6月28日(土)に、永田町の衆議院第一議員会館で、勝間和代さんと上念司さん主宰の「デフレ脱却国民会議」が催されました。その内容を報告したいと思います。ちなみに、この会議は、デフレ脱却のために日銀法改正を実現しようとする超党派の集りです。
式次第は、次の通りです。
〔基調講演〕15時~16時
☆中原伸之(元日銀審議委員)
☆浅田統一郎(中央大学経済学部教授)
〔パネルディスカッション〕16時~17時
☆モデレーター(いわゆる進行役) 勝間和代(経済評論家・中央大学大学院客員教授)
☆パネリスト 衆議院議員 小沢鋭仁(おざわ さきひと)民主党
衆議院議員 中川秀直(なかがわ ひでなお)自民党
衆議院議員 山本幸三(やまもと こうぞう)自民党
衆議院議員 浅尾慶一郎(あさお けいいちろう)みんなの党
衆議院議員 宮崎岳志(みやざき たけし)民主党
日銀批判とデフレ脱却論の急先鋒が一堂に会した形で、なかなかの壮観でした。
まずは、中原伸之氏の基調講演から。
消費増税がらみの話を一つ。財務省は財政危機と騒いでいるが、よく分からない。国債残高890兆円のうち、地方債200兆円と建設国債250兆円はきちんとした計画に基づいて発行されたもの。残余が赤字国債(特例国債)。また、政府の金融資産は400兆円もある。国全体では、家計の金融資産は1500兆円あり、うち現金・預金が830兆円もある。なにを危機だ危機だと騒いでいるのかさっぱり分からない。
ここからが、本題です。
一つ目のポイントは、経済成長に関する議論をするとき、需要サイドからのものなのか供給サイドからのものなのか、話す方も聞く方もきちんと区別すべきである、ということ。そうしなければ、議論はいつまで経ってもかみ合わずに混乱したまま。
国民所得Y=消費C+投資I+政府支出G+輸出EC-輸入IM の式は需要サイドからのもの。ケインズ経済学ではこれを問題にする。消費Cは全体の約60%、投資Iは10数%、政府支出は20%、「輸出EC-輸入IM」は貿易収支。C+Iが、民需。政府支出G=政府固定資本形成(いわゆる公共投資)+政府最終消費支出(公務員の人件費を含む)
では、消費Cがなぜ伸びないのか。それは雇用がないからである。それが現状。それが問題。これを増やすには、公共投資を増やすしかない。アメリカの場合、医療関係と建設業で雇用が増えている。ITはそれほど伸びていない。アメリカのPPP(パブリック・プライベイト・パートナーシップ)は大いに参考にすべき。これは、民間に高速道路などのインフラの建設・運営をまかせること。これで雇用が増えている。また、シェール・ガスの生産でも雇用が増えている。これは、従来の天然ガスの値段の20%~25%と低価格。インフラと資源で雇用が増えている。人間は、皆が皆高度な知識を持っているわけではない。高級な知識を必要としない分野で無理なく雇用を増やすことを考えるべき。アメリカでも高速道路などのインフラの老朽化が問題になっている。日本でも同様。そこも雇用を増やすことができる。
国民所得=一人当たり労働生産性+労働人口。あるいは、伸び率に着目すると、国民所得の伸び率=労働生産性の伸び率+労働人口の伸び率。これらは、供給サイドからのもの。
(普通、潜在国民所得、あるいは潜在成長率として語られるものです。経団連などはひたすらこれを強調しますー報告者注)
一人当たり労働生産性を高めることは、小泉さんお得意の規制緩和や、ベンチャー・ビジネスの育成、イノベーションの推進によって実現される。労働人口は、一人当たり労働生産性が高められたときに社会的なキャパが広がることで高められるもの。
主要国の消費者物価は、96年を100(基準)にすると、日本以外はアメリカにしてもイギリスにしてもドイツにしてもイタリアにしても順調に数パーセントずつ伸びている。日本だけが、97年からマイナスが続いている。
GDPデフレーターも、97年からずっと低下している。(GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100。消費者物価指数と比べると、国内の企業の利益や労働者の賃金の変化に重心を置いた物価指数。消費者物価指数より上ぶれが少ないとされるー報告者注)
これらの指数の動きは、日本経済においてインフレ期待が抑えられていることを意味している。この国際的に孤立した状況は、日本経済全体のガラパゴス化が懸念される異常事態である。
GDPデフレーターの10数年間にわたる低下傾向の背景。それは、アメリカと日本におけるマネタリーベース(一言でいえば「中央銀行が供給する通貨」のことー報告者注)の供給量の変化率を見ると分かる。アメリカは、08年秋のリーマン・ショックの後にQE1、QE2という矢継ぎ早の量的緩和で対処し、GDPがマイナスにならずに済んだ。リーマン・ショックの直前と比べると、量的緩和を経た後のマネタリーベースは、4倍以上に膨れ上がっている。それに対して、日銀は、リーマン・ショックの前後でマネタリー・ベースにまったく変化がない。これで、GDPデフレーターが低下しないほうがおかしいくらいだ。
日銀の金融政策は、トランス・ミッション・メカニズムをまったく明らかにしていない。トランス・ミッション・メカニズムとは、量的緩和を実施した場合の波及経路のことである。例えば、マネタリーベースを増やす。すると、インフレ期待が高まる。すると、まず株価が敏感に反応する。すると次に、鉱工業生産高が伸びる。次に、設備投資が増える。そのような波及経路を日銀は明らかにしていない。
さらに、日銀の金融政策は、金利政策であって、緩和政策ではない。それでは、ダメである。日銀は、2%のインフレ目標をきちんと掲げるべき。そのために、当座残高を40兆円~50兆円に増やすべき。「資産買入等の基金」ではなくマネタリーベースを50兆円に増やし、それを保つ。(日銀は、一方では「資産買入等の基金」を増やし、他方ではマネタリーベースの諸項目を減らして相殺する、という詐術をたびたび弄してきました。そのせいで、市場が日銀の「緩和政策」を信用しなくなりインフレ期待が形成されにくくなっています。そういう不透明な事態を払拭するべきである、ということでしょう。また、当座預金は、マネタリーベースの3つの項目のうちの一つ。現状では、残高約32兆円。それを一挙に20兆円弱増やせと言っているわけです。デフレ・ギャップを一気に埋める意味合いがあるのでしょうー報告者注)
そうすれば、岩田教授の言うとおり、1ドル100円くらいの円安になり、株価は10000円くらいにまで上がる。円高とデフレは一日でも早く止めなければならない。
「インフレ目標値の設定」を新規に規定することを考慮に入れたうえで、日銀法は改正されなけらばならない。その要点は以下の3つ。
まず、〔通貨及び金融の調節の理念〕の第二条を「物価の安定『と雇用の最大化』を図る」とする。『』内が追加分。これは、アメリカのFRBと同じ趣旨。なお、日銀法には、「金融政策」という言葉とその「目的」という言葉とがなぜか欠落している。
