平成24年2月15日、突然上司に呼ばれた!
「君は、子供が2人居るので会社の為に東電の福島第一原発の現場に20日程行ってくれないか?」
「うちの会社が納めた製品だから、なんとか協力してくれないか?」
「特別手当は出すし、会社は君の愛社精神を大いに評価するよ!」
と言われた時は、一瞬、目の前が暗くなってしまいました。
とうとう私の番が来たのか!
これで私も、子作りの出来ない身体に成ってしまうのか!
仕方ないな!
「20年くらいすれば身体に影響が出るかもしれないが・・・まあ強制ではないので・・・」
ということで、職場に帰されたが即答できなかった自分に腹が立つ!
会社に勤務して、27年ここまで無難に仕事をこなしてきたので、その集大成がこれかもしれない!
顔全体を覆うマスク、ゴム手袋、長靴のほか、普通の作業服の上にガーゼのような白い布製の上下を着せられた。
きちんとした防護服は恐らく早い段階で、切らして足りない状態になっていた。
さらに長靴の上にもビニール製の防護をつけるべきだが、何もないので、自分たちはコンビニでも買えるような簡単なゴミ袋のようなものを長靴の上にはいて、 ガムテープで巻き付けただけだった。
本来なら3~4時間で終わる作業に、延べ2日かかってしまったし、ガスマスクを着用しているので非常に動きづらいし、作業の際にマスクがずれる場面は何度もあった。
多分、かなりの(放射性物質を含む空気を)吸ってるだろうなと思う。
線量計は、リーダー格の者がもっている1台だけで、他の作業員は何も持っていない。
全員に、線量計を持たせるという説明は反故にされた!
そのような中、3,000人ちかくの作業員達が働いている!
色々な人生を送ってきた人たちが、各方面から集められて作業している!
国の為、国民の為、企業の為、家庭の為、自分の為である!
しかし、中には余命がいくばくもないので家族に金を残してやる為、借金の為という方々もいる!
3号機のタービン建屋で、作業員2人が汚染された水たまりで被曝したことについて
他の作業員たちは騒いだが、騒いでも仕方がない自分たちも間違いなく被曝している。
敷地内は、地震の影響であちこち陥没して穴が出来ており、水がしみ出していたが、
ガスマスクが視界を狭くして、邪魔で足元が確認できずに同僚が何人も穴に落ちて怪我をしてしまった。
アラームが鳴っても作業を続けなければならない。被曝しているなという恐怖が全身を包む!
アラームが鳴ると下半身が縮むが、この気持ちは誰にもわからないだろう。
必ず被曝はするので、他に作業する人間がいないのだから、とにかくやらないといけないという使命感だけで作業をした。
やるまでは、絶対に帰れない!
指定された時間内に作業を終了しなければならないので、焦りは現場では強い。
指定された時間がくると、何故か息苦しくなるのはどうしてだろう?
誰も、説明してくれないが毎回そうなる。
そして、何人かが昏倒する!
急性白血病でこんとう
作業員の一人が、倒れると付近で作業している作業員達が駆け寄り、大声で
「大丈夫か!」
と叫ぶが、マスクで声らしい声にならないが、近くの作業員達は一斉に振り返る!
聞こえないはずであるが、何故か多くの作業員達が振り返るのだ!
この地域一帯には、目には見えない何かがあるのだろうか!
極限の地であるからだろうか?
作業員が、倒れると以心伝心、他の作業に従事している作業員達に伝わる!
そして、作業員達は、明日は我が身かと囁くのである!
敷地内では、水素爆発の影響なのか車が建屋の外壁に刺さったり、あちこちに津波で運ばれた大きな魚やサメが転がっており、 それを狙った鳥が上空を旋回しており、作業員が遠ざかると地上に舞い降りて、魚をつついている。
鳥は、被曝しないのだろうか?
被曝した鳥は、何処へ行くのだろうか?
私も被曝してしまったが、このまま家に帰って大丈夫なのだろうか?
妻や、子供に影響を与えないのだろうか!
いろいろと考えてしまう 。
ガスマスクの「シュー、シュー」「パコパコ」という音が、せわしげに響きわたり、 白装束の自分たちが作業している空間は、全く現実感のない世界だった。
最終日に被曝の検査をしたが、人数が多く丸1日かかってしまった。
検査の結果は、異常はないとされたが本当だろうか?
白装束の防護服は、内部被曝を防護するが体外被曝は防げないと作業中に聞いた!
しかし、逃げ出すわけにも、抗議するわけにもいかなかった!
何故かって、私は会社を代表して福島第一原発に来ている!
トラブルを起こして、全てを失うわけにはいかない!
「現場で、不満があっても我慢してくれ!」
「会社の為に、我慢してくれ!」
「会社に帰社して、不満は会社にぶちまけてくれ!」
と言っていた上司の顔と、家族の顔が浮かぶ!
防護服の山また山は、どうなるのか?
帰社すると「よくやった」と上司が、ねぎらってくれたが、喜べない。
長期的な影響について、会社は
「20年は大丈夫だ!」
というが、私は原発の近くで作業していた時に、目が痒かったので掻いてしまったが、今はそこが、ただれたままである!
明日、会社が指定した病院に行ってみよう!
何故、会社は都内の病院を指定したのだろうか?
帰宅すると、妻が目に涙をためて
「ご苦労様でした!」
と言って背中をさすってくれた!
25年間連れ添ってくれた妻が、一回り小さくなっている!
心配させて申し訳ない!
悲壮感漂うお話ですが、原発事故の影には色々の人生劇が隠されているのが推認されますね・・・・・・・。
惨劇の裏では、このような求人も堂々とまかり通っています!
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