そこに居るべき人がいてほしい
そこにあるべきものがあってほしい
まるで空気を吸うように
それらは生きる術である
すべてを
大津波が引っさらってしまい
放射能が人々を追いたてた
抗うこともできず
いるべき人がいなくなり
あるべきものが無くなった
その喪失を埋める
代替物も ことばもない
自閉症の子どもが
着るべきものにこだわり
時間や場所にこだわるように
それは彼らだけの特性ではなかった
それは生きるための安心
そこに居るべき人がいてほしい
そこにあるべきものがあってほしい
街角にたたずんで
ビッグイッシューを販売するホームレスの人も
ある日 彼がいなくなると
私の心は不安になる
後にはただ風が吹いており
変わらず風雪があり
時に芽吹きの気配さえある
あなたの喪失を
希望を失ったあなたを
生きることが苦しいあなたを
想い続けること
担いつづけること
私を生きること
三浦千賀子(1945大阪生、詩人会議・関西詩人協会)