次に、〔役員の身分保障〕の第二五条の「日本銀行の役員(理事を除く。)は、第二十三条第六項後段に規定する場合又は次の各号のいずれかに該当する場合を除くほか、在任中、その意に反して解任されることがない。」とあるうち、( )内を(『総裁、副総裁、』理事を除く。)とする。その趣旨は、いわゆる「執行部」の最高責任者は、すべて身分保障はないものとする、ということ。選挙で選ばれていない者が国家の金融政策を左右する権限を持ち、説明責任だけあって、結果責任は負わない現状の法システムはおかしい。結果責任を果たせなかったときは、選挙で選ばれた国会議員の頂点に位置する総理大臣によって解任されるのは当たり前のこと。(国民主権を貫き通すために必要な措置であると考えますー報告者注)
次に、〔外国為替の売買〕を規定した第四十条を「日本銀行は、『金融政策の』必要に応じ自ら~」とする。『』内が追加分。今の日銀の「資産買入等の基金」の積み上げでやっているのは、返済期間が一年未満の限りなく現金に近い資産を現金と交換していること。いわば、現金を現金と交換しているだけ。それでは意味がない。CP(コマーシャル・ペーパー)、社債、ETF(株式)、REIT(不動産)などは、現金とは明らかに性質の異なる資産なので、これらと現金との交換は、意味のある資産買い入れといえる。そういう、何かはやっているのだが、何の目的につながるのかはっきりしない行動を禁じるのが当条文の改正の趣旨。
日銀は、資産を現金と交換し、マネタリーベースを増やし、物価連動債の名目金利の動向からインフレ期待率をきちんと把握して、目的のはっきりと分かる買い入れをすべき。
最近、白川総裁と野田首相が会談した。日銀法改正の必要性を問われて、首相は「日銀はよく努力している」と評価した。現状では、日銀のパーフォーマンスを測る尺度がない。マネタリーベースをどれだけ増やしたかを尺度にするべき。
グローバリゼーションとは、産業革命が全世界に波及すること。イギリス・フランス・アメリカ→ドイツ・イタリア→日本→韓国・台湾・香港・シンガポール→中国・インド・ブラジル→ベトナム・ミャンマー→… という波及プロセスにおいて、世界中の実質賃金が下がっている。これは大きな問題。
経済効率と安定のバランスを保つことが重要。だが、それは難しい。市場原理主義は、効率ばかり追い求めるが、それではバランスを失している。
とにかく、一日でも早くデフレと円高から脱却すること。それと、雇用を増やすこと。そのために、公共事業を民間に委託する方策を求めること。以上が、自分の提言の要点。
*****
次は、浅田統一郎氏(中央大学経済学部教授)の基調講演です。
自分は、経済学者であるから、これまであまり政治問題への言及をしたことがなかった。ただし、今回の消費増税については言いたいことがある。それは、今回の消費増税に大義はないということだ。民主党・自民党ともに敗者である。
大手マスコミによる洪水のような増税キャンペーンにもかかわらず、国民の6割がいまだに消費増税に反対している。民主党支持者の増税反対は5割程度。自民党支持者の増税反対は6割。国民は意外とマインド・コントロールされていない。覚めている。
民主党・自民党ともに、その民意に反している。だから、大義がない。
政治家のみなさんには、そのことを肝に銘じて、来るべき総選挙に臨んでいただきたい。
ここからが、本題です。
日本の名目GDPに対する名目国債発行残高(地方債を含まず)の比率は、日銀法改正と橋本消費増税(3%→5%)が実施された1997年以降急激に増えている。具体的に言えば、97年に約50%だったのが、右肩上がりにどんどん増えて、05年には約105%に膨らんでいる。つまり、8年間で約2倍になっている。いわゆる財政悪化が進んでいる。
これは、消費増税によってもたらされたデフレ不況によるもの。名目GDPは97年のピーク時が520兆円。震災が起こる直前の2010年が480兆円。だから、40兆円の減少。
では、税収はどうかといえば、97年に比べて2010年は15兆円の減少。税収の源泉は名目GDPだから、名目GDPが減少すれば税収も減少する。税収が減少すれば、名目GDPに対する名目国債発行残高の比率は高くなる。
消費税の税率が3%から5%に2%上がるだけでこんなにひどいことになってしまったのだから、今後5%から8%さらには10%へ税率が上がると、もっと悲惨なことになるのは目に見えている。(財政悪化を脱して財政再建を実現するために、消費増税を実施するのは愚策である、ということですー報告者注)
同じ97年から、政府支出は微減傾向にある。政府支出=政府最終支出+固定資本形成のうち、固定資本形成、いわゆる公共投資(道路・ダムなどのファンダメンタルズの構築)は、どんどん削減されてきた。(ピーク時の半分未満)公共投資にはいわゆる乗数効果があるので、公共投資の大幅な削減で負の乗数効果が生じ、名目GDPが減少するのは当たり前のこと。
それに連動する形で、97年から名目マネーサプライ(現金通貨+預金通貨+準通貨+譲渡性預金(CD))の成長率が減少している。89年のピーク時の12%からいまでは五分の一程度に鈍化している。
それに対応して、フィリップス曲線は97年から典型的な右肩下がりを描いている。つまり、消費者物価上昇率が97年に2%弱だったのがどんどん減少するのに対応して、完全失業率がどんどん上昇している。(デフレ不況が進行しているということですー報告者注)ちなみに、96年から97年にかけて物価が0%から2%弱に急激に上昇しているのは、消費増税によるもの。増税分が物価に上乗せされたということ。
今まで述べてきたことは、次のようにまとめることができる。1983年から1993年の10年間に政府支出は2.06倍に伸びている。その結果、名目GDPは1.71倍に伸び、名目GDPに対する国債発行残高の比率は1.05倍とほぼ横ばいである。
次の10年間(1993~2003)には、政府支出は1.09倍と横ばい。その結果、名目GDPの伸びも1.02倍と横ばい。名目GDPに対する国債発行残高の比率だけが、2.31倍と2倍強の伸び。
では、1993年から2008年までの15年間ではどうかといえば、政府支出は1.06倍と横ばい。名目GDPも1.02倍と横ばい。名目GDPに対する国債発行残高の比率だけが、2.76倍と3倍弱の伸び。(消費増税と公共投資の大幅削減と日銀の金融引き締めが名目GDPの停滞を招き、財政悪化を招いたということでしょうー報告者注)
長期国債の名目利子率<名目GDPの成長率。これが国債の安定条件(ドーマー条件)。2000年以降、この条件を満たすことができていないので、財政は悪化の一途をたどっている。
その根本原因は、不適切なポリシー・ミックス、すなわち、消極的な日銀の金融政策と政府(財務省)の緊縮財政である。
以上が、講演の内容です。時間の関係で教授が触れることのできなかったところをレジュメから抜き出しておきます。
2012年1月、米国FRBは正式に「インフレ目標」(下限1%、上限3%、平均2%)を導入。過去実績打率8割。
そのことにあわてて、2月14日に日銀が「インフレの目途」導入を発表(ゼロ・インフレを許容し、上限が2%、平均が1%という低すぎるもので、達成時期もコミットメント(拘束力のある約束)も責任も不明確)。過去実績 打率1割。「偽インフレ目標?」
日銀法改正の必要性 コミットメンと責任を法律で明確に
Bloomsberg2012年4月4日の記事
「2月の追加緩和にかかわらずマネー急速減:日本の本気疑う声も」
