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終戦の日に考える 凄惨な体験を語り継ぐ

2024年08月15日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2024年8月15日 

 79年前のきょうを境に日本人の運命が大きく変わりました。エッセイストで、初代林家三平さんと結婚して落語家一門を支える海老名香葉子さん(90)のいとこ「お咲ちゃん」もその一人です。

 お咲ちゃんは10歳下の海老名さんにとって絵本を読み、一緒に遊んでくれる、器量よしの憧れの存在。戦時中でもハイヒールにパラソルという洋装で海老名さん宅を訪ねたり、1944(昭和19)年のお正月には人目につかぬよう、もんぺ姿の下に振り袖を着て見せに来たりしたそうです。

 でも海老名さんにとってこれがお咲ちゃんの最後の姿でした。この年の夏、お咲ちゃんは2人の弟とともに、南満州鉄道に勤める長兄が住む旧満州(中国東北部)鞍山(あんざん)に縁故疎開したからです。

 未知の土地での暮らしに慣れ始めたころ、45(同20)年8月のソ連参戦と日本敗戦で状況は一変。ソ連兵が鞍山に攻め入った後も一家はしばらく鞍山にとどまりますが、日本人、特に女性は外出しないよう促される不安な日々です。

◆お咲ちゃん襲うソ連兵

 9月のある日、お咲ちゃんは弟の清水章吾さんを連れて鞍山駅の生計所(売店)へ食料調達に出かけました。途中の神社山の鳥居に手を合わせ、駅に向かって駆け出したときでした。眼前に突然、ソ連兵の一団が姿を現したのです。

 「うおおー」とうなり声を上げながら、お咲ちゃんのもんぺズボンを引き裂き、裸にして押さえ付けて暴行する大男。その横で5、6人のソ連兵がたばこをふかして笑い声を上げていました。

 姉の悲鳴が聞こえても章吾さんは恐ろしさで体が動きません。その後46年間、記憶を封印し、誰にも語りませんでした。

 お咲ちゃんは身ごもり、子どもを堕(お)ろした後は体調がすぐれず、伏しがちの日々。いよいよ最後の引き揚げ団で日本に帰ることが決まると、にわかづくりの担架に乗せられて、鞍山を後にします。

 家族が力を合わせ、ようやく葫蘆島(ころとう)まできて最後の引き揚げ船、氷川丸に乗り込みましたが、お咲ちゃんはあと少しで帰国できるというところで息を引き取ります。遺体は船内で火葬されました。

 海老名さん自身も静岡県・沼津に縁故疎開中の45年3月の東京大空襲で両親と祖父母、兄2人の家族6人を失い、戦災孤児になりました。

 海老名さんがお咲ちゃんの鞍山での暮らしやその後の運命を知ったのは91年、章吾さんとともに鞍山などを巡ったとき。章吾さんもそのときになって初めて、自分やお咲ちゃんがたどった凄惨(せいさん)な体験を話せたのです。

 少し長くなりましたが、海老名さんが今月出版した「大大陸に陽(ひ)は落ちて 満州引揚(ひきあ)げ者たちの哀(かな)しみの記憶」(鳳書院)から引きました。お咲ちゃんの思い出は97年にも徳間書店から出版されています。なぜ、この時期に再び出版を? 海老名さんからの手紙にはこう記されています。

 「毎年、終戦の日が近づくと、沖縄戦や広島、長崎の原爆投下などが取り上げられますが、満州での出来事が紹介されることは多くありません。日本に帰還した人たちも高齢化が進み、存命する語り部は少なくなっています。『満州引揚げ者たちの哀しみを伝えたい』、そんな思いをしたためたのが本書です」「平和の尊さを改めて感じ取って頂ければ幸いです」

 新版にはお咲ちゃん同様、少年時代を満州で過ごした漫画家ちばてつやさんの挿絵や、海老名さんとちばさんの対談、海老名さんが作詞し、歌手のクミコさんが歌ったCDも収録されています。

 先の戦争では日本国民だけで310万人もの命が奪われました。戦場はもちろん、空襲や原爆被害に遭った内地に加えて、お咲ちゃん一家同様、満州など外地から命からがら帰還し、塗炭の苦しみを味わった在外邦人も多いことでしょう。

◆戦争再び起こさぬため

 ちばさんは対談で「ウクライナやガザのことを思うと、戦争を知っている人間が、戦争が始まるとお互いの国が、世界中がまきこまれてめちゃめちゃな地獄になるんだよ、ということを伝えなければならない」と語っています。

 権力者が起こす戦争で犠牲を強いられるのはいつの時代も、何の罪もない無辜(むこ)の人々の命や平穏な暮らしです。権力者に戦争を思いとどまらせるためにも、凄惨な体験を語り継がねばならない。そう固く誓う「終戦の日」です。


戦争につながる小さなことも、徹底的に摘み取っていかなければなりません。「戦争できる国造り」を目指し、「改憲」に執念を燃やすキシダが不出馬を決めました。「表紙」を変えてみても、その中身は変わりません。「政権交代」に向けて世論の大きな盛り上がりが必要でしよう。勝共「連合」の道か、「非連合」の道か!

園のようす。

マユミの苗木