美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

マスコミと財務省の亡国ゲーム 民主主義のたそがれ (2012・3・30 掲載分より)

2013年11月08日 13時59分18秒 | 日記
まずは、高校生のときに教わった政治経済を思い出していただきたいと思います。生徒になった気分でおつきあいください。

第一問。基本的人権を全てあげよ。

そうですね。自由権、平等権、請求権、参政権、社会権の五つですね。これがパッパッと出てくる人はたいしたものです。

では、第二問。自由権を3つに分類せよ。

はい。精神的自由と人身の自由と経済的自由ですね。ここまでは、実は中学校三年生の公民で教わるレベルなのです。次の質問からが、実質的に高校生レベルです。

第3問。その3つの自由の中で、民主主義を支える優越的権利を選び、またその理由もあわせて答えよ。

もちろん、精神の自由です。個人の政治的思想と言論の自由交換が保証されてこそ民主主義が成り立つからですね。国家権力からの干渉・制限を排除する権利としての自由権の本質からまっすぐに導き出せる結論でもあります。

精神の自由は、内心の自由としての「思想・良心の自由」と、それを外面化する「信教の自由」、「表現の自由」、それと「学問の自由」の4つからなります。

さて、次が最後の質問です。

第4問。「表現の自由」を実質化するための制度的保障について答えよ。

答え。それは、「検閲の禁止」と「通信の秘密の不可侵」です。これは、ちょっと難しいかもしれません。でも、これも高校生レベルなんですよ。検閲というのは、ご存知のように、信書・出版物・新聞・映画などの内容を国家権力が強制的に検査することです。

「なにをそんな当たり前のことに付き合わせるんだ、オレは忙しいんだぞ」とお叱りを受けそうです。

新聞・テレビ・出版の当事者すなわちマスコミが、国家権力からの干渉・制限を排除して表現の自由を守る牙城となることが、民主主義の成立のための根幹を成していることを確認したかったのです。「世の中、教科書通りにはいかないんだよ」という言い方がありますけれど、マスコミが、そういう卑俗な考え方に慣れ切ってしまって、国家権力の干渉・制限をやすやすと受け入れることが、民主主義にとっていかに破壊的に作用するか容易に想像できるでしょう。

ましてや、マスコミがそろいもそろって、国家権力から干渉されるまでもなく、唯々諾々と自分からすすんで国家権力のお先棒担ぎをし、金銭的な見返りを期待するなんていう恥知らずな振る舞いをしているとはふつう信じられないでしょう。

ずいぶん前置きが長くなってしまいましたが、今回と次回は、そういう信じられないことが現に起こっている、というお話をしたいと思います。

前回の投稿で引用した、元財務官僚の高橋洋一氏のコメントをもう一度引用しましょう。

増税は税率を上げることだけれど、税収増にならないのは歴史を見れば明らか。それではなにが動機かといえば利権ですよ。増税すれば、財務財の権限が増えますから。増税すると軽減税率の陳情が来る。官僚は個別に例外措置に対応するので、そこで利権が生まれるわけです。それが天下り先確保にもつながりますからね。それこそが財務省の狙いなのですよ。(日経ビジネスオンライン 3月21日)

財務省が狙っているという、消費税増税によって生まれる軽減税率がらみの「利権」とは、具体的にはいったいなんなのでしょうか。また、マスコミは本当に財務省の狙いに乗っかる動きをしているのでしょうか。

まずは、マスコミの動きをうかがわせる生々しい情報が手に入ったので、それをお伝えします。民主党の宮崎岳志衆議院議員が3月15日に次のようにツイートしています。彼は、消費税増税をなんとしても阻止しようとしている若手の理論派の中心人物の一人です。

超党派の活字文化議連に朝日新聞社の秋山社長、日経新聞の喜多社長ら、新聞・出版業界の皆さんが参加され「新聞・書籍は消費税ゼロか軽減税率が世界の常識。文化と民主主義を守るため、新聞・出版は引き上げを適用しないか、ゼロに下げてほしい」と要望しました。

これ、みなさんどう思われますか。このマスコミの「要望」の言葉は、私には恥知らずのタワゴトか寝言にしか聞こえません。

彼ら大手マスコミは総がかりで、連日〈財政再建待ったなし、消費税増税やむなし〉の大合唱を繰り広げていますね。その一方で、国会議員に対して、新聞は文化だから、新聞を守ること=民主主義を守ることだからと鉄面皮の屁理屈をこねて、自分たちだけには消費税増税のとばっちりが来ないように懇願しているわけです。