嶋中雄二氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長)のコメント「まるで金融引き締めを実施したような収縮ぶりだ」
現在の「偽インフレ目標」ではなく「真のインフレ目標政策」を
年率平均2%程度(下限はゼロではなく、プラス1%程度)のインフレ率とプラス4%程度の名目GDPの成長率を恒常的に維持する必要性(OECD諸国の過去10年間の平均並みに過ぎない)
20兆円規模の震災復興費用の全額を日銀引き受けで行うべき(復興増税は必要ない)
日銀問題の放置と消費税の増税は、日本を経済先進国クラブから脱落させる道
*****
〔パネルディスカッション〕16時~17時
☆モデレーター(いわゆる進行役) 勝間和代(経済評論家・中央大学大学院客員教授)
☆パネリスト 衆議院議員 小沢鋭仁(おざわ さきひと)民主党
衆議院議員 中川秀直(なかがわ ひでなお)自民党
衆議院議員 山本幸三(やまもと こうぞう)自民党
衆議院議員 浅尾慶一郎(あさお けいいちろう)みんなの党
衆議院議員 宮崎岳志(みやざき たけし)民主党
議員それぞれの発言を以下のようにまとめてみました。むろん、文責はすべて私にあることをお断りしておきます。
☆中川秀直:政治家として、マクロ経済政策の基本をふまえることがいちばん重要と思っている。金融政策と財政政策は車の両輪のようなもの。連携すべきもの。ムダの削減は、いつでもやるべきこと。金融政策は、物価と為替を決めるうえで重要な手段。日銀はそこから逃げている。デフレ脱却のために、政府・日銀間のアコード(政策協定)の締結でインフレ目標2%超を打ち出すべき。規制緩和などによる供給サイドの成長戦略も行うべき。制度改革のよる利便性の追求・サービスの向上も重要。歳出の削減は、アレシナ(ハーバード大学教授)らの、「財政再建に成功した世界の事例を調べてみると、公務員給与・社会保障費などの歳出の削減7割、増税3割の黄金比が見出される」という研究結果から見ても、重要。消費増税の影響は、増税分が価格に上乗せできないという形でまずは現われるはず。現在の消費税滞納額は年間約3000億円だが、今回の消費増税がそのまま実施されたら、年間一兆円ほどの滞納額になるのではないか。その結果中小企業の倒産件数は大幅に増えるはず。
中川氏は、自民党でただ一人、消費税法案採決を欠席しました。その経緯を自身のブログで述べているものを掲載しておきます。
6月18日に開催された「全議員・選挙区支部長懇談会」において、自民党執行部より、
①民主党はマニフェストを事実上撤回した
②社会保障国民会議による社会保障改革の合意がない場合には増税できない
③増税実施半年前の閣議決定の段階でデフレを脱却していなければ増税しない
等の説明があった。私は、翌19日の党総務会において、谷垣自民党総裁に対してこれらのことを野田首相に対して党首会談で確認することを求めた。
しかし、党首会談は開かれず、昨日の国会審議において野田首相は、民主党はマニフェストを撤回していないと公言している。このまま増税法案の成立をさせることは、「民主党の公約違反の増税に加担することはできない」、「衆議院の解散に追い込み、政権を奪還する」との自民党の平成24年度運動方針に反する可能性がある。
よって、私は現段階で増税法案に賛成することはできない。
同時に、国益に反する民主党政権を一刻も早く終わらせることが喫緊の課題であり、わが党が次期総選挙に向けて一致結束し、デフレ不況の脱却と安心できる社会保障の確立の鮮明な旗を掲げて闘い抜かなければならない。
参議院の審議の過程で、わが党同僚議員による、民主党のマニフェスト撤回と正しい政策の実現を強く期待しつつ、法案採決に欠席する。
☆小沢鋭仁:経済政策専門に政治活動をやってきた。「失われた10年」とも「失われた20年」ともいわれるデフレ不況とはいったい何なのかを10年ほど前から考えるようになった。2002年に枡添要一さんらと「アンチ・デフレの会」を発足させ、デフレについて勉強してきた。なかなか我々の考え方が多数派にならなかったのだが、勝間さんらとの共闘を組んだりするなかで、少しずつ永田町のコンセンサスが変わってきたように思う。しかしながら、政府は「脱デフレ脱円高」を目標として掲げているものの、いまだにこれといった具体策がない。だから、実は本気じゃないのではないか、脱デフレ・脱円高が必要だと本気で思っていないのではないかと思えてくる。日銀法改正はぜひとも成し遂げたい。ポイントは、日銀に掲げた目標が達成できなかった場合の結果責任を明記すること。それにしても、デフレ・円高についての問題意識の共有が難しい。これが最大のポイント。消費増税の景気条件(名目GDP成長率3%・実質GDP成長率2%達成)は、現状では留保条件にまったくなっていない。消費税については、デフレ下では税率を上げても税収が増えないことを理解すべき。増税については、マクロ経済政策の全体像のなかで考えるべき。「デフレは物価が下がるので悪くない。円高は、旅行するとき安くあげられるから悪くない。」そういう考え方がまだまだある。デフレは、経済停滞をもたらし、労働者の賃金を下げ、経営者にとっては、同じ努力をしても売り上げが減り、金利が変わらないので利子の支払いが大変になる。円高は、輸出産業にとって足枷になる。大変な問題であるという認識の共有が大切。政治家や官僚の間に「とにかく上げりゃあいいんだ」という感覚が蔓延している。財務省は、「消費増税に賛成したら予算をつけてあげるよ」という甘言で関係者を骨抜きにしようとする。諸悪の根源はデフレであり、デフレは貨幣現象なのだ、という認識の共有が大事。増税キャンペーンを展開する、大手マスコミの大本営発表が良くない。そんなことを繰り返しているマスコミはつぶれるに決まっている。NHKの大河ドラマ『平清盛』の人気がない。貨幣経済を日本に初めて導入したのは平清盛。しかし、日本人は経済のことがまったく分かっていない源氏の方がカッコいいと思っているし、こちらの方が人気がある。日本人はデフレが好きなのかもしれない。しかし、デフレに耐えるのがカッコいいという考えは正常ではないことに気づくべき。
小沢議員は、26日の消費増税法案の採決を棄権しました。その経緯についてご自身のブログで語っているのを掲載します。
私は26日、衆議院本会議において消費税増税など税制関連の2法案の採決を棄権しました。社会保障と税の一体改革関連8法案の採決のうち、社会福祉関係の6法案に賛成票を投じた後、議場を退席したのです。
私自身、消費税増税につき昨年の「民主党社会保障と税の抜本改革調査会」では会長代理を務め、政策論的に自分が方向性を示す責任者のひとりとして決めました。その経緯を踏まえると、今回の三党合意も『政策論としてぎりぎり許容範囲』といえるものでした。
しかし、前回選挙で『増税しない』とした国民との約束を反故にすることはできません。そこで、苦渋の決断として棄権を選択したのです。
今後は、今回の消費税増税法案にもみられるように、いつもゴタゴタした印象を持たせるとりまとめの過程を仲間と立て直し、民主党における政策決定過程の確立に汗をかいていく所存です。
「0増5減」の減員区での棄権議員となり、党からの公認の問題も生じる可能性もありますが、国民・県民の皆さまとの約束を破るわけにはいかないと考え、悩んだ末の選択でした。
