんなに簡単に割り切れるのであればこの世に差別なんて存在しませんよね。
質問者の方がどこからそういう話を仕入れてきたのかわかりませんが、
そんなこと絶対にあるはずないと言い切れるほど単純な話でないことはたしかでしょう。
実際にそういうことがあるかないかは私としては確かめようがありませんので、
事実としてそうなのかどうかという観点からではなく、
もしもそういうことがあるとするならばそれはどういう原因によるのか、
という観点から補足説明をしておきたいと思います。
ひとつには競技ダンスがどうあるべきかに関する明白な信念にもとづいて、
採点の偏りが意図的ないし無意識的に生じてしまうということがありうるでしょう。
つまり、昨日述べたような、競技ダンスとは男女で踊るべきだという理想像ですね。
それを堅固に信じているジャッジがいたとすると、
女性同士カップルなんて邪道だと思ってわざとチェックを入れないとか、
順位を低く付けるなんていうことがひょっとするとあるかもしれません。
まあ、さすがにそこまでやる酷い人はいないと信じたいですが、
そうだとしても、男女で組んで踊るダンスが基本でありそれが美しいと信じていると、
その人にとっては女性同士カップルのダンスが美しくも上手くも見えないので、
本人は客観的な判断だと信じて女性同士カップルを低く評価することがありうるでしょう。
以前にコメント欄で、自分のお弟子さんに甘い採点をするジャッジがいるのではないか、
という質問にお答えしたことがありますが、
あれも意図的に甘く付けるという可能性とは別に、
ジャッジにはそれぞれ自分の理想のダンス像があるはずで、
それを自分のお弟子さんに優先的に教え体得させているのだから、
彼にとってはお弟子さんの踊りが一番よく見えてしまうということがありうるはずです。
それと同じようなことが今回の場合にも起こりうると思うのです。
より複雑なケースとしては、それが明白な信念として本人に意識されておらず、
隠された価値観として植え込まれているということもありえるかもしれません。
女性同士カップルの導入に賛同していて、自分は偏らずに審査できると信じているのだけれど、
実は長いあいだに育まれてきた価値観に基づいて、
上記と同様、客観的に判断していると信じながら、
結果的に偏った評価を下していることがありうるかもしれません。
今回は女性同士カップルを特に取り上げたので、女性がリーダーである場合に関しては、
わりと客観的に判断できそうな気がするのですが、
これが例えばパートナーが男性であった場合にははたしてそううまくいくでしょうか?
その際、男性パートナーにドレスを着させるのか、
化粧をさせるのかといった運営上の問題もいろいろと絡んできますが、
男性パートナーの踊りをどこまで客観的に、
偏見を差し挟まず純粋にダンスとして評価できるのか、これはけっこう難しい気がします。
はるな愛などニューハーフの方がパートナーだったら、
そのまま男性とも気づかずにジャッジできるかもしれませんが、
まるっきり見た目男性という人がパートナーだったら、
もしも私がジャッジだったらついプッと吹き出してしまうかもしれません。
そんな状況で客観的な評価を下すのはけっこう難しいのではないでしょうか。
女性リーダーの場合はそこまであからさまには問題化しないかもしれませんが、
原理的には同じ問題が存在しているはずです。
私たちのなかに長いあいだかけて築かれた競技ダンスに対する価値観、
それを無意識のまま放置しておくと、
新しいシステムのなかで純粋に客観的にダンスを評価することはできないでしょう。
個人的には今後競技ダンスは、
性別とは無関係にリーダーでもパートナーでも務められるという万人に開かれたスポーツとなり、
大会や部門を分けたりすることもなく、
同一フロアで男女、女女、男男、女男、その他のカップルが一緒に競うという、
世界史上初のセクシャリティフリーなスポーツになってもらいたいと思っております。
そのためには踊る側にも見る側にも、これまでの歴史的伝統を覆す大きな意識変革が必要となるでしょう。
それを乗り越えて新しい時代の新しいスポーツとして生まれ変わり普及してくれることを期待します。
全然別の問題に関して語ってしまいました。
今日こそはご質問にお答えすることにしましょう。
競技ダンスの採点に関するこういう質問でしたね。
「競技会の採点についてですが、ジュニアの場合、男子の数が少ない場合、
女子同士ペアで出場することがあります。
その場合、ある指導者の方から、女子同士ペアに比べてどうしても
男女ペアの方が優先的に点数が入り易いと聞いたことがあります。
女子同士でも立派にリーダーを務める女子もいるのに
実力とは裏腹な採点があるのは本当でしょうか?