これは、ご主人さまの言いつけを良く守ったのだから、ほかの馬鹿どもに対する冷遇とは格別の扱いをお願いしたいとへいつくばって懇願するドレイの物言いにほかなりません。

ご主人さまの言いつけとは、なにがなんでも、横車を押してでも、一般国民がどうなろうとも、消費税増税に賛成しつづけろという命令です。むろん、圧倒的な権力を持つ財務省が、露骨な命令などという野暮な伝達形式をとるはずがありませんね。ちょっとしたほのめかしとか、従僕であるマスコミ側の、ご主人様の「ご意向」の忖度(そんたく)とかいった形をとります。しかし、ご主人様とドレイとの間でそれは絶対的な命令を実質上意味します。

マスコミの消費税増税議論が論理的に破綻したどうしようもない代物であることは、私のつたない論によってさえもほぼ明らかになったと私は思っています。素人にもたわいなく論破されてしまうような、そんな恥ずかしい議論を性懲りもなく続けているからには、正論を通そうという言論機関としてのまともな意思とはべつのものを想定するのが妥当でしょう。それは、上に記した通りのものである、というのが私の考えです。

(端的に言えば、デフレ不況からの脱却が、ほかのすべての課題に優先する、という命題を真と認めることによって、政府・マスコミの消費税増税不可避論の論拠は消えてなくなります。デフレ不況からの脱却は絶対に不可能である、という証明がなされたときにのみ、政府・マスコミの議論がはじめて正しいものになるのですね。しかし、その証明の達成が意味するところは、日本国家の縮小・衰退あるいは消滅が必然的であるということです。その意味でも、政府・マスコミは馬鹿な議論を繰り広げているといえましょう。)

しかし、これだけでは、「お前の決めつけだ」とお叱りを受けるかもしれません。財務省の利権をめぐる狙いについて触れていないからですね。その議論の展開は、次回に譲ります。
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「日刊ゲンダイ」VS「夕刊フジ」 民主党消費増税一任騒動の巻 (2012・3・29分転載)

2013年11月08日 06時39分56秒 | 経済
仕事帰りのサラリーマンが電車の中で読む新聞といえば、ふつう「日刊ゲンダイ」と「夕刊フジ」の二紙を思い浮かべるでしょう。ややサヨクがかった反骨派のオジサンが主に「日刊ゲンダイ」を手に取り、保守系の体制順応派のオジサンが主に「夕刊フジ」を読む、というのが読み手の平均的なイメージなのではありませんか。

いずれにしても、オジサンが購読者層のメインである点は共通しています。そういえば、茶髪のお兄ちゃんがこの二紙を持っている姿を私は一度も見かけたことがありません。

どちらも、政治ネタ、経済ネタ、芸能ネタ、スポーツネタ(ゴルフ記事が詳しい)、お色気ネタ、さらにはもっと直截なフーゾクネタと盛りだくさんで、平均的なオジサンが好みそうなコンテンツが一通りそろっています。電車のなかで邪魔にならないように、サイズがタブロイド版なのも共通しています。

また、朝日などの大新聞が優等生的なのに対して、この二紙はときにはマジメなこともいうけれど、ちょっと不良がかったところがあります。やぶにらみ風でもあります。さらに、仕事疲れを抱えたオジサンたちが小うるさく思わないように、もったいぶったどちらとも取れるような書き方はなるべく避けて、ストレートな書きっぷりをしているところも共通しています。

これだけの共通点があるからには、この二紙がライバル関係にあるのはいうまでもありません。この二紙で、仕事に疲れ果てたオジサンのハートの掴み合戦を毎日毎日繰り広げているわけです。関西は、どうなんでしょうね。違うオジサン新聞があるのでしょうか。

今日(三月二八日)私は、この二紙を駅で買ってきました。民主党内の増税法案の事前審査会議が突然打ち切られたことの扱い方が、実に対照的であったから興味を持ったのです。二紙ともに、一面全部を使ってそれを取り上げています。

