昨年の10月の頭ごろだったでしょうか、Facebookで
下記のような写真と記事が流れてきました。
元はといえば廣田裕介という方の9月29日の投稿ですが、
私は廣田さんとは直接のFacebook友達ではないので、
友達の友達つながりで誰かが 「いいね!」 か 「シェア」 したものが目に止まったのでしょう。
(以下引用)
日本蕎麦じゃなく中華蕎麦専門店やります♪
僕は何でも屋ではなく穀物屋ですが製粉屋の実家で生まれ身近に粉を挽く、麺を打つことの環境があり、実はずっとラーメン屋と蕎麦屋をやることを志しておりまして…
実家を継いだ兄の下で二年。当時僕との方向性の違いもあり、一人旅立ち実家の眠っている歴史を新たに掘り起こしながらたなつもの創業十年。実家の看板無しでもやりたいことを形にしていこうとトライ。しかし当初は厳しい現実の壁が多々。その度に支えてくれたのはやはり実家の看板と両親そして長男という立場で自由奔放な僕を影でサポートしてくれた兄。今スタッフのみんなに支えられ今の自分があることに感謝感謝ですが、実家とそれを守ってくれる兄、そして両親御先祖があってこその自分と常々思って生きとります。その恩と想いを込め、僕の最終的な落とし所は実家の屋号を使って自分のイメージする店舗をやること…なので迷惑はおかけしませんので兄上そろそろお許し下さいな。
と言うことで今回のコンセプトも農食発信たなつものスタイルにて、
自家栽培
自家製粉
自家製麺
を目指し美味しい感じの一杯にします♪
暫く厨房に立ち、さらに自分を追い込み、そして自分を磨き上げます。
食の師匠である阪田博昭先生はじめ県内外でラーメンイベント活動を共にしてきた福島ラーメン組獅子奮迅隊の山本一平初代代表と海野信一現代表には腕もない職人でもない経験も浅い自分に対しまして色々と御指導と御勉強をさせて頂いて来ましたことに心から感謝申し上げます。
場所は御縁があり福島市の名店「麺やうから家から」さんの跡地でやらせて頂きます。
ようやく僕の想い描いて来た製麺屋ロードがここからスタートします♪
因みに木羽屋(こばや)は初代創業から百三十年余です…
(引用おわり)
金谷川駅前の 「うから家から」 が閉店するだかしたという話は耳にしていましたが、
この投稿を読んで初めて、その跡地に新しい店がオープンすることを知ったのでした。
この文章、なかなか素敵ですよね。
実家の木羽屋の歴史、家族との関わり、師匠や同志たちとの交流、そして自分自身の信念と活動…。
なんだか行ってみたい気にさせます。
ただし私は、できるかぎり昼は
糖質制限をするようにしていますので、
大学近辺にラーメン屋さんが開店してもあまり嬉しくはないのです。
「うから家から」 のラーメンも大好きでしたが、
よっぽどのことがないかぎり立ち寄らないようにしていましたし、
そのために閉店に追い込んでしまったんではないかと良心の呵責を感じているくらいですから、
新店がオープンしたからといってそうおいそれと顔を出すわけにはいかないのです。
ところが、またも突然の思いつきで、
1月の 「てつがくカフェ@ふくしま」 のテーマを、
「ルーツとアイデンティティを問う」 と決めてしまいましたので、
そうなってくると俄然、あの中華蕎麦こばや開店の挨拶が気になりだしました。
というわけで、これはたんなる昼食のためではなく、
あくまでも次回てつカフェのための情報収集ということを主たる目的として、
「中華蕎麦こばや」 を訪れてみることにしました。
入口はシンプルにこんな感じです。
お店に入ってみると、ルーツを感じさせるディスプレイでいっぱいでした。
入口入って正面の壁にはこれ。
「先代の想いを継承し 歴史と名を掘り起こす」 です。
これぞまさに 「ルーツとアイデンティティを問う」 にほかならないじゃないですか。
さらにカウンターを見上げてみると、その先代たちの足跡が1枚1枚のパネルに記されています。
みごとです。
こちらのお店は水曜が定休日のようで、土曜のてつカフェに参加していただくことは難しそうですが、
できることならゲストスピーカーとして一席ぶっていただきたいくらいです。
さて、てつカフェのための取材はこれくらいにして、ラーメンをいただいてみることにしましょう。
こちらがメニューです。
シンプルにメニューは2種類のみ。
煮干中華蕎麦か中華蕎麦の二択です。
それぞれ麺が手揉み太縮れ麺か中細ストレート麺かに決められており、
これはスープとの相性でそうなっているのでしょう。
基本、麺とスープだけで勝負する本格的なお店のようです。
チャーシュー麺とか味玉ラーメンといったメニューは用意しておらず、
それらはトッピング (「載物」) として処理するようです。
麺の量に関しては 「うから家から」 の伝統を引き継いでか、
並盛り、中盛り、大盛りが同料金で選べるようです。
(たくさん食べたい人にはいいシステムかもしれませんが、
糖質制限ダイエットを実行している人間にとってはなんか損してる感が否めません。)
ただ、このシンプルなメニュー表のなかで、
【麺物】 の次に 【載物】 が来ないで 【飯物】 が来ているのは特筆すべき点でしょう。
小鉢付きの日替御飯というのが相当な押しのようです。
(これも立地が金谷川駅前で大学生が主たる客層であるための戦略なのかもしれませんが、
炭水化物+炭水化物なんて考えられな~いという今どきのヘルシー客相手にはどうなのでしょう?)
