6/23 中村浩子 And then 第46話
お久しぶりですと声が言った。
これからあなたの解剖を始めます。
益田は固定された手足にも関わらず乱暴に動いた。
すると、体をちょっと斜めにされて、背骨辺りに注射を感じた。
おとなしくなさってくださいと浩子が言った。
まもなく浩子が言った。
チックっとします。 感じましたか?
益田は感じたけど、感じたと言えない。
舌が動かない。
感じるようですね。
さっきの注射であなたは痛みは感じるけど動けなくなったのです。
もうしゃべることができません。
益田は落ち着けと自分に言った。
あの声は浩子の声の合成だ。
でも言い返せない。
益田は下腹部に激しい痛みを感じた。
今、あなたの陰嚢の片方を切開して、精巣を一個取り出しました。
もうひとつは陰嚢ごと切除しました。
これからあなた自慢の陰茎を切断します。
切り落とした音が聞こえた。
大丈夫、まだ出血は多量ではありません。
益田は聞こえることからやられたことを想像できたが
激痛はどうにもならなかった。
うなることもできなかった。
これから次のオペレーションにうつります。
そう聞えると白衣の男が見えるところに来た。
さあ、口を開けて。
益田は片方の頬の内側に何か入れられた。
それからもう片方の頬の内側にも何か詰められた。
頬にあなたの精巣を詰めました。
どうです、お味は?
さあ、口を大きく開けてください。
あなたの陰茎が入りますよ。
益田の口の中に陰茎が突っ込まれた。
それでは良い旅を。
浩子の声が消えた。
益田は青いビニールがかけられていくのがわかった。
激痛、しかも呼吸困難、でも体は指の先も動かない。
車に乗せられるのがわかった。
もうろうとしていく意識の中で車が動きだした。
車が再び止まった時に益田の意識はまだあった・・・・かもしれない。
そして益田の体は冷たい石の上に置かれた。
その日は日曜日だった。
裁判所は閉館だった。
益田が発見されたのは月曜の朝だった。
死体が見つけた誰かが110番した。
足の間に血だまりがあった。
そしてそれが数日前から行方不明だった益田とわかったのは
それから2時間も経たないうちだった。
益田の状態から 仕返し殺人 と警察はすぐに思った。
浩子の遺族?
しかしあの夫婦に? 嫌、やるなら夫だ。
鑑定で、益田の切り傷はプロの仕事で、もしかしたら
どこかの外科医が・・・・という噂はすぐ立った。
第一発見者のスマホの写真のおかげで、益田の顔と股間はアップでSNSに
載せられた。
警察は第一発見者の3枚目の写真を公表することを禁じた。
警察の発表以前に益田が残酷なやり方で殺害されたことが世界中に知れ渡った。
誰もが浩子の仕返し殺人と好きかってに意見を述べた。
浩子の夫、雄二は浩子の両親と住んでいた。
ちょうど土曜の晩は、某週刊誌の記者が来ていた。
その記者は夫と両親の気持ちをインタビューしていた。
アリバイ成立。警察が彼らを疑う余地はなかった。
そのニュースを雄二も両親もすぐ知った。
雄二はSNSのサイトを探した。
そして見つけた。
両親に言うべきか迷ったけど、彼らは雄二の行動を観察していたので
同時に益田の顔と股間のアップの写真を見た。
雄二がサイトを見つけたとき、両親は雄二の後ろにいたのだ。
誰がこんなことを・・・・両親は言った。
雄二は沈黙していたけど、スカッとした。
益田が外科医なのに浩子を残忍な手段で殺害した後、
仕返しに益田を切り刻みたい思いの人はたくさんいた。
誰も益田に同情しなかった。
警察は3枚目の写真と益田の腹部を見比べた。
まさしくそれは腹部の写真だ。
腹部には益田の筆跡で浩子の殺害へ対する謝罪文がプリントされていた。
肉体にプリント、益田は相当熱い思いをしたに違いなかった。
益田を殺害するために、加害者はマックスに益田を苦しめた。
何人がこの殺害に参加したか、どこで殺害されたか不明だった。
その後も調査は続いたけれど、発見できなかった。
予定されていた益田の判決の日である9月には
もう益田のことを思いだす人たちは多くいなかった。
警察は模倣事件が起こらないように
外科のある各病院にそれなりの勧告をしていた。
各病院も病院の名誉のために細心の注意を払った。
書き加えたいことがあればまた追加します。
一応完。