☆浅尾慶一郎:税収は1990年がピークで60兆円だった。昨年は40兆円。3分の2に減っている。しかし、実質GDPは、1990年当時より大きい。それは、貨幣価値が高くなったデフレによるもの。だから、税収を増やすには、デフレから脱却するほかない。一つ提案したいのは、物価水準を測るGDPデフレーターに、土地や株や為替相場を含めるべきなのではないかということ。というのは、日銀が金融緩和をした場合、まっさきに反応するのは、株価であり、地価であり為替相場であるからだ。目下のデフレ下で、株価は四分の一くらいになり、地価は半分以下になっている。これらをGDPデフレーターに含めることを検討すべきではないか。消費増税について、財務官僚の頭の中には単純にかけ算しかないのではないか。5%で12兆5000億円の税収だから、1%上げれば2兆7000億円の税収増なので、5%上げれば2兆7000億円×5の税収増、くらいのことしか考えていないようだ。つまり、税率を上げれば単純に税収が増えると考えている。それが彼らの実情。財務省の人事評価は、増税が勝ち組、減税が負け組。日銀の人事評価は、利上げが勝ち組、利下げが負け組。それが実態。世間の感覚とかけ離れた、そういう人事評価を変えなければならない。軽減税率は財務官僚の権限が増えるだけだから危険。
みんなの党は消費増税反対が党是なので、浅尾議員ももちろん消費増税法案採決は反対票を投じました。
☆山本幸三:先の選挙で自民党はなぜ民主党に負けたのか。それは、デフレ不況のせいで国民の6割が自分たちは貧しくなっていると感じたからだと気づいた。デフレこそが政権交代の原因である。自民党は次の総選挙の公約に脱デフレ・脱円高を掲げている。それを実効性あるものにするために日銀法改正を公約に掲げるよう党本部をいま説得しているところ。消費増税は景気が加熱したときに実施すればいいもの。いまやることではない。今回は、消費増税法案に賛成した。それは、自分としては、日銀法改正と引き換えにした苦渋の選択だった。自公民三党協議をしたとき、自民党が民主党案のなかの景気条項を取り下げるよう求めたと聞いたとき、バカなことをするなと党本部に掛け合った。とにかく、日銀法を改正して、日銀に(政府とのアコードを締結して、コミットメントとして)インフレ・ターゲット政策を実施してもらわなければならない。そうして、予想インフレ率を高めてデフレから脱却しなければならない。今年の2月29日に財務金融委員会で白川総裁とやりあったとき、私が「日銀は、予想インフレ率を日銀の金融政策にきちっと応じて動いている物価連動債でその都度測るべきなのに、何故長期予想インフレ率なんてものを、怪しげなアメリカのコンセンサス・フォーキャストという会社の予測を根拠に鵜呑みにするのか」と質問したことがあった。欧米の中央銀行は、物価連動債で予想インフレ率を客観的に測定している。また、普通の予想インフレ率は長くても二、三年である。それに対して、このわけのわからないコンセンサス・フォーキャストというアメリカの会社は、六年から十年の予想インフレ率を出している。そこで「メド1%」という数字が出てきている。こんな検証の可能性が極めて低い数値によって政策決定するなんていい加減なことはよせ、と提言した。
財務官僚たちでマクロ経済政策を分かっている人なんて一人もいない。彼らの間では、増税すると仕事をした、という評価である。日銀の金融政策が功を奏して景気回復し、税収増が実現して財政内容が良くなったら困るから、日銀は財務省が増税を実現するまでは、まともな金融政策はちょっと控えてくれ、という阿吽の呼吸でやっている。白川総裁がまた「生産年齢人口が減るとデフレになる」なんてデマを飛ばしたので、きっちりと調べて論破した。デフレは物価を下げるからいいものだと真顔でいう議員もいる。固定相場制のときの頭のままで切り換えができない。ジェネレーション・ギャップは確かにある。日銀法改正を争点に政界再編をすべき。小沢新党はそれを織り込むべき。アメリカの経済学者のクルーグマンは、新卒の若者が給料の安い会社に入ったらほぼ一生その状態のままである、と言っている。日本の若者は、一五年間そういう状況下に置かれている。デフレ脱却は焦眉の課題である。
五人の議員のなかで一人だけ消費増税法案に賛成した山本議員は、いささかやりにくそうだったように感じられたのは私の気のせいでしょうか。
☆宮崎岳志:最近日銀の人事異動があった。企画局長というエリート中のエリートのポストに就いた内田氏が新任の挨拶に来たとき、年来の疑問だったことを尋ねてみた。それは、「資産買入等の基金」の中になぜ資産項目と貸出項目がごっちゃになっているのかという疑問である。内田氏の答えは「それは金利なんです」。つまり、オーバー・ナイト(超短期)の貸出の金利をまず0%に近づけ、次にそれよりやや長めのものの金利を0%に近づけ、その次に国債の一年以内のものを0%に近づけ、二年ものを0%に近づける、という考え方でああいうふうにズラリと並んでいるのである、と。それで年来の疑問が氷解した。日銀の「資産買入等の基金」は、金融緩和のためにあるのではなくて金利政策のためにあるのだ、と。つまり、日銀はゼロ金利政策だけに責任を感じているのであって、消費者物価指数や雇用などには責任を持ちたくないというのが本音のようだ。財務官僚と日銀官僚のマインド・コントロールも大きな問題。金融緩和の必要性を他の議員さんに訴えようとすると「それは危険だ」という反応がかえってくる。別に深い考えがあるわけではなく、単に財務官僚や日銀官僚がそう言っていた、ということらしい。さらに、「そんな簡単なことでデフレ不況から脱却できるなら財務省や日銀はとっくにやっているはずだ。でもやっていない。彼らがやっていないことはダメだ」となる。
(私自身、これに類することをたくさん体験しています。『お前が偉そうに言うことくらい、お前より頭の良い財務官僚や日銀が思いつかないはずがない。その彼らが、お前の主張をダメだと言っているのだから、お前は間違っている』という露骨な反応が透けて見えることがしょっちゅうです。日本人の官尊民卑は骨がらみのようですね。それを別名百姓根性と言います。これを隠し持っている人間に対して私はとても敏感なようです。これが実は民主主義の最大の敵ではないかと私は感じています―報告者コメント)
財務官僚や日銀官僚にとって、デフレは天災のようなもの。増税や金融引き締めによってデフレが生じても、それはたまたま起こったことで、自分たちの振る舞いとは関係ない。運が悪かったね、で済んでしまう。デフレの何が問題か。それは、雇用がなくなるからいけないのだ、という認識を共有することが大事。
☆☆☆☆☆
政治家や官僚の世界を身近なものとして知らない私にとって、衝撃的な事実が次から次に明らかにされた観があります。これらを踏まえて、これから物事を考えるようにしたいと思っています。みなさんにとっても、有用な情報がいくつかあってくれればと願っています。
最後に、モデレーターの勝間和代さんの進行ぶりがお見事だったことを申し添えておきます。明朗で、頭の回転が早くて、物事を的確にテキパキとこなす能力が高い人です。しかし、自分の才にばかり恃むのではなくて、人とのつながりを大切にしている感じがしました。これから、もっと大きな人になるような気がします。