さて、メニュー表の裏も見てみます。
使用している食材がすべて記されていました。
こんなラーメン屋さん、他に知りません。
またいい物ばかり使っています。
これぞまさにルーツのなせる業なんでしょうね。
しかも、福島の食材ばかり。
〈3.11〉 以後、私たちは食物の残留放射性物資を気にしなければいけなくなりましたが、
あれから5年が経とうとしている現在、正しいルートを通したものであれば、
日本中の農産物のなかで福島産の物が最も安全なのではないかと私は考えています。
他県でここまで徹底的に検査しているところはないですからね。
美味しくて安全 (しかも安価、これは手放しでは喜べませんが…) だとするならぱ、
これを選ばない手はありません。
もちろん安心できないという人にむりやり食べさせるべきものではありませんが、
いくら福島第一原発から遠いところで採れたからといって、
放射線検査もしていない農作物を口にしている人たちの方が私にとってはチャレンジャーに思えます。
おっと話が逸れてしまいました。
とにかく 「農食発信たなつもの」 のプロが厳選し抜いた食材で作られているようです。
まずはやはり基本の 「中華蕎麦」 よりもイチ押ししているらしい 「煮干中華蕎麦」 を頼んでみます。
誠に申し訳ありませんが、
ネギ抜きバージョンです。
これは絶品です。
煮干のスープが濃厚です。
この写真でもそうですがスープが濃厚で麺がほとんど見えません。
実際に食べてみるともっと驚くと思いますが、ほとんど食べ終わり、
スープもほとんど飲み干して底の方にほんのわずかしか残っていないという状態になったとき、
麺の切れっ端がちょっとだけ残っていて、麺好きはそれも全部すくって食べようとするじゃないですか、
その麺も見えないんです。
わずかに残っているスープが濃厚なので、下から何cmか残っているだけでもう麺は見えないのです。
今はスープの色のことだけ説明しましたが、それと比例して味も濃厚です。
このスープには手揉み太縮れ麺がまたよく合っていました。
これはクセになる味です。
さて、1回目の訪問のときは店が混み合っていたので思うように写真を撮れませんでした。
しかしながらこのブログを書くためには写真も必要だと判断したので、
その後もう2回ほど、あくまでも昼食のためではなく取材のために訪れてみました。
(入口や店内パネルの写真は実は3回目の訪問のときに撮ったものです。)
2回目のときは基本の 「中華蕎麦」 にして 「半熟煮玉子」 をトッピングしてもらいました。
たしかに前回の 「煮干中華蕎麦」 のスープと比べると味はあっさりめに感じられますが、
それはあくまでもあれとの相対評価であって、これだけ味わえば十分に濃厚なスープです。
クセがない分こちらのほうが好きという人も多いのではないでしょうか。
それよりも何よりも中細ストレート麺というのが得も言われぬ味わいでした。
表面はツルンツルンで、噛むとプリプリの歯ごたえがあり、小麦粉の味が濃いのです。
手揉み太縮れ麺も美味しかったんですが、すすって食べる麺の食感はこちらのほうが抜群です。
できれば麺とスープの逆の組み合わせも試してみたいところですが、
私としては中細ストレート麺にやられてしまいましたので 「中華蕎麦」 に軍配を上げたいと思います。
そして、「半熟煮玉子」 も美味しかったです。
これはぜひ載せたほうがいいでしょう。
ところで、この玉子、何だか気になりますね。
よく見てみましょう。
お?
これは双子卵ではないですかっ!
ひょっとして
たまご舎の 「さおりとさやか」 を使っているのでしょうか?
しかし先ほどの食材一覧には 「笹やか地鶏と卵」 とは書いてありましたが、
「たまご舎のさおりとさやか」 とは書いてありませんでした。
「笹やか地鶏と卵」 もけっこうこのへんじゃ有名な食材で、
金谷川駅前にあるカフェたまごが同じ鶏と同じ卵を使用しています。
笹やか卵も二卵性の卵というのを売りにしているのでしょうか?
気になったので、けっきょく確認のために (あくまでも確認のためであって昼食のためではない)、
もう一度お店を訪れてみることにしました。
3回目も2回目と同じく中華蕎麦・中盛り・ネギ抜きの半熟煮玉子載せにしてみました。
すると…。
煮卵はフツーでした。
前回の双子卵はただの偶然だったんですね。
なんだ、ああビックリした。
以上、「中華蕎麦こばや」 のレポートでした。
福島にはこうやって何代にもわたって地域と結びついて活動していらっしゃる方が多いですね。
今度じっくりお話をうかがってみたいものです。
(3回も訪問したのに一度も直接話をうかがうことはなく、
ただラーメンを食べて写真だけ撮って帰ってきてしまいました。テヘ)