あと、男女ペアについても、リーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているとも…
そんなことがあるのでしょうか?」
質問は2つあります。
2番目のほうが答えやすそうなのでそちらから答えていくことにしましょう。
ただ昨日も述べたように、私はもう競技ダンスの世界から身を引いてしまっていますので、
この手の質問に対してきちんと答えられる立場にありません。
ずっと昔にジャッジを務めた経験を思い出したり、
その他、いろいろと想像をめぐらせながらお答えしてみますが、
これはあくまでも素人の私見ですので、
競技ダンス界の公式見解ではないということをご理解の上お読みください。
Q-1.競技ダンスの試合ではリーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているんですか?
A-1.競技ダンスの採点に際しては、基本的にリーダーとパートナーを同じ比重で、
カップルのまとまりとしてそれぞれの組のダンスを評価しているはずで、
リーダー7割、パートナー3割といった配分が決められていたりはしません。
ただし、現在のシステムではゼッケンがリーダーの背中にのみ付けられていますので、
ジャッジが未熟な場合、どうしてもリーダーの背中ばかり目で追ってしまう、
ということが起こりえるかもしれません。
繰り返し申し上げているとおり、今のところ競技ダンスというのは、
同一フロア内で複数のカップルが同時に踊り、それを相対評価するという方法で採点しています。
多い場合には12カップルくらいがいっぺんに踊っているわけです。
ところが選手を特定するための番号が記されたゼッケンはリーダーの背中にしか付されていません。
競技中は選手たちは激しく動き回っていますので、常にそのゼッケンが見えるわけではありません。
すると勢い、ジャッジはゼッケンの付されたリーダーの背中を目で追うことになります。
ジャッジが未熟な場合、短時間で全カップルの相対評価をするために、
ゼッケンが見えている時にのみそのカップルの踊りの良し悪しを判断してしまうこともあるでしょう。
これはひょっとすると昨日論じた競技ダンスの黒歴史の一部なのかもしれません。
もともとはリーダーの踊りさえ評価できればいいと考えられていたのかもしれません。
(以前は、カップルを解消した場合にリーダーのみがA級やB級といった級を維持できましたが、
これもこの問題と連なる根深い男女差別問題だと思います。)
この問題を解消するために私はパートナーにもゼッケンを付けるべきだと思っています。
パートナーはドレスを着用しますので、リーダーのような大きなゼッケンは付けられないし、
たしかにドレスにゼッケンを付けるとちょっと興ざめな感じもしてしまうかもしれませんが、
競技ダンスにおける男女平等を推進するためには、
パートナーの肩のあたりとかにちょっと小さめのゼッケンを付けるという工夫は必要な気がします。
このような改善を加えていけば、質問者が抱いたような疑問は少しずつ解消していくでしょう。
続いて今回のメインの質問です。
Q-2.女子同士カップルに比べて男女カップルの方が採点上優遇されていたりするのですか?