式次第は、次の通りです。
〔基調講演〕15時~16時
☆中原伸之(元日銀審議委員)
☆浅田統一郎(中央大学経済学部教授)
〔パネルディスカッション〕16時~17時
☆モデレーター(いわゆる進行役) 勝間和代(経済評論家・中央大学大学院客員教授)
☆パネリスト 衆議院議員 小沢鋭仁(おざわ さきひと)民主党
衆議院議員 中川秀直(なかがわ ひでなお)自民党
衆議院議員 山本幸三(やまもと こうぞう)自民党
衆議院議員 浅尾慶一郎(あさお けいいちろう)みんなの党
衆議院議員 宮崎岳志(みやざき たけし)民主党
日銀批判とデフレ脱却論の急先鋒が一堂に会した形で、なかなかの壮観でした。
まずは、中原伸之氏の基調講演から。
消費増税がらみの話を一つ。財務省は財政危機と騒いでいるが、よく分からない。国債残高890兆円のうち、地方債200兆円と建設国債250兆円はきちんとした計画に基づいて発行されたもの。残余が赤字国債(特例国債)。また、政府の金融資産は400兆円もある。国全体では、家計の金融資産は1500兆円あり、うち現金・預金が830兆円もある。なにを危機だ危機だと騒いでいるのかさっぱり分からない。
ここからが、本題です。
一つ目のポイントは、経済成長に関する議論をするとき、需要サイドからのものなのか供給サイドからのものなのか、話す方も聞く方もきちんと区別すべきである、ということ。そうしなければ、議論はいつまで経ってもかみ合わずに混乱したまま。
国民所得Y=消費C+投資I+政府支出G+輸出EC-輸入IM の式は需要サイドからのもの。ケインズ経済学ではこれを問題にする。消費Cは全体の約60%、投資Iは10数%、政府支出は20%、「輸出EC-輸入IM」は貿易収支。C+Iが、民需。政府支出G=政府固定資本形成(いわゆる公共投資)+政府最終消費支出(公務員の人件費を含む)
では、消費Cがなぜ伸びないのか。それは雇用がないからである。それが現状。それが問題。これを増やすには、公共投資を増やすしかない。アメリカの場合、医療関係と建設業で雇用が増えている。ITはそれほど伸びていない。アメリカのPPP(パブリック・プライベイト・パートナーシップ)は大いに参考にすべき。これは、民間に高速道路などのインフラの建設・運営をまかせること。これで雇用が増えている。また、シェール・ガスの生産でも雇用が増えている。これは、従来の天然ガスの値段の20%~25%と低価格。インフラと資源で雇用が増えている。人間は、皆が皆高度な知識を持っているわけではない。高級な知識を必要としない分野で無理なく雇用を増やすことを考えるべき。アメリカでも高速道路などのインフラの老朽化が問題になっている。日本でも同様。そこも雇用を増やすことができる。
国民所得=一人当たり労働生産性+労働人口。あるいは、伸び率に着目すると、国民所得の伸び率=労働生産性の伸び率+労働人口の伸び率。これらは、供給サイドからのもの。
(普通、潜在国民所得、あるいは潜在成長率として語られるものです。経団連などはひたすらこれを強調しますー報告者注)
一人当たり労働生産性を高めることは、小泉さんお得意の規制緩和や、ベンチャー・ビジネスの育成、イノベーションの推進によって実現される。労働人口は、一人当たり労働生産性が高められたときに社会的なキャパが広がることで高められるもの。
主要国の消費者物価は、96年を100(基準)にすると、日本以外はアメリカにしてもイギリスにしてもドイツにしてもイタリアにしても順調に数パーセントずつ伸びている。日本だけが、97年からマイナスが続いている。
GDPデフレーターも、97年からずっと低下している。(GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100。消費者物価指数と比べると、国内の企業の利益や労働者の賃金の変化に重心を置いた物価指数。消費者物価指数より上ぶれが少ないとされるー報告者注)
これらの指数の動きは、日本経済においてインフレ期待が抑えられていることを意味している。この国際的に孤立した状況は、日本経済全体のガラパゴス化が懸念される異常事態である。
GDPデフレーターの10数年間にわたる低下傾向の背景。それは、アメリカと日本におけるマネタリーベース(一言でいえば「中央銀行が供給する通貨」のことー報告者注)の供給量の変化率を見ると分かる。アメリカは、08年秋のリーマン・ショックの後にQE1、QE2という矢継ぎ早の量的緩和で対処し、GDPがマイナスにならずに済んだ。リーマン・ショックの直前と比べると、量的緩和を経た後のマネタリーベースは、4倍以上に膨れ上がっている。それに対して、日銀は、リーマン・ショックの前後でマネタリー・ベースにまったく変化がない。これで、GDPデフレーターが低下しないほうがおかしいくらいだ。
日銀の金融政策は、トランス・ミッション・メカニズムをまったく明らかにしていない。トランス・ミッション・メカニズムとは、量的緩和を実施した場合の波及経路のことである。例えば、マネタリーベースを増やす。すると、インフレ期待が高まる。すると、まず株価が敏感に反応する。すると次に、鉱工業生産高が伸びる。次に、設備投資が増える。そのような波及経路を日銀は明らかにしていない。
さらに、日銀の金融政策は、金利政策であって、緩和政策ではない。それでは、ダメである。日銀は、2%のインフレ目標をきちんと掲げるべき。そのために、当座残高を40兆円~50兆円に増やすべき。「資産買入等の基金」ではなくマネタリーベースを50兆円に増やし、それを保つ。(日銀は、一方では「資産買入等の基金」を増やし、他方ではマネタリーベースの諸項目を減らして相殺する、という詐術をたびたび弄してきました。そのせいで、市場が日銀の「緩和政策」を信用しなくなりインフレ期待が形成されにくくなっています。そういう不透明な事態を払拭するべきである、ということでしょう。また、当座預金は、マネタリーベースの3つの項目のうちの一つ。現状では、残高約32兆円。それを一挙に20兆円弱増やせと言っているわけです。デフレ・ギャップを一気に埋める意味合いがあるのでしょうー報告者注)
そうすれば、岩田教授の言うとおり、1ドル100円くらいの円安になり、株価は10000円くらいにまで上がる。円高とデフレは一日でも早く止めなければならない。
「インフレ目標値の設定」を新規に規定することを考慮に入れたうえで、日銀法は改正されなけらばならない。その要点は以下の3つ。
まず、〔通貨及び金融の調節の理念〕の第二条を「物価の安定『と雇用の最大化』を図る」とする。『』内が追加分。これは、アメリカのFRBと同じ趣旨。なお、日銀法には、「金融政策」という言葉とその「目的」という言葉とがなぜか欠落している。
次に、〔役員の身分保障〕の第二五条の「日本銀行の役員(理事を除く。)は、第二十三条第六項後段に規定する場合又は次の各号のいずれかに該当する場合を除くほか、在任中、その意に反して解任されることがない。」とあるうち、( )内を(『総裁、副総裁、』理事を除く。)とする。その趣旨は、いわゆる「執行部」の最高責任者は、すべて身分保障はないものとする、ということ。選挙で選ばれていない者が国家の金融政策を左右する権限を持ち、説明責任だけあって、結果責任は負わない現状の法システムはおかしい。結果責任を果たせなかったときは、選挙で選ばれた国会議員の頂点に位置する総理大臣によって解任されるのは当たり前のこと。(国民主権を貫き通すために必要な措置であると考えますー報告者注)