では、早速比較対照してみましょう。

まずは、見出しから。(「日刊ゲンダイ」は〈日〉、「夕刊フジ」は〈夕〉と略して表記します。)

〈日〉
「大増税 強引幕引き 民主党は完全に終わった 未明に 『議論打ち切り』『増税強行』 大混乱 慎重派の猛反発に 前原(政調会長)トンズラ 輿石(幹事長)形だけ調整」

〈夕〉
「午前2時の大乱闘 敗北 小沢系孤立死も 造反含めたゲリラ戦展開へ 集団辞任?世論喚起?」

「日刊ゲンダイ」が、増税慎重派の側に立って、党本部の乱暴な対応への怒りを隠さずに、断固として糾弾しているのに対して、「夕刊フジ」は、党本部の増税路線を支持する立場から、増税慎重派=小沢グループというイメージに乗っかって、その孤立ぶりを際立たせようとしています。増税路線派のマスコミが、反対派をダーティなイメージの小沢一郎でシンボライズしてでき得る限り貶めようとしたり、彼らがことさらに孤立しているかのように言い募ったりしたがることは、前回までに指摘しました。

ただ、「日刊ゲンダイ」は、小沢一郎ヨイショ記事を書くことを社是にしているようなので、もし小沢氏がなにかのめぐり合わせで増税容認の立場だったとしたら、それでも増税反対の論陣を張っていたのかどうかは保証の限りではありません。

次に、リード(要約)を比較してみましょう。

〈日〉
「これで本当に民主党は終わりだ。8日間にわたった増税法案の事前審査会議。幕切れは唐突に訪れた。昨日(27日)は過去最高の200人超の議員が参加し、日付が変わっても議論は続いた。しかし議会は休憩をはさんで約6時間に及ぶ議論がヒートアップしていた午前2時過ぎ、前原政調会長が突然、「一任いただく」と言って議論を打ち切ったのだ。」

〈夕〉

「民主党は28日未明、社会保障と税の一体改革に関する「合同会議」で、怒号と拍手が飛び交うなか、消費税増税法案の修正を前原誠司政調会長に一任した。小沢一郎元代表が扇動する反対派は議論打ち切りに体を張って抵抗、約80人が朝方まで抗議を続けた。今後、法案採決時の造反を含めた野田佳彦首相へのゲリラ戦を準備しているが、国民世論は小沢氏ら反対派にも厳しく、″政治的孤立″に追い込まれる可能性も出てきた。」


ニュアンスの大きな違いは、「前原一任」の扱いをめぐってです。「日刊ゲンダイ」が、会議の流れを無視して強引に突然「一任いただく」と発言して、そのまま姿を消そうとした前原の卑怯な印象を読み手に抱かせるのに対して、「夕刊フジ」では、「怒号」への言及はあるものの、単に民主党が前原に一任したと客観的に述べられているだけなのですね。

思わず、芥川龍之介の『藪の中』を連想してしまうのではありますが、「約80人が朝方まで抗議を続けた」(夕フ)とある以上、「日刊ゲンダイ」の伝え方の方に軍配が上がるのではないでしょうか。その抗議には激しい怒りが感じられますね。それは、相手が不当で卑怯なことをした、という強い思いがあるときの振る舞いではないかと思われます。

また、「夕刊フジ」に「国民世論は小沢氏ら反対派にも厳しく、″政治的孤立″に追い込まれる可能性も出てきた」とありますけれど、国民の6割が今国会での法案の成立に反対しているのが現実である以上、孤立しているのは、むしろ野田内閣の方であって、それに触れずに、増税反対派の孤立をことさらにあげつらうのは著しくバランスを失した態度であります。現状では、増税反対派の方こそが民意を担っていることをきちんと指摘するのが筋でしょう。

民意といえば、「景気好転を条件とする」附則18条をめぐって、国民の7割以上は、具体的数字を入れるのが望ましいと思っているわけですから、名目GDP3%(実質2%)を条件として明示しなかった政府の態度は著しく民意に背くものであることを、マスコミはきちんと報道すべきですね。それをしないのは、不誠実です。政府に加担しすぎです。

それにしても、前原議員は、鼻っ柱は強いけれど、錯綜する物事をまとめ切る度量があまりにもなさすぎる。以前からなんとなくそう思っていましたが、今回の振る舞いでその印象が強まりました。もしかしたら、政治家にあまり向いていない人なのかもしれません。

