ええっと、もう2ヶ月以上経ってしまいましたが、
福島第三中学校で行った講演会の振り返りを書いておかなければと思います。
7月13日、まだ梅雨は明けていなかったけれども相当暑かった日に、
全校生徒と保護者の方々、約600名の前で講演会をやってきました。
今までで最大規模です。
昨年、
福島高校や
白河高校で300名規模の講演会をやって、
いつもの講演会との勝手のちがいに悩まされたものでしたが、
その2倍となるとこれはさらに圧巻です。
体育館が人でぎっしり埋め尽くされているという感じでした。
気温自体は今ほどの暑さではありませんでしたが、
体育館のなかは人いきれでものすごいことになっていました。
そんななかで中学生相手に講演をしてきたわけです。
講演会後2週間ほどして感想用紙が送られてきましたが、
封書ではなく小包でした。
回収枚数は450弱でしたが、それでもものすごい量です。
ちょうど大学も試験期間に突入してしまっていましたので、
とてもじゃないけれど集計する時間的余裕がありませんでした。
それに、ざっと見てみたところ、
今まで付けられたことのないような 「満足度1点」 という最低評価や、
「けっきょく何を言いたいのかわからなかった」 というような言葉ばかりが目について、
三中生からの評価にまっすぐ向き合う心の余裕もありませんでした。
試験の採点も終わり、夏休みの宿題も終わったところで、いよいよ覚悟して、
10cm以上の高さに山積みになった感想用紙を見てみようかという気になりました。
まず客観的数値をきちんと計算してみました
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。
学年やグループにより満足度に大きな開きがあることがわかりました。
1年生 4.02。
2年生 3.66。
3年生 4.20。
保護者 4.2。
教 員 3.67。
――――――――――
全 体 3.97。
全体の満足度が4点を割っているというのは、
やはり相当低い評価と受け止めなければなりませんが、
あの福島高校のとき (3.91) よりはほんのちょっといい数字ですので、
倍の人数で、かつ中学生相手ということを考えると、
まあ善戦したとも言えるかもしれません。
それに、低評価の人の感想に 「暑いっ!」 という理由が多く、
この会を企画してくださった保護者の方も暑さを理由に3点評価でしたので、
暑かったのはぼくのせいじゃないのになあと思いながらも、
こういう時期のエアコンなしの会場での講演を引き受けてはいけない、
という教訓を胸に刻むことができました。
受講者の聴講コンディション管理というのも、主催者任せではなく、
講演者としてもはじめから考えなければいけないのでしょう。
先生方の感想用紙はたった3枚だけですのであまり統計的価値はないと思いますが、
2年生の評価だけがこんなに低いのはちょっと理由がよくわかりません。
今回の 「人はなぜ学び、なぜ働くのか」 という話はふだん、
大学生や
大学院生や
現職教員の先生方にもしている話ですので、
やはり中学生相手だとどうしても難しすぎるきらいはあるのですが、
だとすると1年生の満足度が一番低くなっていいはずですが、
2年生のほうが0.4ポイント近く低いというのはなぜなのでしょうか。
感想を見ても1年生よりも2年生のほうが、
「難しすぎてわからなかった」、「話の内容がよく理解できませんでした」 とか、
「けっきょく何が何だかわからなかったです
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」 というコメントが多かったです。
自我の目覚めはじめる中2くらいというのが、この手の話に一番興味ないのでしょうか?
今後にどう活かせばよいのか、ちょっとまだ自分としてうまく捉えきれない結果でした。
あとマイナス評価の理由として何人か書いてくれていたのは、
「下ネタが多すぎ」 ということでした。
例の
「性本能の壊れた動物」 というお話のことでしょう。
うーん、あれは全然、下ネタではないんだけどなあ。
「セックス」 とか 「オナニー」 という単語は倫理学的にはまったくNGワードではなく、
きわめて真面目に学問的にお話しさせていただいたつもりなんですが、
やはり中学生ぐらいだと刺激が強すぎる場合があるのでしょうか?
保護者の方も1名、次のように書いてくださっていました。
「驚いたこと。性についての話題…。
大切なことですが、子供に面とむかって話したことがありません。
恥ずかしい気持ちが先にたってしまいます。
先生はご自分のお子さんがいたら、あんなふうに淡々とお話しできますか?」
自分の子どもに話せるかというのは、子どもを持ったことがないので断言できませんが、
たぶんぼくなら話してしまうんじゃないでしょうか。
倫理学をやってるとこういう問題を特別視することはなくなっていくのでしょう。
それともたんに私が下ネタ好きなだけなのでしょうか?