次に、〔外国為替の売買〕を規定した第四十条を「日本銀行は、『金融政策の』必要に応じ自ら~」とする。『』内が追加分。今の日銀の「資産買入等の基金」の積み上げでやっているのは、返済期間が一年未満の限りなく現金に近い資産を現金と交換していること。いわば、現金を現金と交換しているだけ。それでは意味がない。CP(コマーシャル・ペーパー)、社債、ETF(株式)、REIT(不動産)などは、現金とは明らかに性質の異なる資産なので、これらと現金との交換は、意味のある資産買い入れといえる。そういう、何かはやっているのだが、何の目的につながるのかはっきりしない行動を禁じるのが当条文の改正の趣旨。
日銀は、資産を現金と交換し、マネタリーベースを増やし、物価連動債の名目金利の動向からインフレ期待率をきちんと把握して、目的のはっきりと分かる買い入れをすべき。
最近、白川総裁と野田首相が会談した。日銀法改正の必要性を問われて、首相は「日銀はよく努力している」と評価した。現状では、日銀のパーフォーマンスを測る尺度がない。マネタリーベースをどれだけ増やしたかを尺度にするべき。
グローバリゼーションとは、産業革命が全世界に波及すること。イギリス・フランス・アメリカ→ドイツ・イタリア→日本→韓国・台湾・香港・シンガポール→中国・インド・ブラジル→ベトナム・ミャンマー→… という波及プロセスにおいて、世界中の実質賃金が下がっている。これは大きな問題。
経済効率と安定のバランスを保つことが重要。だが、それは難しい。市場原理主義は、効率ばかり追い求めるが、それではバランスを失している。
とにかく、一日でも早くデフレと円高から脱却すること。それと、雇用を増やすこと。そのために、公共事業を民間に委託する方策を求めること。以上が、自分の提言の要点。
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次は、浅田統一郎氏(中央大学経済学部教授)の基調講演です。
自分は、経済学者であるから、これまであまり政治問題への言及をしたことがなかった。ただし、今回の消費増税については言いたいことがある。それは、今回の消費増税に大義はないということだ。民主党・自民党ともに敗者である。
大手マスコミによる洪水のような増税キャンペーンにもかかわらず、国民の6割がいまだに消費増税に反対している。民主党支持者の増税反対は5割程度。自民党支持者の増税反対は6割。国民は意外とマインド・コントロールされていない。覚めている。
民主党・自民党ともに、その民意に反している。だから、大義がない。
政治家のみなさんには、そのことを肝に銘じて、来るべき総選挙に臨んでいただきたい。
ここからが、本題です。
日本の名目GDPに対する名目国債発行残高(地方債を含まず)の比率は、日銀法改正と橋本消費増税(3%→5%)が実施された1997年以降急激に増えている。具体的に言えば、97年に約50%だったのが、右肩上がりにどんどん増えて、05年には約105%に膨らんでいる。つまり、8年間で約2倍になっている。いわゆる財政悪化が進んでいる。
これは、消費増税によってもたらされたデフレ不況によるもの。名目GDPは97年のピーク時が520兆円。震災が起こる直前の2010年が480兆円。だから、40兆円の減少。
では、税収はどうかといえば、97年に比べて2010年は15兆円の減少。税収の源泉は名目GDPだから、名目GDPが減少すれば税収も減少する。税収が減少すれば、名目GDPに対する名目国債発行残高の比率は高くなる。
消費税の税率が3%から5%に2%上がるだけでこんなにひどいことになってしまったのだから、今後5%から8%さらには10%へ税率が上がると、もっと悲惨なことになるのは目に見えている。(財政悪化を脱して財政再建を実現するために、消費増税を実施するのは愚策である、ということですー報告者注)
同じ97年から、政府支出は微減傾向にある。政府支出=政府最終支出+固定資本形成のうち、固定資本形成、いわゆる公共投資(道路・ダムなどのファンダメンタルズの構築)は、どんどん削減されてきた。(ピーク時の半分未満)公共投資にはいわゆる乗数効果があるので、公共投資の大幅な削減で負の乗数効果が生じ、名目GDPが減少するのは当たり前のこと。
それに連動する形で、97年から名目マネーサプライ(現金通貨+預金通貨+準通貨+譲渡性預金(CD))の成長率が減少している。89年のピーク時の12%からいまでは五分の一程度に鈍化している。
それに対応して、フィリップス曲線は97年から典型的な右肩下がりを描いている。つまり、消費者物価上昇率が97年に2%弱だったのがどんどん減少するのに対応して、完全失業率がどんどん上昇している。(デフレ不況が進行しているということですー報告者注)ちなみに、96年から97年にかけて物価が0%から2%弱に急激に上昇しているのは、消費増税によるもの。増税分が物価に上乗せされたということ。
今まで述べてきたことは、次のようにまとめることができる。1983年から1993年の10年間に政府支出は2.06倍に伸びている。その結果、名目GDPは1.71倍に伸び、名目GDPに対する国債発行残高の比率は1.05倍とほぼ横ばいである。
次の10年間(1993~2003)には、政府支出は1.09倍と横ばい。その結果、名目GDPの伸びも1.02倍と横ばい。名目GDPに対する国債発行残高の比率だけが、2.31倍と2倍強の伸び。
では、1993年から2008年までの15年間ではどうかといえば、政府支出は1.06倍と横ばい。名目GDPも1.02倍と横ばい。名目GDPに対する国債発行残高の比率だけが、2.76倍と3倍弱の伸び。(消費増税と公共投資の大幅削減と日銀の金融引き締めが名目GDPの停滞を招き、財政悪化を招いたということでしょうー報告者注)
長期国債の名目利子率<名目GDPの成長率。これが国債の安定条件(ドーマー条件)。2000年以降、この条件を満たすことができていないので、財政は悪化の一途をたどっている。
その根本原因は、不適切なポリシー・ミックス、すなわち、消極的な日銀の金融政策と政府(財務省)の緊縮財政である。
以上が、講演の内容です。時間の関係で教授が触れることのできなかったところをレジュメから抜き出しておきます。
2012年1月、米国FRBは正式に「インフレ目標」(下限1%、上限3%、平均2%)を導入。過去実績打率8割。
そのことにあわてて、2月14日に日銀が「インフレの目途」導入を発表(ゼロ・インフレを許容し、上限が2%、平均が1%という低すぎるもので、達成時期もコミットメント(拘束力のある約束)も責任も不明確)。過去実績 打率1割。「偽インフレ目標?」
日銀法改正の必要性 コミットメンと責任を法律で明確に
Bloomsberg2012年4月4日の記事
「2月の追加緩和にかかわらずマネー急速減:日本の本気疑う声も」
嶋中雄二氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所長)のコメント「まるで金融引き締めを実施したような収縮ぶりだ」
