岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆
「日刊ゲンダイDIGITAL 2022/06/21
まさかの結果だ。20日開票された東京都杉並区の区長選挙。自公がバックアップした現職の田中良氏(61=当選3回)が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れたのだ。
杉並区といえば、有権者に嫌われ、昨年の衆院選で落選した石原伸晃・自民党元幹事長の地盤。田中区長と伸晃氏は蜜月関係だけに、「敗因はノブテルの呪いか」なんて声も上がっている。想定外の結果に、岸田首相の周辺は、国民の怒りのマグマがたまっているのではないか、と疑念を強めている。
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今回、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党が推薦し、初当選した岸本氏は、オランダの政策研究NGOの研究員。田中区政が進めた駅前再開発などについて「いったん立ち止まって、住民とともに考える」と訴えてきた。
フリーランスライターの畠山理仁氏は、「岸本氏は有権者の声に耳を傾け、選挙中に政策をバージョンアップさせるなど、従来の野党の戦い方とは全く別物だった」とみる。
「昨年、衆院選で伸晃氏を破った立憲の吉田晴美衆院議員が連日、応援に入ると、徐々に追い上げムードが高まっていった。最終的に蓮舫参院議員や枝野前代表ら大物が応援に入るなど、国政選挙並みの力の入れようでした。れいわ新選組の山本太郎代表も駆けつけ、勢いは十分だった」(野党関係者)
一方、田中陣営は、自民党の国会議員が応援に入ったが、杉並区議会の自民会派が「親田中派」と「反田中派」に分裂し、足並みが揃わなかったという。
自民党は、現職区長が無名の野党候補に負けただけでなく、区長選と一緒に行われた区議補選で票を減らしたことも不安材料とみているという。自民新人が当選したものの、前回2018年の区議補選の時に獲得した4万3000票から、1万6000票も減らしている。
国民の怒りは“沸点”間近
実際、区長選と補選は、物価高や生活苦を一向に解消できない政権与党に対する世論が反映された可能性がある。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「物価高で国民の生活は苦しくなっているのに、『検討する』としか言わない岸田首相への怒りが募るのは当然です。世論調査でも内閣支持率は下がり、政府の物価高対策を『評価しない』という声が大きくなっています。今回の区長選の結果は、これまで声を上げなかった国民の怒りがジワジワと高まっていることを示している可能性があります。参院選に向けて、自民党はこの流れが続くのを恐れているに違いありません」
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物価高対策が遅れ不信が拡大 フランス下院選で与党過半数割れ マクロン氏、欧州でも「勢い失った」
「東京新聞」2022年6月21日 06時00分
フランス国民議会(下院)選挙の決選投票では、与党連合が過半数を割り込んだ。ロシアのウクライナ侵攻などによって世界的な物価高騰が続く中、市民の不満を吸収した左派連合と極右・国民連合が伸長した。与党連合が連立工作に失敗すれば政治の混乱は必至で、欧州のリーダーを自任するマクロン氏の求心力にも影響が出そうだ。(パリ・谷悠己)
◆野党は家計支援策を目玉に
「息子の夏服を買うのに50ユーロ(約7000円)もかかった。春先より3割も高い」。19日午後に投票を終え、パリ近郊の大型量販店で長男(12)と買い物をしていたマドレーヌさん(46)がため息をついた。「マクロン氏よりも市民の生活を考えてくれそう」と左派連合の候補者に投票した。
仏国立統計経済研究所が公表した先月の消費者物価指数は前年同月比で5.2%上昇。仏調査機関IPSOSの世論調査で下院選の関心事を「家計」とする回答は最多の53%で、ほかの課題を大きく上回った。中でも左派連合と国民連合の支持者は、与党連合の支持者より10ポイント以上も多かった。選挙戦では、候補者を一本化して勢いを得た左派連合は最低賃金引き上げを訴え、国民連合は大統領選から引き続き光熱費の消費税率引き下げを主張した。
◆ウクライナ訪問しても「逆風」
左派連合を率いるメランション氏と、国民連合のルペン氏は、ロシアのプーチン大統領ら強権主義者への賛辞を惜しまず、資本主義や欧州連合(EU)に反感を持つことから「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」とも称される。有識者からは公約の実現性や財源を疑問視する声が上がる。
それでも両勢力が伸びた背景として、仏メディアは物価高に対するマクロン政権の対応の鈍さを指摘する。1回目投票の5日前になって追加の家計支援策を発表したが逆風はしのげなかった。起死回生を図ったマクロン氏は決選投票直前の16日にウクライナを電撃訪問したが、「この大統領は自国の経済より他国を大切にするのか」(国民連合のバルデラ党首)との指摘を受けた。4月の大統領選から続くマクロン氏の不人気ぶりが裏付けられた。
◆「統治不能」…連立工作も難航の見通し
「統治不能」。仏紙パリジャンの20日付1面は大見出しを打った。議会構成は与党連合と右派勢力が主導していた改選前から一変し、左右両派と中道の与党連合に3分割された。
パリ第2大のバンジャマン・モレル准教授は「与党連合による連立工作は極めて難しく、達成できても不安定な多数派にとどまる」との見通しを示し、「欧州内でマクロン氏は勢いを失ったと見られ、フランスの影響力が低下する恐れがある」と危惧した。
一方、格差研究で知られる経済学者トマ・ピケティ氏は仏紙ルモンドへの寄稿で、近年の仏政界は、移民政策や治安対策といった右派や極右が好む議論が中心だったと振り返った上で、「民主主義を機能させるためにも、(福祉や格差是正など)社会的な課題の議論に回帰するべきだ」と指摘。左派の復調を歓迎する論調も出ている。
これが「共闘」の底力だ。
南米コロンビアでも左派・中道政党や進歩勢力が共同で推す左派のグスタボ・ペトロ元首都ボゴタ市長(62)が当選。親米右派の政権が伝統的に続いてきたコロンビアで初の左派政権が誕生です。
ニワフジ(訂正)→タマサキクサフジ