昨今の日本人の食生活においては、昔と比べると欧米化の傾向にあり、肉食が増えて魚を食べる量が減ったといわれている。その実情を厚生労働省が2020年10月に発表した定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2019年分における概要報告書などの公開値から確認する。
次に示すのは魚介類・肉類(それぞれ加工品を含む)、野菜類、乳類(牛乳、加工乳、乳製品全般、粉乳類、クリーム類、乳酸菌飲料、チーズ類やアイスクリーム類など)の一日あたりの平均摂取量を示したグラフ。最新値となる2019年分、そして10年前の2009年分についてデータを併記する。なお最高齢層については2009年分と2019年分双方で値を抽出可能な「75歳以上」を用いる。
図1
↑ 肉類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2009年、2019年)
図2
↑ 魚介類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2009年、2019年)
図3
↑ 野菜類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2009年、2019年)
図4
↑ 乳類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、グラム/日)(2009年、2019年)
まず直近の平均値だが、魚介類は64.1グラム・肉類は103.0グラムと、肉類の方が魚介類よりも多い。また年齢階層別では魚介類がおおよそ年を取るに連れて摂取量が増える一方、肉類は15-19歳の摂取量が最大で、あとはおおよそ年齢が上になるに連れて減少していく。75歳以上では魚介類・肉類の立ち位置が逆転し、肉類よりも魚介類の方を多く摂取している計算になる。両食品の特性、普段イメージされている好き嫌いがそのまま数字となって現れており、非常に興味深い。やはり年を取ると肉類は敬遠される傾向にあるようだ。
あるいは個々の「世代」の食生活の日常が、ある程度踏襲されている可能性も否定できない。つまり年齢階層による違いではなく、世代(西暦何年生まれなどの区分)による違いが多分に影響しているのでは、との考えである。それが事実ならば今後、高齢層でも少しずつ肉類の摂取量が増え、魚介類が減り、高齢者でも肉類の摂取量が魚介類以上になる可能性はある。
野菜類は1~6歳時点でこそ少なめなものの、それ以降は40代ぐらいまではおおよそ同量、50代以降はむしろ増加していく傾向がある。健康志向の高まりを受けてのものだろう。そして乳類は1~6歳が多め、7~14歳で最大となり、以降は減少、そして40代以降は再び増加していく。乳幼児は子供向けの粉ミルクなど、未成年では学校給食などにおける牛乳や健康のため保護者から与えられる事例が多いのが主要因だと考えられる。高齢になるに連れて増えるのも、健康志向によるものと考えれば道理は通る。
なお乳類の男女別詳細値を確認すると、30代以降は女性の方が摂取量が多い。ヨーグルトなどの健康志向性の高い乳類を多く摂っているのだろう。
10年前の2009年当時の値も併記したが、それと直近となる2019年との比較をすると、「魚介類の摂取量が大きく減る」「肉類の摂取量が増える」「野菜類は減少」「乳類はおおよそ増加」などの動きが確認できる。「食文化の欧米化」との表現はあまりにも陳腐だが、肉食に傾きつつあることは間違いあるまい。また牛乳の全体消費量が減少していることがしばしば話題に上っているが、今データの限りでは若年層へのアピールが必要なように見える。
10年間の変化を算出した結果が次のグラフ。
図5
↑ 魚介類・肉類・野菜類・乳類の摂取量の平均値(男女計、年齢階層別、1日あたり摂取量)(2009年から2019年への変化率)
年齢階層では肉類はすべての層で増え、魚介類はすべての層で減っている。他方変化率では肉類・乳類において高齢層の増加率が大きい結果が出ている。肉類の動きはやや妙に思えるかもしれないが、10年間における重量の増加分に大きな違いはないため、元々摂取量が少なかった高齢者ほど、比率面では大きな値が出る次第。
健康的な食のバランスを保つためには、偏りなく、多彩な種類の食材を口にしたいものだ。
これから知床の方まで出かけます。明日更新できませんがよろしくです。
今朝のようすです。
こんな日に、しかもコロナ最大。