現在の「偽インフレ目標」ではなく「真のインフレ目標政策」を
年率平均2%程度(下限はゼロではなく、プラス1%程度)のインフレ率とプラス4%程度の名目GDPの成長率を恒常的に維持する必要性(OECD諸国の過去10年間の平均並みに過ぎない)
20兆円規模の震災復興費用の全額を日銀引き受けで行うべき(復興増税は必要ない)
日銀問題の放置と消費税の増税は、日本を経済先進国クラブから脱落させる道
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〔パネルディスカッション〕16時~17時
☆モデレーター(いわゆる進行役) 勝間和代(経済評論家・中央大学大学院客員教授)
☆パネリスト 衆議院議員 小沢鋭仁(おざわ さきひと)民主党
衆議院議員 中川秀直(なかがわ ひでなお)自民党
衆議院議員 山本幸三(やまもと こうぞう)自民党
衆議院議員 浅尾慶一郎(あさお けいいちろう)みんなの党
衆議院議員 宮崎岳志(みやざき たけし)民主党
議員それぞれの発言を以下のようにまとめてみました。むろん、文責はすべて私にあることをお断りしておきます。
☆中川秀直:政治家として、マクロ経済政策の基本をふまえることがいちばん重要と思っている。金融政策と財政政策は車の両輪のようなもの。連携すべきもの。ムダの削減は、いつでもやるべきこと。金融政策は、物価と為替を決めるうえで重要な手段。日銀はそこから逃げている。デフレ脱却のために、政府・日銀間のアコード(政策協定)の締結でインフレ目標2%超を打ち出すべき。規制緩和などによる供給サイドの成長戦略も行うべき。制度改革のよる利便性の追求・サービスの向上も重要。歳出の削減は、アレシナ(ハーバード大学教授)らの、「財政再建に成功した世界の事例を調べてみると、公務員給与・社会保障費などの歳出の削減7割、増税3割の黄金比が見出される」という研究結果から見ても、重要。消費増税の影響は、増税分が価格に上乗せできないという形でまずは現われるはず。現在の消費税滞納額は年間約3000億円だが、今回の消費増税がそのまま実施されたら、年間一兆円ほどの滞納額になるのではないか。その結果中小企業の倒産件数は大幅に増えるはず。
中川氏は、自民党でただ一人、消費税法案採決を欠席しました。その経緯を自身のブログで述べているものを掲載しておきます。
6月18日に開催された「全議員・選挙区支部長懇談会」において、自民党執行部より、
①民主党はマニフェストを事実上撤回した
②社会保障国民会議による社会保障改革の合意がない場合には増税できない
③増税実施半年前の閣議決定の段階でデフレを脱却していなければ増税しない
等の説明があった。私は、翌19日の党総務会において、谷垣自民党総裁に対してこれらのことを野田首相に対して党首会談で確認することを求めた。
しかし、党首会談は開かれず、昨日の国会審議において野田首相は、民主党はマニフェストを撤回していないと公言している。このまま増税法案の成立をさせることは、「民主党の公約違反の増税に加担することはできない」、「衆議院の解散に追い込み、政権を奪還する」との自民党の平成24年度運動方針に反する可能性がある。
よって、私は現段階で増税法案に賛成することはできない。
同時に、国益に反する民主党政権を一刻も早く終わらせることが喫緊の課題であり、わが党が次期総選挙に向けて一致結束し、デフレ不況の脱却と安心できる社会保障の確立の鮮明な旗を掲げて闘い抜かなければならない。
参議院の審議の過程で、わが党同僚議員による、民主党のマニフェスト撤回と正しい政策の実現を強く期待しつつ、法案採決に欠席する。
☆小沢鋭仁:経済政策専門に政治活動をやってきた。「失われた10年」とも「失われた20年」ともいわれるデフレ不況とはいったい何なのかを10年ほど前から考えるようになった。2002年に枡添要一さんらと「アンチ・デフレの会」を発足させ、デフレについて勉強してきた。なかなか我々の考え方が多数派にならなかったのだが、勝間さんらとの共闘を組んだりするなかで、少しずつ永田町のコンセンサスが変わってきたように思う。しかしながら、政府は「脱デフレ脱円高」を目標として掲げているものの、いまだにこれといった具体策がない。だから、実は本気じゃないのではないか、脱デフレ・脱円高が必要だと本気で思っていないのではないかと思えてくる。日銀法改正はぜひとも成し遂げたい。ポイントは、日銀に掲げた目標が達成できなかった場合の結果責任を明記すること。それにしても、デフレ・円高についての問題意識の共有が難しい。これが最大のポイント。消費増税の景気条件(名目GDP成長率3%・実質GDP成長率2%達成)は、現状では留保条件にまったくなっていない。消費税については、デフレ下では税率を上げても税収が増えないことを理解すべき。増税については、マクロ経済政策の全体像のなかで考えるべき。「デフレは物価が下がるので悪くない。円高は、旅行するとき安くあげられるから悪くない。」そういう考え方がまだまだある。デフレは、経済停滞をもたらし、労働者の賃金を下げ、経営者にとっては、同じ努力をしても売り上げが減り、金利が変わらないので利子の支払いが大変になる。円高は、輸出産業にとって足枷になる。大変な問題であるという認識の共有が大切。政治家や官僚の間に「とにかく上げりゃあいいんだ」という感覚が蔓延している。財務省は、「消費増税に賛成したら予算をつけてあげるよ」という甘言で関係者を骨抜きにしようとする。諸悪の根源はデフレであり、デフレは貨幣現象なのだ、という認識の共有が大事。増税キャンペーンを展開する、大手マスコミの大本営発表が良くない。そんなことを繰り返しているマスコミはつぶれるに決まっている。NHKの大河ドラマ『平清盛』の人気がない。貨幣経済を日本に初めて導入したのは平清盛。しかし、日本人は経済のことがまったく分かっていない源氏の方がカッコいいと思っているし、こちらの方が人気がある。日本人はデフレが好きなのかもしれない。しかし、デフレに耐えるのがカッコいいという考えは正常ではないことに気づくべき。
小沢議員は、26日の消費増税法案の採決を棄権しました。その経緯についてご自身のブログで語っているのを掲載します。
私は26日、衆議院本会議において消費税増税など税制関連の2法案の採決を棄権しました。社会保障と税の一体改革関連8法案の採決のうち、社会福祉関係の6法案に賛成票を投じた後、議場を退席したのです。
私自身、消費税増税につき昨年の「民主党社会保障と税の抜本改革調査会」では会長代理を務め、政策論的に自分が方向性を示す責任者のひとりとして決めました。その経緯を踏まえると、今回の三党合意も『政策論としてぎりぎり許容範囲』といえるものでした。
しかし、前回選挙で『増税しない』とした国民との約束を反故にすることはできません。そこで、苦渋の決断として棄権を選択したのです。
今後は、今回の消費税増税法案にもみられるように、いつもゴタゴタした印象を持たせるとりまとめの過程を仲間と立て直し、民主党における政策決定過程の確立に汗をかいていく所存です。
「0増5減」の減員区での棄権議員となり、党からの公認の問題も生じる可能性もありますが、国民・県民の皆さまとの約束を破るわけにはいかないと考え、悩んだ末の選択でした。
