面白く、そして下らない

私は批判をして何かを為した気になっている大衆の一人に過ぎないが、何か少しでも波紋を起こす小石になれればと書いている。

経団連は積極財政に転換するようだ

2022-06-08 22:03:13 | 経済
迂闊にも私は知らなかったのだが「21世紀政策研究所」というシンクタンクは経団連のシンクタンクなのだそうだ。常識なのだろうか。それとも大した話でもないだろうか。

何れにしろその経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」が積極財政に転換するよう提言していたので経団連は積極財政に転換するようだ。経団連は自民党に政治献金により財界に都合の良い政策を次々実現させてきた圧力団体だ。

緊縮財政により経済成長は止まり、残りのパイを奪い合うことになったとき自民党に働き掛けて国民から次々吸い上げてきた。だからもちろん嫌いなのだが、積極財政に転換するなら今までの悪行を棚上げするべきなのかもしれない。積極財政を実現することが重要だからだ。緊縮財政の根源である財務省を孤立させなければならないというのもある。

その提言書の最初のサマリーを引用する。とにかく長いので序盤しか読んでいない。ためになる提言書だとは思うのだが。読むと財政に関する知識が高まるだろう。だがとにかく長いので時間があるときにでも読んで欲しい。

~~引用ここから~~
税財政・金融・社会保障 | 提言・論文 / シンポジウム | 21世紀政策研究所

提言【報告書】「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」(PDF:18.6m,174p)(そのままだとあまりに読みにくいので適宜改行する。)

(略)

2.本報告書の要旨
図表 1-1 は、現状分析に関する全体のイメージである。まず、需要不足と中間層の衰退
が悪循環を引き起こしており、需要不足は弱い消費や投資機会の縮小といった形で現れる。
家計の経済状況が改善しない状況においては、消費を拡大することは困難である。また、
需要が弱い中にあっては、企業は国内で設備投資を行うインセンティブに乏しいため、海
外に活路を見出そうとするが、それにより国内設備投資は停滞し、さらなる需要の低迷を
招くという悪循環の一因となる。さらに、このような環境下では、賃上げによって雇用者
の維持・拡大に努めようというインセンティブも働かない。こうしたマクロの需要不足が、
中間層の衰退につながるという悪循環を形成している。

こうした悪循環に陥ったのは、緊縮的な経済財政運営の継続にある。民需が総じて弱い
中、「将来世代へのツケを回さない財政健全化」や「持続可能な社会保障制度改革の確立」
を名目に、政府支出を抑制し、増税や社会保険料の引き上げも続けた結果、マクロの需要
を押し下げてきた。また、政府支出のうち、公的セクターの賃金や雇用も抑制されてきた
ことが、中間層の衰退にも拍車をかけた。

図表 1-2 は、悪循環を起こしている現状を打開するための政策提言に関する全体のイ
メージ図である。まずは、根本的な原因となっているマクロの需要不足を打開すべく、財
政ルールを見直さなければならない。これまで、財政破綻の懸念から、需要不足の中でも
財政健全化のため、歳出抑制や増税・社会保険料の引き上げが進められてきたが、わが国
のように、自国通貨建て国債を発行する国において、財政破綻の可能性は極めて低く、需
要不足の状況の中ではむしろ十分な規模で財政出動をしなければならない。

財政出動の仕方は様々であるが、その一つとして、新たな価値観に基づく投資の活性化
に向けた財政の活用が重要である。設備投資需要を拡大させると同時に、よりよい社会の
実現に向けたイノベーションの創出やインフラ整備を進めるべく、長期計画的に財政政策
を展開する。政府が長期の計画に基づいて投資し続ければ、企業も新たなイノベーション
創出に向けて、国内投資を加速させる。

財政出動を起点に総需要の拡大を確実に賃上げにつなげ、中間層の底上げを進めること
も不可欠である。ここでの「中間層の底上げ」とは、主に低・中所得者層の経済環境の改
善を意味している。そのためにまずは、財政拡大による高圧経済1を継続することで賃上げ
圧力をかけ続けるとともに、雇用流動化を進め、企業間の賃上げ競争を促さなければなら
ない。雇用の流動化にあたっては、法制度の見直しに限らず、民間企業の雇用慣行の見直
しも必要となる。また、公共部門の賃上げと雇用拡大により、直接的に中間層の底上げを
図りつつ、民間企業においても賃上げせざるを得ない環境にしていくべきである。

