どうでもいい四百字 第二中間貯蔵施設

あってもなくてもいいもの。

どうでもいい四百字 3081

2021-06-14 18:36:59 | 時間の無駄
棚田の風景は麗しい。それと同時に物悲しくもなる。稲作に向かない斜面を段々に整地し、地形に沿って寸土を惜しみ耕し尽くす。湧水が無ければ溜め池を造り、それが無理なら慈雨を乞い願い、最終手段として麓から水を汲み上げる。これらは全て、コメの呪縛である。他の農産品より美味いと云うのもあろうが、明治以前では石高が藩の経済力そのものであった。貨幣経済が浸透した江戸後期には各地に特産品が生まれる様になったが、あくまで補完的なものでしかない。ライスイズマネー、と当時も言ったかどうかは知らないが、雑穀の適地であっても無理矢理稲田として開墾しなくてはならなかった。その文化遺産が棚田である。しかし現在、コメの呪縛は無いに等しい。保存と観光化に熱心な所を除けばメガソーラー発電所になるのも時代の流れだろう。人の欲望が大地に刻んだ爪痕である事には変わりは無い筈なのに、棚田の様な麗しさが感じられないのが不思議なのである。