☆浅尾慶一郎:税収は1990年がピークで60兆円だった。昨年は40兆円。3分の2に減っている。しかし、実質GDPは、1990年当時より大きい。それは、貨幣価値が高くなったデフレによるもの。だから、税収を増やすには、デフレから脱却するほかない。一つ提案したいのは、物価水準を測るGDPデフレーターに、土地や株や為替相場を含めるべきなのではないかということ。というのは、日銀が金融緩和をした場合、まっさきに反応するのは、株価であり、地価であり為替相場であるからだ。目下のデフレ下で、株価は四分の一くらいになり、地価は半分以下になっている。これらをGDPデフレーターに含めることを検討すべきではないか。消費増税について、財務官僚の頭の中には単純にかけ算しかないのではないか。5%で12兆5000億円の税収だから、1%上げれば2兆7000億円の税収増なので、5%上げれば2兆7000億円×5の税収増、くらいのことしか考えていないようだ。つまり、税率を上げれば単純に税収が増えると考えている。それが彼らの実情。財務省の人事評価は、増税が勝ち組、減税が負け組。日銀の人事評価は、利上げが勝ち組、利下げが負け組。それが実態。世間の感覚とかけ離れた、そういう人事評価を変えなければならない。軽減税率は財務官僚の権限が増えるだけだから危険。
みんなの党は消費増税反対が党是なので、浅尾議員ももちろん消費増税法案採決は反対票を投じました。
☆山本幸三:先の選挙で自民党はなぜ民主党に負けたのか。それは、デフレ不況のせいで国民の6割が自分たちは貧しくなっていると感じたからだと気づいた。デフレこそが政権交代の原因である。自民党は次の総選挙の公約に脱デフレ・脱円高を掲げている。それを実効性あるものにするために日銀法改正を公約に掲げるよう党本部をいま説得しているところ。消費増税は景気が加熱したときに実施すればいいもの。いまやることではない。今回は、消費増税法案に賛成した。それは、自分としては、日銀法改正と引き換えにした苦渋の選択だった。自公民三党協議をしたとき、自民党が民主党案のなかの景気条項を取り下げるよう求めたと聞いたとき、バカなことをするなと党本部に掛け合った。とにかく、日銀法を改正して、日銀に(政府とのアコードを締結して、コミットメントとして)インフレ・ターゲット政策を実施してもらわなければならない。そうして、予想インフレ率を高めてデフレから脱却しなければならない。今年の2月29日に財務金融委員会で白川総裁とやりあったとき、私が「日銀は、予想インフレ率を日銀の金融政策にきちっと応じて動いている物価連動債でその都度測るべきなのに、何故長期予想インフレ率なんてものを、怪しげなアメリカのコンセンサス・フォーキャストという会社の予測を根拠に鵜呑みにするのか」と質問したことがあった。欧米の中央銀行は、物価連動債で予想インフレ率を客観的に測定している。また、普通の予想インフレ率は長くても二、三年である。それに対して、このわけのわからないコンセンサス・フォーキャストというアメリカの会社は、六年から十年の予想インフレ率を出している。そこで「メド1%」という数字が出てきている。こんな検証の可能性が極めて低い数値によって政策決定するなんていい加減なことはよせ、と提言した。
財務官僚たちでマクロ経済政策を分かっている人なんて一人もいない。彼らの間では、増税すると仕事をした、という評価である。日銀の金融政策が功を奏して景気回復し、税収増が実現して財政内容が良くなったら困るから、日銀は財務省が増税を実現するまでは、まともな金融政策はちょっと控えてくれ、という阿吽の呼吸でやっている。白川総裁がまた「生産年齢人口が減るとデフレになる」なんてデマを飛ばしたので、きっちりと調べて論破した。デフレは物価を下げるからいいものだと真顔でいう議員もいる。固定相場制のときの頭のままで切り換えができない。ジェネレーション・ギャップは確かにある。日銀法改正を争点に政界再編をすべき。小沢新党はそれを織り込むべき。アメリカの経済学者のクルーグマンは、新卒の若者が給料の安い会社に入ったらほぼ一生その状態のままである、と言っている。日本の若者は、一五年間そういう状況下に置かれている。デフレ脱却は焦眉の課題である。
五人の議員のなかで一人だけ消費増税法案に賛成した山本議員は、いささかやりにくそうだったように感じられたのは私の気のせいでしょうか。
☆宮崎岳志:最近日銀の人事異動があった。企画局長というエリート中のエリートのポストに就いた内田氏が新任の挨拶に来たとき、年来の疑問だったことを尋ねてみた。それは、「資産買入等の基金」の中になぜ資産項目と貸出項目がごっちゃになっているのかという疑問である。内田氏の答えは「それは金利なんです」。つまり、オーバー・ナイト(超短期)の貸出の金利をまず0%に近づけ、次にそれよりやや長めのものの金利を0%に近づけ、その次に国債の一年以内のものを0%に近づけ、二年ものを0%に近づける、という考え方でああいうふうにズラリと並んでいるのである、と。それで年来の疑問が氷解した。日銀の「資産買入等の基金」は、金融緩和のためにあるのではなくて金利政策のためにあるのだ、と。つまり、日銀はゼロ金利政策だけに責任を感じているのであって、消費者物価指数や雇用などには責任を持ちたくないというのが本音のようだ。財務官僚と日銀官僚のマインド・コントロールも大きな問題。金融緩和の必要性を他の議員さんに訴えようとすると「それは危険だ」という反応がかえってくる。別に深い考えがあるわけではなく、単に財務官僚や日銀官僚がそう言っていた、ということらしい。さらに、「そんな簡単なことでデフレ不況から脱却できるなら財務省や日銀はとっくにやっているはずだ。でもやっていない。彼らがやっていないことはダメだ」となる。
(私自身、これに類することをたくさん体験しています。『お前が偉そうに言うことくらい、お前より頭の良い財務官僚や日銀が思いつかないはずがない。その彼らが、お前の主張をダメだと言っているのだから、お前は間違っている』という露骨な反応が透けて見えることがしょっちゅうです。日本人の官尊民卑は骨がらみのようですね。それを別名百姓根性と言います。これを隠し持っている人間に対して私はとても敏感なようです。これが実は民主主義の最大の敵ではないかと私は感じています―報告者コメント)
財務官僚や日銀官僚にとって、デフレは天災のようなもの。増税や金融引き締めによってデフレが生じても、それはたまたま起こったことで、自分たちの振る舞いとは関係ない。運が悪かったね、で済んでしまう。デフレの何が問題か。それは、雇用がなくなるからいけないのだ、という認識を共有することが大事。
☆☆☆☆☆
政治家や官僚の世界を身近なものとして知らない私にとって、衝撃的な事実が次から次に明らかにされた観があります。これらを踏まえて、これから物事を考えるようにしたいと思っています。みなさんにとっても、有用な情報がいくつかあってくれればと願っています。
最後に、モデレーターの勝間和代さんの進行ぶりがお見事だったことを申し添えておきます。明朗で、頭の回転が早くて、物事を的確にテキパキとこなす能力が高い人です。しかし、自分の才にばかり恃むのではなくて、人とのつながりを大切にしている感じがしました。これから、もっと大きな人になるような気がします。