
「兄の純粋培養」 はじめてのコンサート
ピアノ教室をやっていたゴッドマザーが私とお兄ちゃんを
はじめてのコンサートへ連れて行ってくれた
冬になりかけの寒い夕刻、おそろいのダッフルコートを着て
マザーといっしょにバスに乗った
1時間以上ゆられ 大きな町の立派なコンサートホール
はじまる前のおとあわせに 胸ががばっとひらくようなドキドキ感
クラシックってこんな感じ? といわせるようなビロードっぽい匂い・・・・
マザーはひいきの指揮者がコンサートマスターになったとかで誇らしげだった
音を愛するお兄ちゃんは髪の毛一本一本まで神経がたかぶった感じだった
私はキョロキョロしながらも長い演奏に たぶん 耐えた
家にかえってお兄ちゃんはレコードをかけた
「あっ、おんなじ・・・おんなじだぁ・・!」と ビクターの犬にかけよる私・・・
その時 いつも甘あまの兄の見たこともない目つき・・・
たった一瞬、彼はわたしをさげすんだ・・・たしかに
あとにもさきにも 彼のこんな目を見たことは ない・・・・・・・
バッタリ再会
これから1時間後に
同級生だったM男と久々に会うそうだ
「早く私のこと 忘れてほしいのにね、
まいるわよ」
・・・と まんざらでもない顔が
おかしくてたまらない
Parcoでウインドーショッピング
下りのエスカレーターに乗った私たち
上りのエスカレーターからは
M男と見知らぬ彼女・・・
スローにスローにすれ違う
上りと下り
横に立っていたS子の
あんな顔 見たことない・・・
マズイ空気に
救命ボート出せなかった私
すれちがいざまのこおりついた口角
それをすきとおった目で追う王妃・・・
ある夏のできごと・・・