この前行った尾道に刺激されて、志賀直哉の「暗夜行路」と林芙美子の「放浪記」を読んだ。
「暗夜行路」の尾道の描写、今もそのまま。
よく描けている、というか尾道、今もさほど変わっていないのだろう。
しかし「暗夜行路」と「放浪記」、どちらも自伝的な作品。
しかも尾道にいたときは5年くらいの隔たりはあるものの、時代もほぼ同じ。
でもなんという境遇の違いがあるのだろう。
三軒長屋に間借りしてた直哉。
風呂もトイレもない。
狭い2部屋と炊事場。
最初見たときその貧しさが意外だったけど、あくまで原稿を書くための仮の宿。
炊事などお隣さんに任せていた。
そして一つの作品も書き上げることなくあちこち観光旅行をしていた直哉。
でも当時作品がやっと売れ出した・・・稿料だってわずかなものだっただろう。
それなのにこんな景色のいいところで曲がりなりにも優雅な生活がおくれた直哉。
それに比べると浜の傍。
浜側は壁。
狭い2階の1室で家族3人かつがつその日ぐらしをしていた学生時代の芙美子。
直哉にとっては仮の宿、
芙美子にとっては生涯の心のふるさと。
直哉はほんの1年、芙美子もほんの5~6年。
でも二人の心に尾道の暮らしはしっかり刻まれている。
しかしあえて水を差す。
「暗夜行路」~それぞれの章はとってもしっかりしている。
でも全編を通して読むと、これが日本の小説を代表する作品の一つなのかなぁ~と思いがっかりする。
やっぱり直哉は短編にとどめていた方がよかった。
この作品からもいい短編小説がいろいろできたのに・・・と思う。
「放浪記」~これはもはや小説ではない。これが芙美子の出世作。
当時ベストセラーになってたらしい。
女性一人での放浪暮らし、当時は珍しかったのかもしれない。
でも今では珍しくとも何ともない。
ついでに他の作品もいくつか読んだ。
この方がもっといいと思う。