「タルチュフ」を読んだ。
この訳で「読む」のでなく「劇」として見た場合どうだろう?
最初の笑わせどころ、2日間留守にして帰ってきた主人が召使に聞く。
留守中何もなかったか?
「奥様がおととい熱を出して、夕方まで下がらず苦しんでおられました」
「で、タルチュフは?」
「ぴんぴんしてます。でっぷり太って脂ぎって・・・」
「気の毒なお方だ・・・」
「奥様は夕食は全くお食べになれませんでした」
「で、タルチュフは?」
「奥様の前で一人でたらふく食べてました」
「気の毒なお方だ・・・」
このような会話がしばらく続く。
昔読んだ本では確か「気の毒なお方だ・・・」ではなく「そうかい、そうかい」となってたように思う。
この方が劇としてはぴったりくる。
「気の毒なお方だ・・・」というのはきっと直訳だろう。
でもこれではうけない。
訳者は仏文系の人らしい。
演劇関係者の人が訳したらもっと違ったものになっただろう。
日常会話ではほとんど使われることが無くなった「・・・ですわ」という女言葉。
この「わ」言葉が全集ではやたらと出てくるのも翻訳調で不自然な印象を与える。
全集によく出てくる「詩」も詩になっていない。
詩を散文で書いている。
ところで「タルチュフ」の話し、途中まではよく覚えてたのだけど、最後はどうなったかな?
実はよく覚えていなかった。
そして再読してみてわかった。
いかにもとってつけたような終わらせ方。
タルチュフの悪だくみに財産すべてを失われしそうになったとき、
国王の裁定によって財産はのこされ逆にタルチュフが逮捕される。
そして国王をたたえて劇は終わる。
実はこの作品は王・ルイ14世がヴェサイユ宮殿で主催した7日間に及ぶ祝祭劇の一つとして上演された。
そのために王をたたえて終わるというのは自然なことだったろう。
ただしその時は3幕までしか上演されなかった。
この祝祭の時は「タルチュフ」だけでなく、「エリード姫」「はた迷惑な人たち」もそして最後は「強制結婚」で締めくくられ、それだけでなく他の日もモリエール劇団はバレーなどにたびたび登場するという、モリエール劇団がもっとも輝いたイベントだった。