一国のマクロ的な循環に限らず、国内の各地域における経済循環の改善も課題である。
財政支出によって各地に供給される資金が、その地域において循環し、経済成長していく
ことが望ましい。本社機能の分散化、地元企業の経営支援拡大、地域金融機関の役割強化
等により、地域内の経済循環を改善させていく必要がある。

こうした一連の政策により、これまでの「需要不足と中間層衰退の悪循環」から、「需要
拡大と中間層の底上げの好循環」へと移行させていく。

(略)
~~引用ここまで~~


全く正しい現状分析であり提言だ。しかし経団連はなかなか大きな組織である。21世紀政策研究所の提言ひとつでどこまで経団連は転換するのかやや懐疑的である。21世紀政策研究所は経団連のシンクタンクであることは間違いないが、経団連本体とどのような関係にあるかわからないからだ。

そもそも経団連、財界、企業と国民、労働者は運命共同体なのだ。企業が労働者に給与を支払えば、労働者は消費者となり企業の財やサービスを買う。企業が労働者への給与の支払いを搾れば短期的には利益を得るが長期的にはGDPが成長せず止まってしまう。さらに政府が財政再建と称して増税と歳出削減を強行した結果が失われた30年の日本だ。

だが財界人もなかなか長期的な視野に立てないものだ。結局企業の利益しか見ず、「法人税は下げろ、消費税は導入しろ」ということになる。「メザシの土光さん」と呼ばれた土光敏夫がそれだ。繰り返すがその結果が失われた30年だ。経済成長は止まり、残りの富も吸い上げられ国民は疲弊しきっている。

経済が成長すれば少ないパイを富裕層と貧困層、経営者と労働者で奪い合うことはなくなる。それなりに皆に分配できるだろう。だが税制を変更する必要はあるかもしれない。消費税は低所得者に辛い税なので所得税にしたいし、社会保険料の負担も大きいので累進課税にしたい。株式投資による利益に掛かる税が少なくなる「分離課税」も廃止する必要がある。

経団連が緊縮財政から積極財政に転換すれば自民党内の積極財政派は益々勢いづく。何しろ自民党の最大の支援団体からである。財務省に媚を売るのと経団連の提言のどちらがより重視されているかはわからないが、積極財政派には経団連の後押しはなかったのだ。

彼らは自分の頭で積極財政が正しいとの結論に至った。経団連の後押しにより中間派の国会議員も積極財政派になるだろう。岸田文雄自身が緊縮財政派というのが怖いところなのだが。参院選後に大規模な補正予算を組むのか来年度の予算は大規模なものになるのか。まだわからない。

参院選は正直なところ何か「風」が吹かない限り自民党が勝つ。内閣不信任案程度では変わらない。細田衆院議長に対する不信任でもだ。また文春砲が炸裂したようで、週刊文春は大したものだが、参院選の風を変えるには至るまい。

立憲民主党に所属する国会議員に毎日ツイッターで「立憲民主党は消費税を時限的に減税します」という公約を自分の言葉でツイートさせてはどうかと立憲民主党と代表の泉健太のアカウントにリプライしてみたが、おそらく読まれてもいまい。だが消費税減税は国民に受ける。一日一回なら立憲民主党の国会議員にも負担にならない。国民は民主党が「消費税増税はしない。4年間は議論もしない」と一丁目一番地の公約を野田佳彦が破ったことを忘れてはおるまいが。

自民党内の積極財政派には期待しているが、自民党に素直に勝たせるわけにはいかない。野党に投票して欲しい。もちろん維新は新自由主義だから駄目だ。社民党は死票になるし、共産党が議席を伸ばしてもあまり意味がない。国民民主党かれいわ新選組、新党くにもりのどれかということになるだろう。どこも帯に短し襷に長しなんだが。


(参考サイト)
三橋貴明『経団連のピボット(大転換)』

三橋貴明『経団連のピボット(大転換)』

株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから三橋貴明のツイッターはこちら人気ブログランキングに参加しています。チャンネルAJER更新しま…

三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自民党は世代交代が必要だ | トップ | 参院選選挙予測 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事