むかし、すっごく親しくしていた幼馴染とも言える1学年下の男子が亡くなった。
会社を経営していた彼は、資金繰りがショートし自らの命を絶った。
お気に入りの車の中で亡くなっているところを明け方発見されたらしい。
私がゴルフ大好きになったのも、そいつが熱心に教えてくれたから。
男だらけのコンペは嫌だと言う私を無理やり引っ張り出した。
「こういう場所でやらんとうまくならんぞ! いーから俺に任せとけ」
任せとけ と言いながらも、ラウンド中親切に教えてくれるわけでもなく、ほったらかし。
気を使ってくれるでもなく、自分のプレイに没頭するだけ。
けれど帰りの車の中で
「あのショットは最高やったね。うまくなったな」
言葉少なに誉めてくれた。
見ていないようで見ていたのだ。
あからさまな親切や、おべっかや、誉めるような事はほとんどしない。
私を女として扱おうとはせず、常に公平で、それでいて飲み会の席では
「女は弱いんだから、男の中で金なんて払わんでもいい。お前は人がイイから払いたがるけど俺らと一緒にいる時は払わんでいいから」
と払わせなかった。
ずーーっと連絡が途絶えていた。
物凄く久しぶりにそいつから連絡が入ったのは、一年前の今頃。
「お元気ですか?久しぶりにカラオケ行きませんか?」
お互いに時間が取れず、ようやく逢えたのはそれから半年後の今年の春だった。
すっごく懐かしくて、一緒に遊んでた頃の話で盛りあがった。
20代後半から30代前半にかけて、連日連夜、しこたま酒を飲み、カラオケにビリヤードにと繰り出した。
仲間内の誰も結婚しておらず、みんな遊びほうけていた。
あの、大バカとも思えるあの頃が、今にして思うと何も考えなくてよくって幸せだったなぁ・・・・
二人してそんな話になった。
「ねね、またあの頃みたいにみんなでカラオケ行きたいわぁ」
私がそう言うと、そいつがぽつりと言った。
「・・・行けるかなぁ・・・もう無理なんじゃね―の?」
「ええええ そんな事ないっしょ?今すぐにはアカンかもしれんけどさ、みんなが70歳くらいになったら男とか女とか関係なく、お茶でもすすりながらカラオケ行けるんちゃうの?」
「はははは そうだな。その頃ならいいかもな。そうだなぁ・・・行くか!またいつかみんなで」
「うんうん。それまであーたも勿論、みんなも元気で頑張っといてくれんとあかんよ!」
「・・・そだな・・・頑張らんとあかんな」
奴が死んだとの知らせが届いた時、その時の会話がまっさきに浮かんだ。
約束したじゃない あの時の約束を果たさないままってなんでやねん!
長生きするんじゃなかったんか!
いつか、何十年後、私が地元に帰るような事があれば、そいつも含めた昔の仲間達と、よぼよぼとした足取りでラウンドするものだとぼんやりと思っていた。
お茶をすすりながらカラオケボックスに行くのだと普通に思ってた。
逢えなくても、顔を見なくても、どこかでちゃんと生きてる事が普通だと思ってた。
MISIAの 「逢いたくていま」
私が大好きな曲で、カラオケでもたまに歌う曲。
「やっぱり久しぶりにお前の歌を聞かんと帰れんわ。まだちょっと時間あるか?」
春に久しぶりに逢った時、1時間だけカラオケボックスに入った。
『逢いたくていま』
私がそいつに聞かせた最後の曲である。
じぃーっと聞き入っていた奴が、その時微かに涙ぐんだ。
「なんだよぉー なに泣いてるねん!」
「いやぁ・・・ええね。感動したわ」
「えええ 感動するならもっと号泣してくれなくちゃ!」
「そやね・・・いつか、みんなでカラオケ行ったらさ、お前またこの曲歌ったらええわ」
逢いたくていま の歌詞は切なすぎる。
ヤバいくらいにそいつに向けての歌のようだ。
私は多分、この曲を歌う度に思い出すと思う。
その時の事を思い出し、泣いてしまうかもしれない。
でもね・・・頑張って歌うわ(笑)
「いやぁーしかしさ・・・お前が本当に幸せそうで良かったわ。本当に良かったなぁ」
「それ、あんたと一緒にならんかったからちゃうの?(笑)」
「そーだな!(笑)はっはっは お前さ、俺と一緒にならんで良かったな。あの時お前が断ったのは正解やったという事やな(笑)」
カラオケボックスを出た後の奴との会話である。
ばかもの!
