一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

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建築士って信頼できる?

2007年02月26日 18時30分26秒 | 住宅の材料を考える
こんにちは、清水です。

2007年2月23日のブログに対して、

「姉歯さんの耐震偽装問題の場合を含めて、個人の建築士や設計事務所の方が信用できないのでは?」とのメールを頂きました。

おっしゃる通り企業が潰れるという点では、個人や零細の方が規模的に信用でせきません。
ただ、大企業で長く存在しているからといって、必ずしもすべて誠実に対応してくれていないことは、皆さんも最近のニュースからでもだんだん気づいてきたでしょう。

ここで勘違いされているのは、姉歯さんも含めて建築士が偽装するケースは、そこに住まれる方から直接工事の依頼を受けているのではなく、あくまで企業の下請けで仕事をもらって生活をしているケースです。これは、その企業の社員よりさらに弱い立場になりますから、逆らったり嫌われたりすると仕事が廻って来なくなるのです。その建築士が誰の顔色をみて設計や監理をしているかは、明らかでしょう。

私が、第三者の設計や監理の大切さを説いているのはそのためです。例えば、皆さんが設計事務所を選んで設計を依頼して、直接費用を払い、工事業者に対して設計監理の立場で依頼し契約したら、その建築士は構造計算を偽装する必要はありませんね。その建築士は皆さんのために仕事をするのです。工事業者から依頼を受け仕事をもらう建築士とは、立場が180度違うのです。

このことを勘違いしてはいけません。大切なことなのです。私が以前行ったカナダのバンクーバーでは、工事業者と設計は兼務できません。どちらも専業でなければなりません。日本のように、設計して工事も監理も同じところがする、または外部の建築士に委託して書類上の形だけ建築士の監理を置くケースとは、根本的に異なります。

建築を知らない素人が、なまじの勉強で知識を詰めても、プロの業者には勝てません。欠陥住宅までとは言わなくても、ひどい住宅をこれが当たり前だと思ってお住まいになっているわけです。住宅の品質を本当に求めるのであれば、専門家が専属で皆さんの味方にならない限り、今の日本のシステムでは無理だと思います。例えご心配の設計に問題が無くても、実際になされている工事にはもっと問題があります。

現在、姉歯さんの問題以降、様々な規制や対処方法を論じていますが、私の本音の感想はどれも実質的には子供騙しだと思っています。工事を行う大手建築企業の顔色を伺った範囲での思考でしかなく、本質的な解決にはなりません。シックハウス法や住宅性能表示制度も同じレベルです。

耐震偽装問題などを本当に解決するには、設計や監理と工事業者の兼務は無くし、建て主や住まい手が直接設計監理を依頼するシステムにして、建築士に設計や監理の責任を負わせるべきです。そうでなければ決して問題は解決しませんし、皆さんがお住まいになる日本の住宅が世界に誇れるものになることはありません。

現在の日本にいる建築士の資格をもったほとんどの人が、工事を行う企業に雇われて従業員として働いているか、独立していても工事業者の下請けで生活している設計事務所です。この状態のままで建築士に責任を負わせるシステムにしても、企業は利益優先の中で考えて手を打っているのですから、意味が無いでしょう。

建築士でなくても実質的な雇い主の方を向いて仕事をすることは、その立場を考えれば止むを得ません。子供の教育を預かる先生も、命を預かる病院のお医者さんでも同じです。皆さんだって、お仕事されていれば、そうなるのではないでしょうか?

私もそうです。だからこそ大赤字で苦しくても下請けや代願など一切せず、皆さんから直接仕事を頂き、自分のポリシーを貫き続けることができるだけのお金を溜めてから8年前に独立したのです。私には上司も雇い主もいません。基本的な考え方を理解して頂けない方の場合には、仕事も頂かないようにしています。スタッフを育てているとはいえ、ほとんどが私の力量で決まるので、私がこなすことができる仕事の量に限りがあり、お受けした以上は、誠心誠意尽くしたいからです。


個人の建築士だから信頼できるかできないかと断定的に論じられないことはおわかりになっているとは思いますが、

同じ一級建築士でも、そのポリシーや技量、考え方が異なる様々な人がいることは当然です。建築士に限らずどの仕事の分野でも様々な人はいます。建築士に直接依頼する場合、事前に相手の考え方などを知って依頼した方が良いことは間違いありません。

ミタス 一級建築士事務所 清水煬二
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