それぞれの本文で前原氏の「一任」発言直後の「乱闘騒ぎ」についての言及がある。

〈日〉
「武闘派議員がつかみ合い 党職員はマスコミ排除」

〈夕〉
「会場から出ようとした前原氏に、小沢氏側近の武闘派議員からつかみかかり、もみ合いになる場面もあった。」

「日刊ゲンダイ」だと、喧嘩両成敗的な受けとめ方になるが、「夕刊フジ」を読んだ後には、小沢派の粗暴な印象が残ることになります。どちらが正しいか、にではなく、こうやって各社は自分たちの論陣に有利になるように印象操作をしていることに着目したいですね。

それぞれに気になる一節があるので、一つずつ取り上げておきます。まずは、「夕刊フジ」から。

馬淵澄夫元国交相らデフレ脱却を重視する中間派は「いいじゃないか」と修正案を評価した・・・

これは明らかにおかしい。馬淵議員は、デフレ脱却を最優先するからこそ、附則18条に名目GDP3%という具体的な数値を「景気好転」の条件として明示することを強力に主張してきたのですね。だから数値は書き込むがそれを増税の条件とすることはかたくなに拒む党本部側の姿勢を「いいじゃないか」と評価するはずがないのです。事実、馬淵議員は乱闘騒ぎの一時間ほど後に「最悪の終わり方をしてしまった。残念。」とツイートしています。一応の満足を得た人の言葉とはとても思えません。明らかな誤報、あるいは虚報であると思われます。小沢グループ=孤立した困り者、というイメージの演出にこだわるあまりの勇み足なのではないでしょうか。

次に「日刊ゲンダイ」から。政治評論家の本澤二郎という人のコメントを引用する形で、財務官僚の増税路線の本当の狙いに触れています。

いま日本は、総力を挙げて震災復興に取り組まなければならないのに、なぜ増税なのか。消費税増税を許したら、悪徳官僚のやりたい放題を許し、税金を食い物にされるだけだ。「霞が関の役人たちが野田首相を背後から操って増税させようとしているのは、自分たちの利権を維持するためです。役人は税金が増えれば増えるほど、オイシイ思いができる。ハコモノ天国、天下り天国も拡大できる。逆に税収が減るとオイシイ思いができない。ヘタしたら利権を失ってしまう。彼らが消費税アップを強行しようとしているのは、自由に使える税金を増やしたいからです。最後は消費税を20%にするつもりでしょう。消費税を20%にすれば、景気が悪くても安定的に約50兆円の税金が入ってきますからね」(本澤二郎氏)

もし、本澤氏の言うことが本当ならば、財務官僚はずいぶん頭が悪いことになります。なぜなら、デフレ不況のときに増税すれば、経済状況がさらに悪化して結局税収はかえって減るのですから。本澤氏は、名目GDP500兆円くらいを前提にその10%と計算して「約50兆円」と言っているのでしょうが、増税によって、GDP500兆円そのものが減少していくのですから、「約50兆円」の税収もまた減少していく計算になります。いくらなんでも、財務官僚がそんなことも知らずに嬉々として増税を仕組んでいる阿呆とは思えません。腐っても鯛ですからね。ほかに意図があると考えるのが妥当であると私は考えます。

その点、元財務官僚の高橋洋一氏が次のように言っているのは、説得力があるように思われます。

増税は税率を上げることだけれど、税収増にならないのは歴史を見れば明らか。それではなにが動機かといえば利権ですよ。増税すれば、財務財の権限が増えますから。増税すると軽減税率の陳情が来る。官僚は個別に例外措置に対応するので、そこで利権が生まれるわけです。それが天下り先確保にもつながりますからね。それこそが財務省の狙いなのですよ。(日経ビジネスオンライン 3月21日)

これだけでも、財務官僚のあまりの亡国ぶりにむかっ腹が立ってくるのですが、事はそれだけで収まりません。財務省の「利権」に、表向きは「言論の自由」を標榜する大手マスコミが薄汚い銀蠅のように群がっているのです。これはこれで、とても大きなテーマなので、次回にきちんと取り上げようと思います。
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「消費増税に反対、59.1%」。おおいに結構なことではあるが・・(2012・3・27 「イザ!」掲載より)