こんな形で正解を出してくれなんて誰が頼んだんじゃあほ!!

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会社を経営していた彼は、資金繰りがショートし自らの命を絶った。
お気に入りの車の中で亡くなっているところを明け方発見されたらしい。
私がゴルフ大好きになったのも、そいつが熱心に教えてくれたから。
男だらけのコンペは嫌だと言う私を無理やり引っ張り出した。
「こういう場所でやらんとうまくならんぞ! いーから俺に任せとけ」
任せとけ と言いながらも、ラウンド中親切に教えてくれるわけでもなく、ほったらかし。
気を使ってくれるでもなく、自分のプレイに没頭するだけ。
けれど帰りの車の中で
「あのショットは最高やったね。うまくなったな」
言葉少なに誉めてくれた。
見ていないようで見ていたのだ。
あからさまな親切や、おべっかや、誉めるような事はほとんどしない。
私を女として扱おうとはせず、常に公平で、それでいて飲み会の席では
「女は弱いんだから、男の中で金なんて払わんでもいい。お前は人がイイから払いたがるけど俺らと一緒にいる時は払わんでいいから」
と払わせなかった。
ずーーっと連絡が途絶えていた。
物凄く久しぶりにそいつから連絡が入ったのは、一年前の今頃。
「お元気ですか?久しぶりにカラオケ行きませんか?」
お互いに時間が取れず、ようやく逢えたのはそれから半年後の今年の春だった。
すっごく懐かしくて、一緒に遊んでた頃の話で盛りあがった。
20代後半から30代前半にかけて、連日連夜、しこたま酒を飲み、カラオケにビリヤードにと繰り出した。
仲間内の誰も結婚しておらず、みんな遊びほうけていた。
あの、大バカとも思えるあの頃が、今にして思うと何も考えなくてよくって幸せだったなぁ・・・・
二人してそんな話になった。
「ねね、またあの頃みたいにみんなでカラオケ行きたいわぁ」
私がそう言うと、そいつがぽつりと言った。
「・・・行けるかなぁ・・・もう無理なんじゃね―の?」
「ええええ そんな事ないっしょ?今すぐにはアカンかもしれんけどさ、みんなが70歳くらいになったら男とか女とか関係なく、お茶でもすすりながらカラオケ行けるんちゃうの?」
「はははは そうだな。その頃ならいいかもな。そうだなぁ・・・行くか!またいつかみんなで」
「うんうん。それまであーたも勿論、みんなも元気で頑張っといてくれんとあかんよ!」
「・・・そだな・・・頑張らんとあかんな」
奴が死んだとの知らせが届いた時、その時の会話がまっさきに浮かんだ。
約束したじゃない あの時の約束を果たさないままってなんでやねん!
長生きするんじゃなかったんか!
いつか、何十年後、私が地元に帰るような事があれば、そいつも含めた昔の仲間達と、よぼよぼとした足取りでラウンドするものだとぼんやりと思っていた。
お茶をすすりながらカラオケボックスに行くのだと普通に思ってた。
逢えなくても、顔を見なくても、どこかでちゃんと生きてる事が普通だと思ってた。
MISIAの 「逢いたくていま」
私が大好きな曲で、カラオケでもたまに歌う曲。
「やっぱり久しぶりにお前の歌を聞かんと帰れんわ。まだちょっと時間あるか?」
春に久しぶりに逢った時、1時間だけカラオケボックスに入った。
『逢いたくていま』
私がそいつに聞かせた最後の曲である。
じぃーっと聞き入っていた奴が、その時微かに涙ぐんだ。
「なんだよぉー なに泣いてるねん!」
「いやぁ・・・ええね。感動したわ」
「えええ 感動するならもっと号泣してくれなくちゃ!」
「そやね・・・いつか、みんなでカラオケ行ったらさ、お前またこの曲歌ったらええわ」
逢いたくていま の歌詞は切なすぎる。
ヤバいくらいにそいつに向けての歌のようだ。
私は多分、この曲を歌う度に思い出すと思う。
その時の事を思い出し、泣いてしまうかもしれない。
でもね・・・頑張って歌うわ(笑)
「いやぁーしかしさ・・・お前が本当に幸せそうで良かったわ。本当に良かったなぁ」
「それ、あんたと一緒にならんかったからちゃうの?(笑)」
「そーだな!(笑)はっはっは お前さ、俺と一緒にならんで良かったな。あの時お前が断ったのは正解やったという事やな(笑)」
カラオケボックスを出た後の奴との会話である。
ばかもの!
こんな形で正解を出してくれなんて誰が頼んだんじゃあほ!!

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