A-2.システムとして女子同士カップルの出場を認めた以上、男女か女女かに関わらず、
純粋にダンスが上手いか下手かという観点だけで平等に評価されているはずです。
ただし個々のジャッジの明白な信念や隠された価値観によっては、
上手い下手の判断のなかに別の基準が紛れ込んでいる可能性があるかもしれません。
これもちょっと玉虫色なお答えで申しわけありません。
建前上は最初の文でお答えしたことがすべてのはずです。
しかしながら、そんなに簡単に割り切れるのであればこの世に差別なんて存在しませんよね。
質問者の方がどこからそういう話を仕入れてきたのかわかりませんが、
そんなこと絶対にあるはずないと言い切れるほど単純な話でないことはたしかでしょう。
実際にそういうことがあるかないかは私としては確かめようがありませんので、
事実としてそうなのかどうかという観点からではなく、
もしもそういうことがあるとするならばそれはどういう原因によるのか、
という観点から補足説明をしておきたいと思います。
ひとつには競技ダンスがどうあるべきかに関する明白な信念にもとづいて、
採点の偏りが意図的ないし無意識的に生じてしまうということがありうるでしょう。
つまり、昨日述べたような、競技ダンスとは男女で踊るべきだという理想像ですね。
それを堅固に信じているジャッジがいたとすると、
女性同士カップルなんて邪道だと思ってわざとチェックを入れないとか、
順位を低く付けるなんていうことがひょっとするとあるかもしれません。
まあ、さすがにそこまでやる酷い人はいないと信じたいですが、
そうだとしても、男女で組んで踊るダンスが基本でありそれが美しいと信じていると、
その人にとっては女性同士カップルのダンスが美しくも上手くも見えないので、
本人は客観的な判断だと信じて女性同士カップルを低く評価することがありうるでしょう。
以前にコメント欄で、自分のお弟子さんに甘い採点をするジャッジがいるのではないか、
という質問にお答えしたことがありますが、
あれも意図的に甘く付けるという可能性とは別に、
ジャッジにはそれぞれ自分の理想のダンス像があるはずで、
それを自分のお弟子さんに優先的に教え体得させているのだから、
彼にとってはお弟子さんの踊りが一番よく見えてしまうということがありうるはずです。
それと同じようなことが今回の場合にも起こりうると思うのです。
より複雑なケースとしては、それが明白な信念として本人に意識されておらず、
隠された価値観として植え込まれているということもありえるかもしれません。
女性同士カップルの導入に賛同していて、自分は偏らずに審査できると信じているのだけれど、
実は長いあいだに育まれてきた価値観に基づいて、
上記と同様、客観的に判断していると信じながら、
結果的に偏った評価を下していることがありうるかもしれません。
今回は女性同士カップルを特に取り上げたので、女性がリーダーである場合に関しては、
わりと客観的に判断できそうな気がするのですが、
これが例えばパートナーが男性であった場合にははたしてそううまくいくでしょうか?
その際、男性パートナーにドレスを着させるのか、
化粧をさせるのかといった運営上の問題もいろいろと絡んできますが、
男性パートナーの踊りをどこまで客観的に、
偏見を差し挟まず純粋にダンスとして評価できるのか、これはけっこう難しい気がします。
はるな愛などニューハーフの方がパートナーだったら、
そのまま男性とも気づかずにジャッジできるかもしれませんが、
まるっきり見た目男性という人がパートナーだったら、
もしも私がジャッジだったらついプッと吹き出してしまうかもしれません。
そんな状況で客観的な評価を下すのはけっこう難しいのではないでしょうか。
女性リーダーの場合はそこまであからさまには問題化しないかもしれませんが、
原理的には同じ問題が存在しているはずです。
私たちのなかに長いあいだかけて築かれた競技ダンスに対する価値観、
それを無意識のまま放置しておくと、
新しいシステムのなかで純粋に客観的にダンスを評価することはできないでしょう。
個人的には今後競技ダンスは、
性別とは無関係にリーダーでもパートナーでも務められるという万人に開かれたスポーツとなり、
大会や部門を分けたりすることもなく、
同一フロアで男女、女女、男男、女男、その他のカップルが一緒に競うという、
世界史上初のセクシャリティフリーなスポーツになってもらいたいと思っております。
そのためには踊る側にも見る側にも、これまでの歴史的伝統を覆す大きな意識変革が必要となるでしょう。
それを乗り越えて新しい時代の新しいスポーツとして生まれ変わり普及してくれることを期待します。