いやいや、これはぜひとも真面目に家庭でも学校でも語り合っておくべきことだと思います。
福島県は10代の人工妊娠中絶率が全国平均を上回っていますので、
中学生ともなればもうきちんと教育 (=文化の伝達) をしておく必要があるでしょう。
以上、マイナス評価の分析をしてきましたが、
勇気を出してじっくり読んでみるとマイナスなことが書いてあるのはそれほど多くはなく、
例えば、満足度2点と辛口評価だった人も感想として書いてくれたのは次のような文でした。
「サルのしんかがわかった。
講師の人の話し方がおもしろかったです。
ブログをぜひみたいと思います
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(笑)
今日は暑い中ごくろうさまでした。
べんきょうがんばります。」
満足度5点付けてくれてもおかしくない内容ですね。
その他の感想もほんのいくつか紹介しておきましょう。
【1年生】
「ぼくも勉強をいっぱいして人のためになにかをできるかっこいいおとなになりたいです。」
「内容は難しかったですが、とても分かりやすかったです。
『ありがたいからありがとう』 という言葉が良かったです。」
「人間は本能が壊れた動物だということがちょっとショックだったけど、
そのことが分かってよかった!」
「プリントなどで例を挙げてくれてわかりやすかった。
話を聞いて初めて、人間の勉強、働く意味が分かった。
この話もありがたい話だった。
ありがとうございました。」
「たくさん共感することがあった。
最近、親にはむかってしまっているので、
今日、話をしてもらった事を思い出し、
改めて、色々な事を考えなおしたいと思います。
自分は、カッコイイ大人になりたいです。」
「自分の父さん、母さんがこんなにすごいことをしているなんて尊敬した。
自分の身の回りにいる先生がたが僕たちのために
こんな社会に向けてすばらしいことをしていたなんてびっくりしました。
今日は、人はなぜ働くのか、なぜ学ぶのか分かったような気がしました。
暑くてだらだらしてしまったけれど、とてもおもしろかったです。」
「人間はおそわるまでは何もできない動物で、
今は文化を使って生きていくために学んで勉強しているのだと分かり、
今は一生懸命答えがある問題を解いて、社会に出て、
難しい答えがないことも自分で解けるように、勉強をがんばろうと思った。
今日はすばらしいお話をありがとうございました。」
【2年生】
「勉強することが生きることにつながるということが
今まで考えてもみなかったけど、今回の講演を通してよく分かった。」
「今まで聞いた講演の中で一番楽しかった。
話し方がすごく親しみやすい話し方だった。」
「暑くてとてもねむかったけど、いい勉強になりました。
ありがとうございました。」
「働いてお金をもらうだけではなく、他人も助けられる。
自分も他人も喜ぶ。
かっこいい大人の意味が分かりました。
私も、かっこいい、すてきな大人になりたいと思いました。」
「サルから人間にどうやってなったのかが分かりました。
学ぶことが重要なことが分かりました。
勉強なんてしなくていいと思っていたけれど、
やっぱり勉強しなきゃいけないのだと思いました。」
「勉強をすることの意味がよくわかりました。
この講演を進路などに生かしていきたいです。」
「今までは、自分達がなぜ勉強するかなんて考えたこともありませんでした。
これからは、この講演会で学んだことを意識して勉強に励むようにしたいです。
自分は幸せな中の1人なので、その義務を精一杯果たせるようにしたいです。
福島大学に行こうと考えています。
もう一度会うことがあるかもしれません。」
【3年生】
「長くて難しい話だったけど、結果的に自分のためになったと思ったし、いい話だと思った。」
「話し方が軽くて聞きやすかった。
例をあげたりしながら講演してくれたからすごく分かりやすかった。
ファイルであおいでいいって言われた時に感動しました!
P.S. おなかがすきました。」
「特に大事なところを何回も強調して言ってくれてすごく分かりやすかったです。
みんなが暑くて疲れていても最後まで明るい口調だったのが、
聞いててすごいと思いました。」
「勉強することですべてが役に立つわけではないが、
勉強することで考えることが出来るようになるんだなと思った。
人間は文化を作り、それを使って生きているんだと思った。
わたしもいつか、だれかに 『勉強する意味』 について教えられるようになりたい。」
「今までの講演で一番聞きやすかったです!
いつもなら途中で寝そうになるのに、今回はそうなりませんでした!!
脳の発達とか…、文化とか…、本能とか…。あとついでにクモ (虫) とか…(笑)。
ツッコミどころ、そこ!?とか、色々おもしろかったです。
倫理にも、少しだけ何か興味が出てきました!!
あと、クモにはなりたくないですね…。やっぱりコワイし…。
それから、文化=自由!!…ってなんかいいです。
たしかに個人個人、同じ人はいないし…。
『本能の壊れた動物』 って何か残念だったけれど、言えてるなぁ…と思いました。
『ノーブレス・オブリージュ』 いい意味ですね!!
今日はありがとうございました!!」
「今回の講演会はとても楽しかったです。
今までは、先生とか親はかっこよく見えなかったです。
正直言うと、少しうるさいなと思いました。
だけど先生とか親には、たくさん感謝しなければなりません。
私もがんばって先生とか親みたいにかっこいい大人になってみせます。
今回は本当にありがとうございました。」
「話し方がおもしろくてよかった。
日本人にうまれたことじたいがラッキーだったり、
今、自分が生きていることってゆーか
生活できることがめぐまれてるってことがわかった。
今を大切に生きようと思う。
カッコイイ大人にがんばってなろうと思う。
100人の中の1人になれるようにがんばりたい。
とにかくがんばって生きようと思う!!
P.S. かわごえたつやににてますね。(声と話し方)
とてもよかったですょ。」
ほかにももう1人、「かわごえたつや」 に声と話し方が似てると書いてくれた人がいました。
「かわごえたつや」 ってテレビに出てる
シェフの川越達也さんですね。
それは初めて言われたなあ。
どんな声でどんな話し方だったのか思い出せないので、今度注意して聞いてみようと思います。
三中の皆さん、暑いなか最後までご静聴いただきありがとうございました。
あれから2ヶ月も経ってしまって、
このブログを見てくれている人も減ってしまったかもしれないけど、
またいつかどこかで (できれば福島大学で!) お会いしましょう。
カッコイイ大人になってください