2013年11月08日 05時29分04秒 | 経済
*文中の「政府」や「彼ら」とは、当時の民主党野田政権のことを指しています。

*****

2012年3月26日の産経新聞HPは、

消費税増税法案の今国会成立、59・1%が反対 大連立「不適切」は半数近くに

という見出しで、次のように述べています。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が24、25両日に実施した合同世論調査で、消費税増税関連法案の今国会成立について59・1%が「させるべきではない」と答え、「させるべき」(38・2%)を20ポイント強も上回った。平成27年度までに消費税率を段階的に10%へ引き上げることについても、反対が前回調査(2月11、12日)から3・5ポイント増の52・4%と再び半数を超え、賛成は0・3ポイント減の43・2%だった。政府は対話集会などを展開しているが、増税への理解が広がっていない実態が浮き彫りになった。

政府と大手マスコミがやっきになって、国民を消費税増税やむなしの方向に誘導しようとしているのにもかかわらず、国民の約6割が、ガンとしてそれをはねつけている、ということですね。大変にたのもしいことでもあり、喜ばしいことでもあります。日本人もまだまだ捨てたもんじゃないよ、と。私は、この数字に国民の健全な生活感覚を感じます。

私が消費税増税をめぐってあれこれと理屈をこねまわしている根底にあるのも、同様の生活感覚です。「不況でただでさえ生活が苦しいのに、そのうえ消費税増税をされた日にゃあ、泣きっ面に蜂だよ。おエライ方々は、なんだかんだと屁理屈を並べる前に、このしみったれた景気をなんとかしちゃあくれねえかな。それからだったら話にのってもいいがね」というふうな。

私は、4割の増税容認の国民を悪くいう気にはなれません。大手マスコミがあれだけ寄ってたかって増税キャンペーンを繰り広げているのですから、それくらいの数字は当たり前です。むしろ、少ないくらいです。情報面での悪条件下で6割の国民が反対していることこそが、驚異的なのです。民度の高さを物語っているのです。政府にとっては、脅威でしょう。

関連法案に経済成長率など具体的な数値目標を盛り込むよう求めたのは74・2%。10%引き上げ後に追加増税する方針を法案に明示するのも反対は56・0%だった。

これもまた、国民の健全な判断を示しています。「景気の好転が条件、といったって、ちゃんとした数字がなきゃあ、なにも言っていないのと同じじゃあないか」ということですね。

将来的な10%超への引き上げも「必要」が51・3%で12・6ポイントも減少し、増税反対論が勢いを増している。

この数字の動きは、けっこう驚きものです。政府の「社会保障の水準を維持するためにこそ消費税増税を」という一見正しそうな主張にうさんくささを感じる国民がじわじわと増え始めて過半数を超えたわけですから。政府の殺し文句でさえ、過半数の国民は受け入れがたく感じている。

ここにあるのは、政治に対する根深い不信と既成政党に対する否定感情、もっと強くいえば破壊衝動である、と私は判断します。

私が申し上げたいのは、国民の根深い不信に取り巻かれ孤立感を深めた権力者が考えることは、ろくでもないことに決まっているし、侮りがたいし、その意味で警戒する必要が増したのではなかろうか、ということです。

彼らは、実のところ追いつめられているわけです。しかし、国民の良識に対して白旗を上げる気は、さらさらない。

とすれば、彼らとしては、一般国民に対して「逆襲」するよりほかにありません。

彼らは、近日中に、大手マスコミを総動員して、増税反対派に対するネガティブ・キャンペーンを展開し、増税しなければ国が滅ぶと恥も外聞もなく吹聴しまくり、それでも足りなければ、アメリカに泣きついて強力な援護射撃をお願いすると、私は判断しています。米つきバッタよろしく、「アメリカさん、お願いだから国を滅ぼすのを手伝ってくださいよ」とね。

この予想がはずれることを願わずにはいられません。

最後にひとつ、言い忘れたことを。

紙面に「政府は対話集会などを展開しているが、増税への理解が広がっていない実態が浮き彫りになった。」などという文字がもっともらしくありますけれど、〈国民が増税の理由をよく理解していないからこんな数字になっている〉という思いがにじみ出た物言いを、姑息にも、さりげなく織り込むところは、さすがは亡国マスコミ、忘れていません。あっぱれですね。
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