一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

ユニバーサルデザインについてどう思いますか?

2007年10月14日 13時10分57秒 | 建築家の日記
みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。

「ユニバーサルデザインについてどう思いますか?」とかわいい女の子から質問を受けました。このことについていろいろな人に意見を聞くことが、学校の課題とのことでした。

小さなメモ用紙とボールペンを手に持って、私のコメントを書留めようとしていました。

「とても、その小さなメモ用紙には書ききれないので、メールで送りますから。」と返事をしたが昨日。



昨日は、その質問を受けた竣工検査の現場から事務所へ戻ったときには、設計打ち合わせのお客様が既にお待ちになっていました。この設計打ち合わせの話がほぼ終わりかけたときに、電話相談が入りました。「契約した工事業者が倒産して…設計監理だけでもお願いできるでしょうか?」という深刻な内容でした。

お話を聞いてみると、設計監理や住宅検査をお受けするかどうか以前の問題として、良い品質の住宅や同じトラブルを避けたいとご希望なら、今のお考え自体をもう一度考え直さないと無理ではありませんか?という結論のアドバイスを、遠方からお掛けでしたが多分1時間くらい電話で話をしました。

打ち合わせしていたお客様と最後の挨拶もすることなく失礼してしまい、私が出掛けなければならない時間を過ぎていたので、あわてて出掛けました。その後は遠方へ泊まりで仕事に行っていましたので、翌日となる今日、先ほど事務所に戻りました。

お子様からのご質問も、電話による突然の相談も忙しいから迷惑というつもりはなく、私にできる範囲で状況を判断して行っていますので、気にしないで下さい。

相談者には厳しい意見や甘い考え方を否定する厳しいアドバイスとなるときもあります。忙しくても相談は無料で社会貢献の意味で本音で行っていますので、お許し下さい。



まもなく出掛けますので、ユニバーサルデザインについてどう思うか?という質問に答えてから出掛けたいと思います。

この質問にすぐ答えなかったのは、ひとことでは小さなお子様には難しい哲学にしか聞こえないコメントになってしまうためと、それは私にとって、ひとことで答えて終わらせられない大切な質問でもあったからです。(笑)




ユニバーサルデザインという考え方を発表したロナルド・メイスという人は、建築家でもあり工業デザイナーでもあったはずです。ユニバーサルデザインという考え方を提唱してまだ20年数年しか経っていないでしょう。私が社会人となって活動してから以降に出てきた考え方だったと思います。

建築を設計する者にとっては、その言葉が存在していようといまいと、その概念自体は潜在的に考え方の大前提となる選択肢のひとつとして存在しているはずです。



工業デザインをなさっている方は、ユニバーサルデザインを充分意識していると思いますが、日本ではユニバーサルデザインよりも一般の人には、バリアフリーという言葉の方が、意味を含めてより認識されているかもしれません。

似たような意味でも使われていますが、おわかりになっている方も多いように、バリアフリーは障害を取り除くという意味が強く、障害をお持ちの方や高齢者のためという意味合いが強いです。住宅では、段差や手摺りなどをすぐに思いつきますね。

(このバリアフリーについても、簡単には答えられないので、あまり触れずに流します。)

ユニバーサルデザインは、障害者や高齢者はもちろん、ひとことでいうと全世界の人々のためにということを意識していますから、もっと幅広くなります。

私の個人的なイメージでは、どちらかというとバリアフリーはマイナスを無くしてゼロにするというイメージが強くなり、ユニバーサルデザインは積極的にプラスを加えていくというイメージが何となくあります。

バリアフリーは当然の義務のようであり、ユニバーサルデザインという概念の方がより前向きな感じがするのです。

広義に解釈すればこれらの概念の対象となりうるものはかなり広く、人間生活のほととんどすべてに適用可能でしょうが、私の立場から住宅ということに限定してお話してみましょう。


建築の中でも注文住宅を設計する者にとって、特に日本では、ユニバーサルデザインを意識して積極的に取り入れて行いたいという気持ちと、それを完全に無視して設計するという両面を持たざるを得ません。

公共の建物であれば、ユニバーサルデザインを強く意識して設計を行っていくことは前提となります。老若男女、様々な人が利用するからです。


住宅は…。日本と欧米とでは、ある意味において考え方の前提が異なります。
これは、住宅の寿命が全く異なりますし、住宅に対する考え方も部分的に異なるからです。

欧米では、たとえ所有していても、その住宅は自分たちだけの家ではないという意識があります。少なくとも、住宅の方が、自分たちよりもずっと長く存在し続けて、他の所有者に引き継がれていくのが当然だという意識があります。

また、住宅はその街の景観を創っている、公を担っているという意識が欧米ではあります。外観や色の規制が強く町並が美しいのもこのためです。


日本の住宅、特に注文住宅では、自分たちの家、自分たちがいかに使いやすいかという個別性、特殊性、独自性を叶えるためのものという前提があります。長期で考えても、将来の2世帯やご家族のライフスタイルの変化について考える程度です。

住宅は100年以上建っているのが普通であり、今の期間は自分たちのものだけど、将来は会ったこともない他人が所有して使っていく社会的な財産だという意識はあまりお持ちでは無いでしょう。

住宅といえども公のもので街づくりの大切な責任を担っているという考え方があれば、最近のニュースでもありましたが、外観デザインが奇抜過ぎて近隣から有名人が訴訟されるということも無いはずです。


住宅を設計する者としては、長く引き継がれて誰が使っても喜ばれる普遍性のある住宅にしたいというユニバーサルデザイン的な考え方は、私は他の設計者より強くあるほうです。

土地の狭さも大いに影響しているのですが、その反面、

個別の個性や要望を最大限に尊重して、世界中どこにもない唯一の想いを詰め込んだ住宅を実現するために設計したいという気持ちも、強くあります。


実際は、設計依頼される方の要望に対して様々な面で話し合って最適解を決定します。その際に、設計者はユニバーサルデザイン的な考え方が重要になります。一般的に使いやすい設計なども話し合うことで、自分たちの特殊解がハッキリします。

それがわかって初めて、特殊解を選択するのか、将来を考えて一般解を選択するべきかを考えることができるのです。


さて、まとめましょう。今までの難しい話はご両親に簡単に解説して頂くことが前提になります。今までの話が理解できなくても、お嬢さんからの私のインタビューの答えは、


「現在、ユニバーサルデザインの考え方が実践されて造られているものは、細かい部分での気配りという面が強いです。でも、ユニバーサルデザインという考え方の底には、世界中の人々を想いやる優しい心があると思います。この考え方を物や街や建物を造るときはもちろん、もっと広く世の中のルールや法律を考えるときにも使われるべきものだと思います。そうすれば、きっと世の中から戦争は消え、飢えで苦しんで亡くなっていく子供たちや、貧しくて学校に行けない子供たちもいなくなります。世界中が幸せな気持ちで毎日暮らせるようになるでしょう。

住宅の設計に限って言えば、その家に住む家族の生活様式や個性を尊重した上で、ユニバーサルデザインの考え方を積極的に取り入れていけば、もっと良い住宅になっていくと思います。ユニバーサルデザインの概念は普遍的なものですが、住宅に適用されていくユニバーサルデザインは、世の中の変化や進化にあわせて、これからもどんどん進化していってくれるでしょう。」

ということで…。




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